第28話 ラピスとラズリの誘拐事件簿‼ 犯人はお前だ! その5
決着ゥゥゥ!
その時、空から赤い塊が降ってきたのはわかった。それが地面に着地した瞬間、衝撃と共に爆音が響きわたる。目を開くと俺の目の前に真っ赤な髪をした巨大な男の背中がみえた。
見間違える筈がない。あいつは最強の助けを呼んできてくれた。
ウラド・ツエペッシュ 吸血族の頂点にして最強の男だ。背中からでもピリピリとしたプレッシャーがつたわってくる
「安心せい‼ ワシがきた‼」
声を張上げているだけで身体の芯が痺れる。…怒っているんだ…あのいつも豪快な声で笑うあのウラドが。俺はウラドの顔を恐くて見ることができない。それほどのプレッシャーが回りに放たれているのだ。
「なんだぁてめぇ‼ デケェ声だしやがって‼ 身体がデカイからって調子にのってんじゃあねぇぞ‼」
「そこのガキの仲間か?…おいおい見てみろよあいつの目! 吸血族だ! 今日はついてるなぁ じじぃだが売り払えばそれなりの値段になるだろ」
こいつ等はやはり救いようもないバカだ。相手の力量も計ることが出来ないようだ。
「テルよ…怪我はしておらんな?」
「はい、 魔力切れで動けなくなっただけです。今は歩けるくらいには回復しました。」
「うむ、少し待っておれ」
ウラドがゆっくりと馬車に歩いていく。ただ歩いているだけ、それでも誰も動けない。これもウラドのスキルの1つなのだろうか、そして馬車からラズリを連れ出すとまるでガラス細工を扱うかのようにそっと俺に渡す。
「この子を頼む、なるべく遠くへ離れておれ…今からワシのすることを見せたくはない…」
俺はその言葉に従うようにラズリを抱えて遠くへ離れる。多分、奴等は生きてかえることは出来ないだろう。今まで何人もの人生を壊してきたんだ。これが奴等にとって相応しい最後なのだろう。
それから5分ほど立つと林の奥からウラドの姿が見えた。何時もの様子に戻っており明るく俺に「帰るぞ‼」と言う。
森の入口にツェペシュ家の馬車が用意してあった。俺は馬車の中に乗りラズリをウラドに預けると同時に俺は意識を失う。
目が覚めると何時もの見覚えのある天井であった。今までのことが全て夢であるかのように全てが元通りになっていた。たが何時もとは違う所が1つある。
「「すぅ すぅ」」
この天使のような寝顔を見せる二人がいることだ。二人は俺の看病をしている最中に寝てしまったのかベットにもたれ掛かりながら寝ていた。
「いつもこうなら天使みたいなんだけどな…」
二人の頭を撫でる。
「うむ‼」
扉のスキマから殺気が‼
…発生源は分かりきっているのだが…「ウラド先生…おはようございます」
「おはよう!それより何時まで孫の頭に手をおいておるのじゃ?もしやお主…児童愛者か‼」
急いで二人から手をどける
「いやいや全然そんなつもりは無いですよ‼相手は子供ですしそんな恋愛感情なんてないですから‼」
「聞いた ラズリ?失礼な人ね」「聞いた ラピス?レディに対する礼儀がなってないわね」
「「これだからテルテルは…ハァ」」
こいつ等…いつから起きてた?
余計な事を聞いていなければ良いのだが…
「「ねぇねぇテルテル‼ 私達って天使みたいに可愛いいの?」」
ニヤニヤしながら俺の顔をみてくる
「てめぇ等 寝たふりしてやがったな‼ 」
「「キャー♪」」
ラピスとラズリが部屋から出て行こうとする。元気そうで良かった…
「ちょっと待てよ‼ おいラズリ! こっちに来い!」
真剣な表情でラズリを見る。
「えっ! 私だけ?」
少し怯えながらも俺の隣にくる。素直になったな~
「動くなよ…」
「痛くしないでね?」
上目使い&涙目で俺に言ってくる。グォ! どこで覚えたそんな技術‼
「バカか!何勘違いしてんだこのマセガキ!」
近頃の子供は進んでいるなーと思いながらラズリに回復魔法をかける。
「光の精霊よ!彼の者の傷を癒したまえ!」
この呪文を言うのも大分なれてきたな…まだ少し恥ずかしいけどね…
光のサークルがラズリの頬のキズに集中する。しばらくするとまるで元かはキズなんてなかったかのように綺麗に修復されていた。
鏡をみるとラズリが不機嫌そうな顔で俺に訴えかける。
「まぁひどい! この傷を口実に 傷物にされた~って言って責任をとってもらおうと思っていたのに」
マズイ…この目は本気で言っている。 何故だどこで俺はルートを間違えた。 こんなロリキャラ攻略対象に入れちゃだめだろ。
「なぁ…ラズリって何才だっけ?」
「10才よ!」
ない胸をはって自信満々に主張する。
うん…アウトだね。
数時間前の血生臭い戦闘はなんだったのか…本当は戦闘なんてなかったんじゃないのか?っと思えるほど拍子抜けした温かな雰囲気に包み込まれる。
あぁ俺はこの日常に帰ってこれたのか…何て黄昏る暇もなく、
「まぁ私の初めてを奪ったことには変わりないのだけどね‼」
「何いってんのお前!? 頭大丈夫か!?」
「まぁ!ラズリったらズルイわ!」
「お前は話をややこしくするな!」
顔を赤くしながらラズリはとんでもない爆弾発言をする。
「私に ききき キス したじゃない!」
ドーーーン‼ 爆弾投入されましたーーー!
「ちがーーーう!あれはキスじゃなくて人工呼吸だ!決してやましい気持ちでしたわけじゃないぞ!」
「「人工呼吸?」」
あぁ~なるほどね…この世界に人工呼吸って概念が存在しないのか…
「うむうむ……テルよ…あとでワシの部屋に来るがよい…話がある。」
ウラドがこれ以上ないくらいに怒っている。
「違うんですよウラド先生‼信じて下さい!」
「安心せい…お主はなかなか死なんじゃろう?」
「もう危ないことする前提じゃないですか‼」
「「まぁお爺様ったらテルを虐めたらいくらお爺様でも嫌いになるわよ‼」」
ラピスとラズリのコンビが俺の味方をしてくれる。
やめて‼これ以上状況をかき乱さないで‼
「ぐぬぬぬぬぬ!」
ほら! 今にもあの孫バカ俺のこと殺しそうだよ‼
キャーキャーワーワーと騒がしくなり始める。
やっと俺の日常が戻ってきた。騒がしくて忙がしい、そんな居心地の良いそんな日常が…




