第26 ラピスとラズリの誘拐事件簿‼ 犯人はお前だ! その3
また間違えて話を消しちまった…へへっ 笑えよ…
…あれからどれくらい時間がたっただろうか…目を覚ますと後頭部に柔らかい感触がつたわる。目の前にラズリの整った顔が見える。…これが膝枕か… 母親意外に膝枕をされるのは人生で初めてであった。10才の子供であろうが少しばかり嬉しい。…いや
ロリコンじゃないよ?
眠るラズリの頬をさわる。
「キズがすこし残っちまったな…ごめんな女の子なのに…」
左頬には薄い傷痕が残っていた。
あの男には絶対制裁を加えてやる。
次の魔力が回復したらまた回復魔法を使ってあげよう…
身体を起こそうとするとまだ気だるさが残っており少しふらつく。多分最初の頃であれば起き上がることは出来なかっただろう。ここにきてウラド先生との特訓が役に立つ。
ウラド先生…貴方の特訓のおかげです。
状況確認の為回りを見渡す。今はもう馬車から降りて目的の場所についてしまったようだ。汚い小屋の中に入れられている。
縄はほどかれており手足が自由になっていた。手の縄が焼ききれていたことは疑問に思わなかったのか?
本当に馬鹿だなあいつら。
小屋の扉には鍵が掛けられており力をこめようがびくともしない。どれだけ考えようが扉を開ける方法が思いつかない。
「さて… どうしたものか」
正攻法では無理か…小屋に火をつける? ダメだラズリにまで被害がいく… あの男達に勝負を挑むか? イヤ1人なら何とかなるが2人でこられると何もできん…
「クソ‼何が勇者だよ!子供1人も助けることができねぇのか‼」
自分の無力さを実感する。勇者ならきっと絵本の中の王子様のように悪漢二人など一捻りで倒してしまうだろう。だが俺は頑丈なことだけが取り柄の只の木偶の坊だ。精々この子の盾になることしか出来ないだろう。
悔しい…力がほしい…だが無理だ。俺には才能などない、秘められた力も無駄なことに使ってしまった。おれはラノベようなカッコイイ主人公にはなれない…でもな‼
それがどうした!今、目の前の子供を助けることが出来るのは誰だ!答えは1つしかないだろ‼
「足掻いてやろうじゃねぇか‼」
俺の声に反応するかのようにラズリが起きる。
「んっ…」
「おぉ! ラズリ‼起きたか!大丈夫か?どこか痛いところはないか?」
よかった…一時はどうなるかと思ったよ…。
ラズリが目を見開いて俺に飛び付く。
「うぉ!」
「テル‼ 良かった…目が覚めないかと思った! 私を1人にしないで…おいてかないで! 1人は怖いの‼ あぁ…またあの男達に殴られるかもしれない…怖いの‼ お願い! もうわがままなんて言わないしイタズラもしない‼ 私の‼ 私の傍にいて…」
可愛いそうに…精神的に不安定になっている。 そりゃそうだ、いくら力が強いとは言えラズリは所詮子供にすぎないのだ。本気になった大人には勝てない。
あの男がラズリにしたことは一生のトラウマになってしまうだろう。
許せねぇな(ボソッ
こいつ等は許しちゃいけねぇ人種だ。同じ人間だと思うな。子供にあれだけ理不尽なことをしてくれたんだ。
俺はラズリを胸に抱き抱える。
「大丈夫だ!俺が助けてやる」
チャンスを掴め‼必ず隙はある…
奴等は今何をしている?
俺は扉に耳をあて奴等の会話を聴く…
――――――――――――
「おい相棒‼買い手が見つかったぜ!」
「んでぇ?いくらになったぁ?」
「どこぞの貴族か分からんが白金貨1万枚だしてでも買ってくれるとよ」
「おいおいマジかよ‼俺達も大金持ちの仲間入りじゃねぇか‼」
「やったなぁ‼」
――――――――――――
聞くんじゃなかったよこんな会話…
ヘドが出る。
だが早くしないと…時間は迫ってきている。
この子だけでも脱出させる方法を考えなければ…
上を見ると光が差し込む
眩しくて目を細めるがそこには小さな窓が見えた。そこで俺にある考えがうかぶ
「ラズリ…ここから逃げ出すぞ!」
「うん…」
怯えた顔をするラズリが俺にしがみつきながら返事をする。声から以前のような活発さが感じない。
「そんな顔すんな。大丈夫だから…俺を信じろ!」
ラズリの目を見つめる。
「うん!」
とりあえずラズリに作戦を説明しないとな…
「ラズリ、上のまどがみえるか?」
「あの小さな窓のこと?」
「ああ、あそこまでラズリにのぼって貰うが出来るか?」
見た感じ3メートルくらいだろうか?俺の肩にラズリが立つようにして手を伸ばせば届かない高さではないはずだ。
窓が開けば大きな音がしてしまう。多分あの馬鹿二人組にバレるだろう。
だがこの勝負‼ラズリを逃がす事さえ出来れば俺の勝ちだ。
「ダメよ! のぼれたとしてもテルはどうするの?」
「大丈夫だよ! 俺、こう見えても勇者なんだぜ?」
精一杯の強がりを言う。
「嘘おっしゃい!貴方みたいに弱い人勇者な分けないじゃない!」
うっ! こいつは確信をついてきやがる…確かに俺は弱いけど一応本当に勇者なんです。信じてよ…。
「それじゃああの窓から外に出て助けを呼んできてくれ。俺の事を助けれるのはラズリしかいないんだ。お願いできるか?」
これで納得しなかったら放り投げてでも外に出してやらねば…
「そうすればテルは助かるの…?」
「ああ! 助かる! だがあまり近くで大声をだすんじゃないぞ?ここから距離をとってから頼りになりそうな人を連れてきてくれ。 出来るな?」
「うん… 私やってみる‼」
よし!後はここからラズリを出すだけだ。
「ラズリ、こっちに来い。」
ラズリを持ち上げるようにして肩にのせる。
「上を向いてはダメよ! 絶対よ! 見たら許さないからね!」
顔を赤くしてラズリが俺に注意をする。 誰が見るか‼ガキのパンツなんざ興味ねぇよ!
……黒か
「届きそうか?」
壁に手をついて全力で背伸びをする。
「もう少し…あともう少しなの…んっ!」
必死に手を伸ばすがあと少し足りない。 時間が惜しい。 少々荒っぽいがこの手でいくか。
「ラズリ!これを頭に被れ。」
ラズリに俺の着ていた使用人のジャケットを被せる。
「跳ぶぞ?いけるな?」
「えぇ! ちょっと待って、心の準備をさせてちょうだい!」
「いくぞぉぉぉ‼跳べぇぇ!」
ラズリを抱えるようにして窓にむかって放りなげる。結局この方法を使ってしまった。
「きゃあああ‼」
ガシャアアァン‼
窓が割れる。ラズリ無事外に出られたようだ。
「走れぇぇ‼」
注意を俺にひきつける為大声で叫ぶ。ラズリが少しでも遠くに行けるように時間をつくる。
すると
「何の音だ!?」 「おい!おめぇガキはどうした‼おれの白金貨はどこにいった?」
来やがったな
ラズリを逃がす勝負には勝った。だが、本当の勝負はここからだ。
「ざまぁみろ!馬鹿共が!」
「「あぁ?」」
ドスの効いた声で俺を威嚇する。だが俺の挑発は終わらない。
「ラズリの居場所は俺しか知らねぇ! さぁどうする?」
ニヤニヤと嫌な笑みをうかべる。
「この野郎…‼」 「相棒、こいつを売るのはやめだ…拷問したあとバラすぞ…」
ここからは延長戦だ。




