第 11話 薄れゆく記憶
もしミスとかおかしな点があれば教えてくださいね♪
◇◇◇◇
ノエインは思い出す。
昔のことはほとんど覚えていないが父と母と妹、そしてノエインの四人で暮らしていたことは覚えている。家族の名前はもう思い出せないが彼にとって一番楽しかった頃の記憶だ。
父と狩りに行き汗まみれで家に帰る。家に帰ると母と妹が美味しい料理をつくって待っている。
たくましい父。やさしい母。可愛い妹。彼は自分が世界で一番幸せだと思えるほど幸せであった。
しかし幸せな日常はいつまでも続かない。
ある日の夜、ノエイン達が寝静まった頃に家の中に知らない男が数人入ってくる。
父が何かを叫んでいる。
母はノエインと妹を床下の倉庫に隠す。
そこから記憶に鍵がかかったかのように曖昧だ。
母の抵抗する声が次第に聞こえなくなる。
必死に声を押し殺すノエイン。しかし幼い妹にはそれが出来なかった。
声に気付いた男達は床下からノエインと妹を引きずり出す。
血を流して倒れる父がみえる。
母は男達に寝室へと連れていかれている。
必死に抵抗するが所詮は子供の力。あっという間捩じ伏せられる。
泣き声が聞こえる。
最後に見たのは妹の恐怖に満ちた顔と額に大きな3本キズがある男のゴミをみるかのような目である。
そこで記憶がとぎれる。
気がつくとこの闘技場で奴隷になっていた。
生き残るために死に物狂いで己を鍛えた。寝る間も惜しんで鍛え続けた。
いや…違う…眠ることが恐かったのだ。眠るとまた奴らがくるのではないかと思うと恐くて恐くてたまらない。
身体を鍛えているときや闘っている時が唯一その忌々しい記憶を忘れることができた。
そしていつしか雷神と呼ばれるほど強くなっていた。
最初は闘いが恐ろしく感じた。しかし今は闘いが楽しくなっている。
相手を壊し勝ち続けことが快感になっているのだ。
最近、自分がなぜここにいるかさえも思いだせなくなっている。
それほど彼は狂いはじめているのだ。
だか1つだけ彼はこれだけは忘れない。
彼は自分をここに連れてきた男にどうすれば家族の元へ帰れるか聞いたことがある。男は言った。
【勝ち続けろ】
ノエインはその言葉を何年も信じ続ける。
いつしかあの幸せな家族の元へ帰れると信じて。
シリアスは難しい…




