プロローグ まさかの異世界へ
気が付くと俺は知らない町の裏で、荒くれ者にボコボコにされている。
「オラァ‼」
女性のウェストほどあるだろう男の剛腕が俺の顔面にめり込む。何でこんなことになってんだろうか……空っぽの頭をフル回転させて今の状況にいたるまでの過程を思い出そうとする。
話しは今から1時間ほど前にもどる。
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俺の名前は 中尾 耀 年齢は20歳。平凡な名字と比べて名は少し珍しい。子供の頃はてるてる坊主などと言われ、よくからかわれていたので、あまりこの名前は好きじゃない。
顔は平凡な日本人顔、身長は174センチとまぁ普通だ。運動神経も普通。学校の成績も半分より少し下くらいだ。趣味は格闘技観戦と読書(漫画)、特別な趣味をもっているわけではない。
11月下旬の寒い夜、無性に何か食べたくなり、コンビニに向かうため、適当な服を選び、外に出る。
するとそこで、いきなり目の前が暗転する。学生時代、サウナ我慢大会で気絶した時の感覚に似てるな、と緊張のない事を思い出しながら、意識が遠退いていく。
「…………」
声を出すことすらできず、どれだけ時間がたったかも分からぬまま暗転が続く。まるで長い夢を見ているような感覚だった。
だがこれが夢ではないことだけはハッキリとわかってしまった。指先から段々と感覚が戻ってくる。
表現しにくい感覚だが、雪遊びをした後、お湯で指先を温めた時の感覚に似ている。
いきなり目の前が明るくなったと思えば、立派な髭に豪華な服を着た爺さんが座っており……
「勇者よ!待っていたぞおぬしで遂に100人目じゃ!これにて召喚の儀式を終了とする!」
パチパチパチ
盛大な拍手が響きわたる。
拍手をしているのは、重厚な鎧を着用した屈強な男達だ。
なんだこの空間?
突然の出来事に頭が追いつかず何も喋ることができない。キョロキョロと回りを見渡し、テレビ番組のドッキリなのではないかと思いカメラを探してしまう。
俺の頭がおかしくなったのか、それとも本当に勇者(笑)になってしまったのか、いくら回りを見渡せどカメラは見つからない。
頭をフル回転させるが、何も思いつかない。
勇者?‥‥100人目?なにそれ?
グルグルとゲームでしか聞いたことのない単語が、頭の中を回り、段々と自分の状況を置かれた状況を理解していく。
とりあえず………
「ここどこ!?」