歓喜
ある美術室で絵を描いているダビデとそれを見ながら酒を飲むトマスの姿があった。
「その様子だと悩みは何とかなったようだな」
ダビデは絵を描きながら答える。
「ええ、自分でも綺麗に解決しました。世界は多くの人間が妥協をしている。そこから生まれる社会の余裕が多くの人間に居場所を与えている。それは逆に言えば、それは全力で何かをやる人間が少ないと言う事でしょう」
「ああ、その通りだ。全力で自分の意志で何かをやる人間は少ない。そして、これはある男が言った事だが『本当の努力とは、ジャンルを問わず同じものだ。成功するための方法を調べ、時にそれを訂正し、やり遂げる。それだけだ』」
「そうなんですよね。本当の努力が出来れば、どんな世界であろうとすべき事に辿りつく」
「それを知ると恐怖が無くなる。すべきことなんて何時だって変わらねえ。間違ったらやり直し、より上手くやる方法を考える。それしかねえ」
「それを理解した時、もう、もう、絵を描きたくて、描きたくてたまらなくなりました」
「わかる。俺もガウスに出会い、あいつの考えに触れたことでそれを理解した。その時はなんかこう」
「お前は自由だと言われた気がした」
「心から、堪らない感情が体に流れてな。世界に向けて叫びたくなる。『俺はここにいる』ってな」
「全身全霊を出し切ることが堪らないんですよね」
「そう、そう、そうなんだ。それがあるからいまだに、いまだにこの世界から抜けらんねえ。何度も、何度も俺にはできないと感じた。それでもまだここにいる」
「中毒みたいですね」
「ああ、そうだ。最高に、最高に気持ちのいいドラッグだ」
今回の話のテーマは『最善』と『平和』です。ちょっといろいろ入れ過ぎた気もしますがなんとかまとまったはずです。