祭り
しばらく、間があいてしまいましたが次はわりとすぐにできそうです。
シモンは多くの人間に自分の噂の真実を話した。シモンの人柄もあってか、多くの人間には受け入れられたがそれでもシモンに陰口をたたく者はいた。
「仕方ないわ。全員がすんなり信じると言うのは」
「分かってはいたけど、なんか悲しいな。肝心のアドルフは行方不明だと言うし」
アドルフはあれ以来、活動を辞めているらしく。その姿をシモン達は確認することができなかった。
シモン達は連携の練習のためにグラウンドに向かっていた。
「そうだな。でもいいんじゃね。いい経験になったと思えば」
「まあ、そうか」
「はいはい、湿っぽいのは止めましょう。連携の事を考えましょう」
「そうだよ」
シモン達がグラウンドに向かうといつもは見ない顔がそこにあった。
ダビデである。
「どうしたんだ、ダビデ」
「君たちの連携に混ぜてもらいたいんだ」
「なんか、あったの」
エミリーが不思議そうにダビデに質問する。
「興味が湧いたんだ、最強の魔導師に。最強の魔導師の本気を見るには僕だけでは役不足だとね」
「なるほど」
連携の練習は夜まで続き。それなりの形になってきていた。
「驚いたな。まさか、これだけの速さで俺たちに合わせてこられるなんてな。凄いな。ダビデ」
「いや、みんなの連携の速さに追い付くのが精いっぱいだよ。それにフォローしてもらってるからね。」
「フォローなんて誰だってされてるさ」
そう言ってシモンはダビデにハイタッチを求めた。
それに応じたダビデがその様子を見守るガロア達を見て言った。
「・・・一つ聞いて言いか。君らは将来について不安はないのか。MSPに入ったからといって将来の保証なんてないだろう」
「そんなに私たちはお気楽に見えるの」
「失礼な事を言ってるのはすまない。しかし、なんでそんなにも焦りが無いんだ」
「焦りはあるよ」
「それなら、現実逃避でもしているのか」
「そうじゃない。私たちは単純に世界はそこまで完ぺきでないことを知っているのよ」
「完璧でない?どういう事」
「ボクは社会は完ぺきなものだと思っていた。悪があれば正され、正義はみんなに慕われ、人の全ては正しくあるべきだと思っていた。だから、戦った」
「?」
「でも、結果はそうではなかった。完ぺきなどなくて、あり得なくて、だからこそ社会は多くの人間を受け入れていることを知った」
「どういう事。その言い方だと犯罪者も受け入れるって事?」
「うーん。ボクの言いたいことは何となくわかるけど、その言い方だと語弊が残るなあ。でも、なんて言っていいか」
「他のみんなは分かってる?」
「ああ、俺はそれを経験したからな」
「私は経験した人を見てたからね」
そう言ってエミリーはガロアを見た。
「私は体験した」
「うーん。でも言葉にするとなるとな」
「そうだねえ」
「そうか。それなら思いついたら教えて欲しい」
「分かった」
そう言ってダビデはシモン達と別れた。
それからも練習は続き、ついに学園祭の日がやってくるのであった。
学園祭は大いに盛り上がっていた。学園内には多くの出店が現れ、魔法で空を飛ぶ魔法使い達の航空ショーやプールの水を用いたイルミネーションなどの大掛かりなものが少しで歩くだけで目に入ってくる。
そんな学園祭の中をシモン達は見て回っていた。
「ダビデも来ればいいのにな」
ガロアが出店で買ったクレープを食べながらそう言った。
「まあ、本人がいいって言ってるんだし」
シモンはガロアを見てそう言った。
「はいはい。そんなことより楽しみましょうよ」
そう言ってエミリーはガロアに学園祭の地図を差し出した。
「こことか面白そうね」
ロザリンドは吹奏楽サークルの『音と光の共演』というイベントを指さした。
「確かに、確かに」
ボクがはしゃいでロザリンドに話しかける。
「そうでしょ。行かない、シモン」
「俺は良いよ、ガロアは」
「俺は違うのをな」
そう言ってガロアはエミリーの方を見た。
「そうそう、私も」
エミリーもガロアに賛成した。
「はいはい、二人っきりになりたいんでしょ」
「ごめん、ロザリンド。せっかくのイベントだし」
「ボク、一人で回った方がいい?」
「心配しなくても私はボクとも回りたいのよ、ねっシモン」
「そうだね。人数が多い方が楽しいし」
それを見たガロアがシモンの他のみんなに聞こえない声で言った。
「すまん、シモン。今度なんかおごるわ」
「気にしなくてもいいよ。今回の事でガロア達には迷惑かけたし」
「ああ、あれは気にすんな。アドルフとかいう奴がわりいんだ。そういや、アドルフの奴はどうなったんだ」
「分からないけど、もしかしたらジークムントさんにやられたのかも」
「ジークムントか。そうだといいがな」
「じゃあ、私たちは吹奏楽部のを見ることにするわ、エミリー達は」
「私たちは適当にそこら辺を見て回ってるわ」
「じゃあ、俺たちのイベントで集合でいいか」
「OK」
「じゃあ、イベントで」
「うん」
シモンとロザリンド、ボクは手を振ってガロア達と別れた。
シモンとロザリンド、ボクは吹奏楽サークルの『音と光の共演』というイベントの行われるホールにつくと席についていた。そこに銀色の短髪に金色の目をした男が現れた、ガウスである。ガウスはシモンの顔を見ると話しかけた。
「君、シモン君だよね」
「失礼ですが、あなたは」
アドルフの件もあってかシモン達は強い警戒でガウスを見る。
「ああ、当然で失礼した。私はガウス。君たちの学園祭での戦いの相手だ」
「あなたが?」
その言葉を聞いてもシモンはまだ警戒を解いてはいない。
「警戒心が強いね。免許証は持っているけど、それだけでは今の君の警戒心を完全には取り除くことはできそうにないね」
「すみません。色々とあったので」
「気にすることはない。すぐに結果は分かる事だろうし、そんな気持ちでは今から始めるショーが楽しめない」
「・・そうですね」
吹奏楽サークルの用意した『音と光の共演』は楽器の音程に合わせて、光による音の波を部分的に視覚化するものだった。まるで音と言う波の海の中にいるかのような光景に盛大な喝采でそのショーは終了した。
「素晴らしい」
「全くです」
ガウスは自分の腕時計で時間を確認した。
「もうこんな時間か。私は失礼するよ。ヴェルナ―に会わなければ、では今度は私たちのショーで会おう」
「はい」
ガウスは席を立ち、その場を離れた。
黙っていた二人がシモンに話しかける。
「あれがガウスさん?普通の人みたいだけど」
「ボクもそう思った」
「魔導師の人たちが何処かに持っているとげとげしさというか、力強さが無いような感じだった」
シモンは感じた事をそのまま言葉にした。
「と言う事はあの人は偽物?」
「いや、それはないと思う。何と言うか自信は感じたから」
「俺もボクと同意見だよ。あの人は強い。強いから、普通に戻ったのかもしれない」
「『強いから、普通に戻った』?」
「ええとね。人が強くなるには自分の最もしたいこと以外をほとんど犠牲にしなければならないと思うんだ。それは精神的な問題でも身体的な問題でもなく、時間的な問題で、だからこそ魔導師達は力強さが前に出る。そのために多くの時間を費やすからこそ、ある意味ではその費やしたものに飲み込まれるんだ。でも、あの人にはそれは無かった」
「あの人は飲み込んでいた、自分が膨大な時間を費やしたであろうものを」
対してガロアとエミリーはシモン達と別れた後、しばらく屋台を回っていたが疲れたので色々な魔法服を着た店員のいるカフェで休憩していた。
「流石に疲れたわ」
「まあな。でも楽しめそうなのはまだまだあるぜ」
「全部は無理よ。幾つかに絞りましょ」
そう言ってエミリーはテーブルの上の自分のケーキを食べる。
「そうだなあ。どうすっか」
そう言ってガロアは学園祭のパンフレットをテーブルに広げると視線を前にもっていくとそこにはちょび髭に短い金髪の何処かで見たことがある男の姿があった。
「んー・・・。あってめええ」
声と同時にガロアの手はアドルフの襟を掴んでいた。
「な、なんです、あなたは」
アドルフが驚いた声を上げた。
「なんですじゃねえ。お前のせいでシモンがどれだけ苦しんだと思ってやがる」
「あ、あなたはあの時。シモンさんと一緒だった人ですね。頼みます。シモンさんにも今から始まるショーに参加して頂きたいのです。呼んでいただけませんか」
ガロアは一瞬呆気にとられた。
「お前、人の話聞いてたのか」
「聞いてましたよ。シモンさんが苦しんでいるのでしょう。私が救ってあげますから、シモンさんを呼んでください」
いきなりの事で驚いていたエミリーがガロアに声をかける。
「どうしたの、いきなり」
「こいつがシモンを困らせた犯人なんだよ」
「この人が」
「それより。お前、さっきショーをするって言ってたな。何をするつもりだ」
「シモンさんは呼んでいただけませんか。仕方ありません。帰ります」
「人の話を聞けよ」
その言葉を無視してアドルフはカフェを去っていった。ガロアは後を追いかけようとしたが心がそれを拒絶した。関わりたくないという気持ちが全てを凌駕した。
「追いかけないの」
「追いかけなきゃいけないのは分かってるんだがなんか動けねえ」
ガロアは分かっている、ここでアドルフをそのままにすることがどれだけ危険かを。そして、ガロアは相手が強いと言うだけで怯むような人間ではない。強いと言う明確で強力な意味を持つ情報以上にアドルフの持つ何かがガロアに恐怖を与えたのだ。
ガロアとエミリーはそのまま、ヴェルナ―の元に行こうとしたが自分たちの行うショーの時間が迫ってきたこともあり、ショーの会場でヴェルナ―に会う事にした。
そして、ショーの時間が来る。もう日も落ちた第2運動場を取り囲むように魔術師の教師陣が取り囲み、そこに大規模な結界を発生させて周りの被害を防ぎ、それでもどうしようのない被害をヴェルナ―、トマス、ソフィがカバーする。そして、結界内にシモン、ガロア、エミリー、ロザリンド、ボク、ダビデ。更に最強の魔導師ガウスが立っている。
ガロアはアドルフの企みをヴェルナ―やシモン達に伝えていた。その上でヴェルナ―は十分に成功できるとの確信から続行を決断した。
「また、会いましたね」
そう言ってガウスがシモンに話しかけた。
「はい、あなたがガウス、最強の魔導師なんですね」
「まあ、最強かは分かりませんが戦いに自信はあります」
「では、みなさん。見ていますかああ」
学園祭の屋外メインステージ、第2運動場の見える校舎の屋上に建てられたステージ上でド派手な金箔のローブを着た司会者の少年の大声と共に周りの観客が声を上げる。
「皆さん、さっきから気になっていると思いますがヴィヴィアーニ先生が解説をやって頂ける事になりました。よろしくお願いします」
「はい、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
「では、選手側の紹介を始めたいと思います」
その声と共にシモンを魔法の光が輝かせる。
「最初は噂と言っても。魔導師を倒した事のあるとかないとか。その実力は未知数、シモ――――ン・ラプラス」
シモンが観客席に手を振る。順々に魔法によって選手たちが輝いていく。
「魔道特待生、魔法の威力は歴代の魔法使いでも最強レベル。赤髪のこの男は今日はどんな力を見せつけてくれるのか、エヴァリスト・ガロアあああああ」
ガロアが観客に手を振る。
「同じく、魔道特待生。魔法の技術は歴代魔法使い最強レベル。この金髪は、この光は今日は何を照らすのか。エミリー―――・デュ・シュトレえええ」
エミリーが両手を振る。
「魔道特待生。その親は魔導師という噂もある冷たい目で何を見るのか。何をしてくれるのか、ロザリいいいいンド・フランクリン」
ロザリンドは観客席に片手を上げる。
「これまた、謎の多い。シモン選手同様の編入組、その未知数の実力は魔導師にすら届きうるのか、ヴェネッサああああああ・ラプラス」
ボクは両手で観客席に手を振る。
「魔道特待生、最後の一人にして推定最強との声が上がる。見せつけてくれ、魔法使いの可能性を、ダビいいいいいデ・レオナルド」
ダビデは恥ずかしそうに頭をかいた。
一瞬、魔法使い達を輝かせていた魔法が無くなり真っ暗になった。
「そして、何よりも今回の誰もが見たがっていた最強の魔導師。魔法が科学となってから何人もの魔法を使える者が魔導師を目指した。ある者は魔法使い、ある者は魔術師に中には魔導師に届く者もいた。しかし、当然ながら最強は一人。その力を最強を見せてくれえええ、カール・フリードリヒ・ガウス」
一層強い魔法の光がガウスを包む。ガウスはそれに応えるように手を振った。
「以上で選手の紹介が終わりました。ここから、戦闘が始まるわけですが当然、魔法使いの皆さんにはハンデとして高いレベルの防御呪文を何重にもかけます」
シモン達の体を防御呪文が何度も覆う。
「では準備が完了しました。では選手の皆さん。指定の位置に移動してください」
選手たちはシモン達は集まり、結界の隅まで移動し、ガウスはその反対側の結界の隅まで移動した。
「移動も完了いたしました。では私の魔法の発動と共に戦闘を開始してください」
司会者は片手を空に向けた。
選手たちは相手をじっと見つめる。
「花の炎劇(フォーラス・フィア・フィアレス」」
司会者の魔法は空に撃ちあがり綺麗な大きな花火となった。その音とともに戦いが始まった。
「身体強化」
最初に動いたのはエミリーだった。体を強化しシモン達の集団の前方に出る。
「蓄積する水滴(ヴァ―サ―トッピロウス・エイネン)」
次にシモンが魔法を唱える。
エミリーの隣、シモン達の前方にガロアとダビデが立ち。ゆっくりと集団はガウスに向かって移動を開始した。
しかし、一方のガウスは何も動かない、ひたすらにシモン達を眺めているだけだ。
じりじりとシモン達は結界の中央まで移動した。
「豊穣の癒し人」
沈黙で一帯が飲み込まれていたその場所に異物が姿を現した。アドルフである。その背後に癒しを擬人化させたような母なる女神を引き連れてアドルフはゆっくりと結界の前に現れた。
すぐにヴェルナ―達はそれに対応しようと動き出した。それを無視しアドルフはそのまま、シモン達のすぐ近くに素早く移動した。突然の事の上、相手があのアドルフだと言う事もありシモン達は反応できず接近を許す。
「久しぶりです、シモン君。手伝ってもらえませんか」
「嫌です」
シモンははっきりとそう言った。
「そうですか。まだ、あなたも理解できませんか。いいですよ、すぐにあなたも救われる」
そう言ってアドルフはシモン達を無視してガウスの方に向かう。
「そうはさせない。ガウスさんと戦っているのは私たちです」
「何を言っているんですか。それだけの防御呪文を受けて、戦っている?面白い冗談ですね、シモンさん」
真っ暗な目でアドルフはシモンを見た。
「サリダ・デル・ソル」
ガロアが放った炎がアドルフを襲った。
「うっせえな。今は届かなくても直にお前を殴るところまでいってやるよ」
アドルフは炎に怯みさえせずガウスの元に向かって行った。
それを今度はシモンが止める。
「俺はあなたの考えに賛同などしていない」
アドルフは驚いたような顔をした。
「知っていますよ、そんなことは。あなたの噂を聞き、あなたを見た時に、もしかしたら押し通せるかもしれないと思ったから言っただけです」
「なっ」
「あの時のあなたは強さこそあったが決意が無かった。力があるだけの人間というのは流れに弱い。知らない間に少しずつ外堀を埋めていくと上手い事支配できるんですけどねえ」
「何考えてやがる」
ガロアがアドルフを睨んで言った。
「世界を救済するための尊い犠牲です。シモン君、君も納得してくれると思ったんですが」
そう言ってアドルフはシモンを見る。
「っ」
シモンはアドルフから眼を背けようとして途中でそれを止め、しっかりとアドルフを見ると。
「俺はあなたの考えには賛同しません」
「じゃあ、死にましょうか」
「そろそろ、話は終わりました?」
アドルフの女神の振り下ろした手をガウスが片手で受け止めた。
「ほう、魔法生物の攻撃を魔導師とは言え人間が止めるとは流石ですね、ガウス」
アドルフはガウスから距離を取るとガウスを見てにやにやと笑った。
「言語の反乱」
・・・・・・。何も起きない。まるで以前のボクの呪文のように何も生じない。しかし何かは起きている。
「何かをしましたね」
「まあ」
ガウスはにやにやと笑うアドルフを無視して片手を前に出し、もう一方の手でその手を支える。
「サリダ・デル・ソル」
しかし、呪文は発生しない。
そしてガウスは『言語の反乱』の正体に気付いた。これは相手の呪文の名前をランダムに入れ替える呪文だと。それによってガウスは『サリダ・デル・ソル』を唱えるつもりで『サリダ・デル・ソル』という名前の違う呪文を唱えていたということだ。
「気づいたんですか」
アドルフはガウスの様子を見てそう言った。
「大したものです。流石は最強の魔導師。ですがそれはもっと性質の悪いものです。一度喰らった相手は呪文は唱えるたびに呪文の名前を入れ替えます」
「酷い話だ」
ガウスはそう言って笑った
「余裕ですね。でも、確かにこれだけでは私はあなたを倒せない」
「分かってるな」
そのガウスをにやにやと笑い、アドルフは自分の居る位置からガウスの首を絞める真似をするとガウスの背後に魔法陣が生じた。
「禁言(ボーダ・ディファヴォ―レン)」
魔法陣からはガウスの首に手錠のような器具がついた。その器具は金属が軋むような音を立てる。
「説明してあげましょう」
そう言ってアドルフはにやにやと笑った。
「この魔法は単純な魔法です。相手の魔法を一つ指定してそれが唱えられると相手の首を絞めると言うだけです。威力は保証しますよ。魔導師クラスでも一発です」
ガウスは音を立てる器具を外そうとするが当然外れない。
「恐ろしい呪文だが魔法を唱えなければどうという事はない」
「・・・全くその通りですが、当然対処はありますよ」
「厄介だな」
「姦言」
「何だ今度は」
「今度は単純な魔法です。相手は一定周期で魔法を唱えなければならなくなりました」
「なっ」
「さあて、後は私が女神と共に攻撃をかわし続ければ私の勝ちです」
「ふう、大した戦術だが毎回ランダムでは、はずれを引く確率は常に七分の一」
「14%ぐらいですね。十分な確率です。後は高みの見物をすればいい」
「何だと」
「天使化」
アドルフの体を薄黒い糸が包み込んでいく。繭は割れ、そこからはその繭から現れたとは思えない眩い光を発する六枚の羽をはやしたアドルフの姿があった。アドルフはそのまま女神と共に空に浮かんでいった。
「後は空中から、ちまちまと攻撃を加えれば終わりです」
「ヴェルナ―さん、助けなくていいんですか」
二人の戦いを結界の外に移動し見守っていたシモン達が同じく見守っていたヴェルナー達に尋ねる。
「心配しなくてもいいですよ。あの勝負はガウスの勝ちです」
「いや、どう見ても苦戦を」
「私は彼を最強と言いました。最強には最強たる所以があるのです」