最悪の魔導師アドルフ
前回の『魔導師範と二人の魔導師』の続きです。かなり間があきましたが一応まだ続きます。今回は今までと違い明確な敵が出てくることとその敵がおぞましいので注意してください
何においてもそうだと思いますが何かになりたいなら、それを知る事です。知ること無しにそれになることは出来ないし、もしかしたらそれになることはそれほど難しくないかもしれないですよ_せんせい。
とある田舎道、周りには永遠と続く畑が広がっていた。そんな田舎道を男がゆっくりと歩いていた。男はその道から見える一件の家に着いた。男はそのまま、その家のインターホンを押した。しばらくすると多少の音がした後、老人が現れた。
「はいはい、どちらさんで」
「睡眠(シュラ―フ)」
男の周りから強い光が発生した。その光に飲み込まれるように老人は眠りに落ちた。男は家の中に入るとその家のキッチンにあたる場所で止まった。
「ここらへんか」
男は今度は外に出て、家の全体像と地面からの高さを確認した。確認が終わると男はまた家に入り、キッチンに向かう。
「壊す必要はなさそうだ、さてと」
「封印解除」
男はまるでそのキッチンの通路がある空間にシールでも貼り付けられているかのように空間を捲っていった。そうするとそこに一人のちょび髭に短い金髪の男が現れた。ちょび髭の男は形容しがたい暗い暗い何かを纏っていた。
「私は許されたのか」
「いや、許してはいない。君は世界にいてはいけない人間と判断して封印していた。しかし、状況が変わった。今の世界なら君は必要だろう」
「はははははは。そうか。そうだろ。私は正しかった。誰だ、私を否定したのは」
「相変わらずだな。だがそうでなければ封印を解いた意味が無い」
「ありがたい、ありがたい。今度こそ祖国をいや、私を見捨てた祖国に興味はない。今度は世界だ。世界のために我が人生はあるんだ。はははははははは」
「私はそろそろ行くよ。後は君の好きにするといい、アドルフ」
「そのつもりだ」
そう言うと男は去っていった。
その様子をアドルフは見守るとゆっくりと家を出た。
「何もかも変ってしまったようだな。・・・・・・だが、だがしかし私にはすべき事がある。まずは都市を目指すとするか」
アドルフは自分の顔を手で鷲掴みした。
「情報共有(ダーアツタウ・フォン・インフォマツ―ネン)」
呪文を唱えた後、アドルフは鷲掴みした手を離しそのまま空間を強く振り払った。その動きと同時にアドルフを中心に光る円がその半径を巨大化させていった。
「なるほどな。あれからそんなに時間が経ったか。・・・・、いや待て、そんなことよりもインターネットだ。これを使えば私は世界を救える、救えるぞオおおおおおお。・・・・さてと早く都市に移動しなければ」
「天使化」
アドルフの体を薄黒い糸が包み込んでいく。それは繭となり、周りの空気を吸い尽くすようなそんな色となった。繭は割れ、そこからはその繭から現れたとは思えない眩い光を発する六枚の羽をはやしたアドルフの姿があった。
「・・・・なぜ、私の天使の繭は薄暗いのか。・・・・いやいや、そんなはずはない。・・・ははははは。私は、私は世界を救う者。考えている時間はない。私にはこの時代にも救うべき者達が居るはずだ。・・・・居るよな。いや、どれだけ世界が変わろうとも救いを待つ人間はいる。そして、それを私は救わなければならない。救わなければならない」
アドルフは空を飛び、『情報共有』で得た知識を元に都市部に向かって行った。