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バグ疑い

「いたた……いきなりラリアットって、(キミ)なんなのさ!」

 俺を睨みながら、一ノ瀬が声を荒げていく。


 その反論と反応は正しいと思う。

 だけど、俺にフラグを壊させないお前が悪い。

 好感度が急上昇した場合、こういうところで地道に好感度を下げなきゃならねぇからな。

 うん。まぁ、本当のことを言うと、攻撃を正当化するための、ただの言い訳だったりする。



 女の子にはもちろんケンカふっかけたりなんかできないけど、今回は野郎が相手だし、たった一回のラリアットくらいは許されるだろう。



 そう思っていたのだけれど、一ノ瀬は涙目でビックリするようなことを言ってのけたのだ。




「女の子にラリアットかます男なんて、初めて見たよ、もう!」




――は?


――誰が……『女の子』……だと?



「ま、いいや。あの変態を()けただけよしとする。そんじゃね」




 ツッコミを入れる隙もなく、一ノ瀬は青髪が消えた方とは反対の方へと走り去っていった。


 男子用の青色ジャージではなく、女子用の赤色ジャージをその身にまとって……




☆゜*・。.。・*゜*・。.。・*゜*・。.。・*゜*・。.。・*☆



「嘘じゃ……ねぇ」


 翌朝少し早く登校し、D組の教室をのぞいてみると、そこには真剣に本を読んでいる一ノ瀬がいた。


 白のカッターシャツに、えんじ色のストライプ柄ネクタイをつけ、紺地で薄手のカーディガンを羽織っている。

 そして、下は……灰色チェックのスカートと紺のハイソックスに上履き。


 本当にあいつは女だったのか……


 よく考えてみれば、昨日屋上で会った時も向こうが高い位置にいたせいで、スカートは見えなかったしな。

 だけど、あいつ「俺」とか「僕」とか名乗っていたような……

 あぁ、もしかしたら、あれか。

 (ゆう)は男にも使う名前だし、ボクっ娘ってやつを狙っているのかもしれない。



 しかし、あいつ一体何の本をあんなに真剣に読んでいるんだ?

 

 俺が見ていることにも気付かないくらい、一ノ瀬は食い入るように本を読んでいて。



 そんなに面白い本なら俺も読んでみたいものだと思い、目を()らしてあいつが読む本のタイトルを読み上げた。


麻雀(マージャン)の鬼~雀鬼(ジャンキ)と呼ばれた男~」


 あぁそう……


 一気に興味の熱が冷めていくのが自分でもわかった。

 白い目で一ノ瀬を見ていると、あいつは袋から無造作に何かを取り出し、そして口の中へと入れていく。


「って、あいつ何食ってやがる!」




 女子の食べ物の代表格といえば、甘いもの。

 チョコレートやケーキ、クッキーやキャンディ。

 いわゆるスイーツってやつだ。

 

 隣の席の朝比奈や、生徒会所属の栗栖(くりす)先輩もスイーツを食べている姿をたまに見かけるし、後輩の犬飼に至っては、焼いたクッキーを俺に渡そうとさえしてきた。



 だが、あいつが取り出したのはチョコでもクッキーでもなく



 いかくん。

 すなわち、イカの燻製(くんせい)……




――女子高生が朝っぱらから、教室でつまみ食ってんじゃねぇよ!



 あぁ……一ノ瀬をボクっ娘とかいうジャンルにくくってしまった自分が恥ずかしい。



☆゜*・。.。・*゜*・。.。・*゜*・。.。・*゜*・。.。・*☆




 D組の教室で衝撃の光景を見た俺は、ただひたすら考えを巡らせながら自分の教室へと歩いて行く。


 どういうことだ……

 やっぱりどう考えても、この世界で『あれ』はおかしい。

 女子なのに麻雀・雀鬼・いかくんだぞ!!!


 だって、この世界は美少女ゲームの世界。

 正統派・後輩・先輩・お嬢様。ツンデレ・ヤンデレ・アイドル・帰国子女……

 美少女ゲームというのは、こんなふうな様々な系統の女子が男たちに『萌え』を提供するゲームだと俺は思っていた。


 だけどこの世界は最近、ゲイやら熟女やら手広くなりだして。

 そして今回に至っては、キャラも不安定なイケメン風オヤジ系女子……



 ずいぶんとマニア的な萌えを提供し出したのは何故だ。



 俺がフラグを破壊し、イベントを避け続けたことでバグでも発生してしまったのだろうか?



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