第拾壱話~クドキマトワンコ~
お久しぶりですタカです。
ちょっとした改装工事で一か月ほど営業停止していた喫茶店異覚混沌が再オープンして早一週間。
相変わらずなカオスっぷりでございます。
真坂「フハハハハハハ!!!スパッツをかぶった私は三倍を超えて十倍の速度で動けるのだぁ!」
真野「鎖骨分を補給した僕に追いつけるかなぁぁぁぁ!!」
紅狐「イヤァァァァァ!!裏山くん来ないでぇぇぇぇぇぇ!!!」
裏山「紅君僕とデートしよう!そうだ服は何がいい!メイド?ビキニ?メイドォォォ!!!」
ハクヤ「姐さん…その…あの…俺と…デ」
姐御「わるいハクヤ。アタシ今日旦那とディナーなんだ。」
ハクヤ「ウアァァァァァアワアァァァヮァァァァァッ!!!!」
人が落ち着いてかなり暴れられるようになったからなのかオーナーと店長は走り回り……
オーナーについては何も聞かないでほしい。俺は見ていない。
あの男がスパッツを頭にガッツリかぶってるなど!
狐さんが全速力で、目が血走っている裏山さんに追い掛け回されたり…
裏山さんがメイド服を着せる気満々な事には気にしないでおこう。
ハクヤが姐さんをデートに誘おうとしてさらっと断られ…
ハクヤ、今度旨い焼き鳥の屋台見つけたから一緒に行こう…おごってやるから。
さすがに不憫でならない。
そんなこんなで収拾つくのかなぁと思い始めたその時、喫茶店の入り口から声が聞こえてきた。
女性スタッフ「いらっしゃいませ!一名様ですか?」
???「いや、二名で頼む。」
女性スタッフ「お連れの方はいつほどにお越しになられますか?」
???「今ここにいるじゃないか。」
女性スタッフ「きゃっ!!」
ここまで聞いた瞬間、俺はナンパだと判断し瞬時に入口まで走ろうとしたが、客の姿をはっきり視認したときにこう叫んでいた。
タカ「やっぱりアンタかJィィィィィィ!!!!」
Mr.J、通称J。
異覚混沌のホールスタッフで、普段は貴重な良識人だが、
ひとたび女性を前にすると気恥ずかしさが暴走するらしく口説いてしまう癖がある。
現に女性スタッフの真由美ちゃん(仮名)を口説いている今でも顔が三割増しで赤くなっている。
しかしこの口説き癖によって男性スタッフ一同からかなり妬みの視線が飛んでくるのも日常茶飯事である。
タカ「真由美ちゃん、俺が代わりに。」
真由美「あ…はい。ありがとう…」
Jに握られた手をしっかりと胸の前で抱く真由美ちゃん(仮名)。
見慣れた光景すぎてもうどういえばいいのかすら思い浮かばない。
J「あータカくん、一人用の席お願いしてもいいかな……?」
タカ「……ええ、こちらになります……」
まずはJをスタッフ用のスペースに案内することにした……
もうなんだかぐったりしてしまった。
できるならもう家に帰りたいと思う。
あと数時間のしんぼうなんだ、我慢しよう。頑張れ俺。
あのあとJがスタッフ参加してハクヤが万次郎と交代して帰宅した。
忙しくなってくるタイミングでハクヤが抜けるのは痛いが、アイツいまだに課題終わってなかったらしい…
そんなこんなで…
タカ「キッチン!2階14テーブルの注文まだアジフライプレートが届いていないです!」
万次郎「待って!その前に注文がきた1階27テーブルのステーキセットが間に合ってない!」
仮面「キッチン!サイクルの状況は!?」
姐御「あと一人二人はほしい!ハクヤがいないのが痛すぎる!」
仮面「オーナーと紅君をキッチンに回す!待っててくれ!タカ君は完成次第どんどん持って行ってくれ!」
タカ「はい!わかりました!」
…という状況で、ピークもピーク、忙しさが天元突破しそうだ。
スタッフ全員が余裕なく走り回っていたその時、一階端あたりのテーブルから怒鳴り声が聞こえた。
男「いいから黙って酒注げよぉ!!」
詩歌「当店ではスタッフに対する同席の要請は認めていません!」
男「ああ?俺の言うことが聞けねぇってんのかぁ!」
マズイ、酒で酔った客がこのタイミングで出てくるとは。
現在撃退担当であるオーナーはキッチン、チーフは店の外で待機客の整理、ハクヤもいなく、ほかのスタッフも救援したくとも自分の仕事に押されている。
頼みのダークホースである店長も現在提携店との会合があって不在。
かくいう俺もほかのテーブルに呼ばれた以上動くことができない。
最後の希望であるJのほうをちらりとみるが…
ギャル1「ねーねーいーじゃーんうちらとあそぼーよー」
J「お…お客様!当店ではナンパ、それに準ずる行為は禁止で……」
ダメだ、あっちもつかまってる!
このままでは詩歌さんが危ない。
どうしたらいいのだろうか……!
男「テメェ俺が紳士にしてたら調子に乗りやがってなぁ!」
???「ワオン!」
男「なんd……は?」
急に鳴き声が聞こえたと思ったら男の足元には一匹の犬がいた。
うちは確かペット禁止じゃあ……ってそんなことよりも詩歌さんは大丈夫だろうか。
男「おいワンコ、オマエどこの野良だ?」
犬「ワフッ!」
男「俺は今大事な話してんだほら、肉やるからどっか行け。」
男が犬に向かって肉を出したその時…
犬「バウッ!」
ガブリンチョ!
犬は思いっ切り全力で男の手首を噛んだ、いや、食べた…?
男「イッテェェェェェ!!!!!」
男は腕を引こうとするががっちり咥え込まれていて離れない。
その隙に詩歌さんはキッチンのほうへと非難、俺たちはほかの客をなだめることになった。
男「ってめぇ!!!ふざけんな犬のくせにぃ!」
いくら引っ張っても離れない犬に業を煮やしたのか男は逆の腕でフォークを持って思い切り振りかぶる。
だが、犬に気を取られすぎて後ろにいた……あの人に気付かなかったことが致命的だった。
ソラサマー「おい…うちの家族に何してんだ?」
男「は……?ヒッ!?」
振り上げられた腕をガッシリ、それもミシミシと音が鳴るくらいに握りつぶしているのは、ソラサマーさんだ。
そういえばあの人犬好きで目の前で傷つけようとしたやつ半殺しとか普通だってチーフが言ってた気もする。
心なしか無表情なのに威圧感が半端ない。
現に酒に酔ってた男性客が青ざめて震えて酔いがさめるくらいに……
ソラサマー「なぁ仮面、こいつやってもいいの?」
ソラサマーさんの近くに走った後なのか息を荒げて隣に来たチーフはただ一言こういった。
仮面「臨時スタッフとして許可する。」
ソラサマー「サンキュー!ほら、とっとと歩けや」
青ざめるを通り越して真っ白になった男を引きずってソラサマーさんは店の裏口へ向かっていった。
その後チーフとキッチンから出てきたオーナーの手によって騒ぎは沈静化、詩歌さんは姐御のカウンセリングと一週間ほどの安静を取った休みを与えられて翌週いつも通りに出勤した。
チーフたちの案でスタッフルームで何やらしていたようだが教えてはくれなかった。
なんであの場にソラサマーさんが犬を連れて居れたのかわからなかったが気にしてもおそらく真実を知ることはできないと思って忘れることにした。
犬にじゃれさせてもらったが一切噛まれることなくむしろなめられた。
犬ってかわいいな。




