表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/43

第八話:竜騎士との空中戦

「メロン!」

「お兄さん」

奴隷(メロン)!」


 三姉妹に身体(からだ)を揺さぶられ、俺はようやく気がついたらしい。辺りは

真っ暗で――森の中だから仕方ないのか。


「大丈夫ですか? 勇者様」


 そこには初めて会った時と同じようなマントを羽織(はお)った魔女っ()が、

心配そうな顔で俺を見つめていた。


「大丈夫だ……ちょっとびっくりしただけで――」

「勇者様のギンギ――」


 はいそこまで。ところで俺はどれくらいの時間気絶していたんだ?



 俺はようやく起き上がれるようになり、魔女っ娘と少し話をすること

にした。


「あー……えっとだな」


 魔女っ娘は可愛らしく腰を振り、


「モモナですよ? 勇者様っ」


 可愛い。魔女っ娘属性に目覚めそうだ。


「ぎゅぅぅぅぅぅ……」


 モモナに見とれていると、左ふくらはぎをマコにつねられた。(いて)ぇよ!


「ふんっ!」


 マコはそっぽを向いた。何だよ突然……

 モモナはクスりと笑い、


「ところで勇者様はこれからどこに行かれるのですか?」


 ふっ……世のため人のために魔王を倒すための冒険を続けている……

 なんて、中二病っぽいこと言ってみたり?


「ふぇ~……」


 モモナの目が(きらめ)き、俺の手をがっしりと握り締めた。


「私もおともするです。こう見えても私は占い師としても実力者さんな

のですよ!」


 えへんと胸を叩き、モモナは腰に引っさげたポシェットのような物か

ら水晶玉と小さな座布団を取り出した。


「一緒に(のぞ)いてください、勇者様! 私を連れて行くと素晴らしいオプ

ションとしての働きをしますよ」


 モモナは俺の腕を抱き、水晶玉に顔を近づけた。――俺も近づけてる

わけだから、必然的に顔同士も近づくわけでして……


「よぉ~く見ててくださいね」


 耳元でトロ甘なボイスが発され、俺は理性を保つためにも水晶玉に映

る情景に集中しようとしたが。


「はわわ……!」

「んぐぅ!?」




 水晶玉には俺の未来では無く。幸せそうにシャワーを浴びるモモナの

あられもない姿が映し出されていた。


「おっとこのこ~♡ おっとこのこ~♡」


 何か卑猥(ひわい)な匂いのする歌を気持ちよさそうに歌っている。それとだな

モモナ……多分君は(あせ)って大きな間違いを犯している。


「ひゃぁぁぁぁ! まだ修行中なのですっ! み……見るなー! なの

ですぅっ!」


 さっきから俺はモモナに間違いを指摘したいのだが。


「けっ健全な男の子には刺激がヤバイのでっ……! 勇者様のお目目は

塞がせていただきます」


 支離滅裂な言葉遣いも正したい。……マコミオムーンの誰でもいい!

このまま続けられると俺は死ぬかもしれんのだ。誰かこの異常事態に気

づいてくれっ!

 ミオが俺の顔を覗き込み、ハッとした表情をした。――やっと気づい

てくれたか……


「モモナさんっ! モモナさんが(ふさ)いでるのはお兄さんのお目目じゃ無

くてっ……!」


 モモナは失神しかけの俺の顔から手を離した。やれやれ、マジにあの

世へ()っちまうかと思ったぜ。

 モモナは焦り過ぎて――俺の目ではなく鼻と口をしっかりと塞いでい

たのだった。





「ごめんなさい! 勇者様を殺しかけるなんて……」


 モモナはさっきから地面に頭をこすりつけていた。し……仕方ないよ、

それに俺も水晶玉の中で結構見てしまったしだな……


「お()びについていきます! きびだんごは別にいりませんよ?」


 この世界にも桃太郎ってあるのかー。

 マコが俺の耳元で、


「結構前に来た勇者様が広めた昔話らしいですよ? きびだんごって…

…どんな味がするのかなぁ」




 今の俺らのパーティ


 マコ:三姉妹の多分一番上のお姉ちゃん。俺と契約した事により、秘

    められた能力が開放された。

    能力:究極(アルティメット)不完全製造能力(・ザンネンスキル)


 ミオ:おっとりした大人しい女の子で、多分次女。俺と契約した事に

    より、自身の能力を俺に分け与えてくれた。(ミオは元々創聖

    剣を持ち上げる能力は持っていた)

    能力:聖的敏感(アルカディア)剣俺最強(・スイカクイタイ)


 ムーン:現時点では能力不明。多分この中では一番末っ子。もしくは

     三つ子で同い年。


 メロン:勇者(主人公)。俺。シャンプーで言うところの外身。三姉妹

     の能力を強化して使える。


 モモナ:魔女っ娘と見せかけた占い師……だと思った? 残念! ド

     ジっ娘さんでした!


 sadako:マコの能力で増加する。身体能力は地球上の人類の数倍。

     某3D幽霊とは全く関係ありません。


 グラサン:マコの能力と俺の能力がシナジーする事で生み出せる黒服

      の怖いおじさん。拳銃とか持ってる。能力で増加する。





 マミムメモのパーティは森の中を冒険していた。さっきから何事も起

きず、このまま魔王にも会わずに冒険終了! なんて事にならないかな

……なんて非生産的な事をボヤッと考えていた。


「勇者様。いつ敵が現れるか分かりませんよ? こーやって目を見開い

て、いつでもどこでも敵を真っ先に見つけないとですねー……」


 モモナはギョロギョロと黒目をあちらこちらに移動させていた。

 どうでもいいが、そんなに目を見開いてるとドライアイになるぞ。


「みゃぁぁぁ! 目に砂埃(すなぼこり)が入りましたぁぁ!」


 そういえばさっきから何か風が強いな……まるで何かで地面を(あお)いで

いるような――



 俺の予感は的中した。空を見上げると大きな龍が、翼を羽ばたかせ地

面の砂を巻き上げていた。

 まさかとは思うけど、こいつは魔王の手下だったりしないよな?


「我が名は竜騎士ダイナ! 新しい勇者よ、次は私が相手だ!」


 嫌な予感って言うのは的中するのがデフォなんだよなぁ。




「ハハハハハ! 勇者よ。ついてこい!」


 ……とは言われても、俺は龍を連れていないし青いタヌキみたいに竹

とんぼで上空へ飛び立つ事もできないので、ただただ茫然と竜騎士の飛

ぶ姿を眺めていた。

 どうせならこのままさりげなく逃げ出しちゃおうかな――なんて考え

ながら眺めていたのだが、ドジな魔女っ娘さんは俺が空を飛べないこと

に劣等感を感じていると思い込んだらしく。


「大丈夫ですよ! 私の魔術的な何かであんなドラゴンさん、すぐに出

してあげるのです!」


 キラキラしたお目目でそんな事言われて、きっぱりと断れるような鋼

の精神はあいにく持ち合わせていなかったので、俺は仕方なくモモナに

龍を出してもらう事にした。――やれやれだぜ。




「ドララララ……ドリャァ!」


 モモナがステッキを振りかざすと、その場にドラゴンが現れた。――

だがな、モモナよ。別にケチをつけるわけでは無いが……ビジュアルは

どうにかならなかったのか?

 俺の目の前にはアメコミ風のドラゴンが寝そべっていた。どうしてこ

うも漫画チックな見た目のドラゴンを作ったんだ?


「理由を十文字以内で答えろ」


 モモナはきょとんとした表情で、


「可愛かったから」


 即答された。マコミオムーンもドラゴンをなでなでして可愛がってる

し、緊張感なさすぎだ。もうヤダこのパーティ。



 結局この漫画チックなドラゴンには、俺とモモナ、あとグラサンとSa

dakoを一人ずつ乗せて空へと舞い上がった。三姉妹は地上で他のsadako

とグラサンに護衛してもらう事にする。

 さて、空中戦開始しますかっ。



 見た目とは違い、流石ドラゴンと言えるスピードで空へと飛び上がっ

た。土埃(つちぼこり)とかもできてるし――あれ? 意外とこいつ強いんじゃね?


「モモナ……このドラゴンの戦闘能力は?」


 モモナは「えへ♡」と笑い、黙った。知らないのか……でも可愛いか

ら許す!


「火は吹かないと思うのです。それと……優しくしてくださいね? 痛

くするとかわいそうなのです」


 言い方ってか表現が何か――っとそれよりも竜騎士ダイナとかいうや

つはどこかな?


「勇者よ! 遅いぞ、お主は宮本武蔵か?」


 ハーイ先生。この世界に宮本武蔵なんているんですかー?


「勇者様……」


 モモナが指先で俺の肩をチョンチョンと突っついた。何だよ、今いい

ところだっていうのに。


「高いところ来たら……その、我慢できなさそうなのですけど……」


 モモナの手の先を見ると――ああ……まあ生理現象だからな、俺は別

にとやかく言わないが……


「ってじゃあ何でついて来たんだ!」


 モモナはビクッとして、(怖がったのか、別の意味で震えたのか、俺

には分からなかった)


「ドラゴンさんに乗ってみたかったから……なのです」


 俺は「やれやれやれやれ」と頭の中で復唱した。もう本格的に勇者や

めたくなってきた。ここ職安(ハロワ)とか無いの? あったら連れてってよ。つ

いでにグラサンとsadakoの分もお願いするから。


「ああ……あああっ……♡」


 いちいちエロい声出すな。俺まで変な感じになってくるじゃないか、

もっとこう静かにしててくれよ……



 前方に存在する竜騎士ダイナのこめかみがピクピクと動き出した。


「お前ら勇者ども! わざわざ天空まで来てイチャイチャを俺に見せに

来たのか!」


 違ぇ! この状態をどう見ればイチャついているように見えるんだ。

()れそうな女の子とそれを見てドキドキしてる勇者――あれ? 何か卑

猥な匂いがするように感じるのは俺だけか?


「うらぁ!」


 ダイナの長い(やり)が俺のこめかみをかすった。危ない――やつは空中戦

をやり慣れている。ど素人の俺が戦って平気か?


「オラァ!」


 グラサンが拳銃を撃った。ダイナはそれを槍で華麗に弾き飛ばし、

「フゥん」とどこかで聞いた事があるような声で鼻を鳴らした。――(だい)

喝采(かっさい)! とか聞こえてきそうな……

 モモナがギュッと俺を抱きしめた。何? マジで天空での愛の告白?

 モモナは涙目になりながら、必死に(こら)える表情をして、


「絶対に見ないでくださいね……」


 やめろバカ! そんな真後ろでするとか、もうドジを通り越してバカ

だよ! あれか? 狙ってやってるの?


「コウモリさんっ!」


 俺を抱きしめたまま(俺が振り返らないようにらしい)モモナの方から

無数のコウモリが放たれた。どうやら一回全裸にならないと、そのマン

トは脱げないらしい。


「何だこのっ!」


 ダイナは槍を振り回し、コウモリを追い払っていた。――え? 何で

今創聖剣ウォーター・メロンを振りかざさないのかって?

 すみません、地上に忘れてきました。




「あああっ……♡」


 モモナの開放感のある声。俺はこれ以上下ネタに関わるのはごめんな

ので、モモナの手を振りほどきドラゴンの頭の上で耳を塞いで縮こまっ

た。


「よくもぉぉ! ……うっ?」


 ダイナがコウモリを追い払い終わったらしく、こっちを見たのだが。

 ――かろうじてそれは聞こえた。「うっ」て何だ?


「のぉぉぉぁぁあ!?」


 ダイナは俺らのドラゴンの上に視線を向け、顔を真っ赤にして何かを

凝視している。――途中で何を見ているのか大体気づいたが、あえて触

れない事にした。


「おおおぉぉぁあ!?」


 ダイナは興奮と驚愕(きょうがく)のあまりか、バランスを崩したらしい。ドラゴン

の上で盆踊りをしながら、徐々に(はし)へ追いやられ――


「あぁぁぁぁ……」


 ダイナのドラゴンの上から真っ逆さまに落下した。それを猛スピード

でドラゴンが追いかけていった。――多分死にはしないだろうが、もう

俺らに戦闘を(いど)みには来ないだろう。むしろそうあってほしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ