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第三十二話:私に攻撃(物理)は効きません。

 しかし俺は少し戦いにくかった。

 フェンシングのように剣を俺に向かって素早く打ち込んでくる。

 まるでシルバー・チャ○オッツだな。などと考えながら、俺はその剣さばき

から身を守るしか出来なかった。

 ――クソっ……大剣使いの俺とは相性が――


「んもぅ! 何やってんの!」


 ルリの声とともに、メイド戦士の攻撃の手がピタリと止んだ。

 創聖剣の(かげ)から顔を出し状況を把握(はあく)すると、ルリの月詠(つくよみ)ノ刀がメイド戦士の

身体(からだ)を貫いていた。

 メイド戦士の目が(うつ)ろになり、口から血を垂らしている。

 どうやら内蔵にでも傷がついたらしい。

 モモナも戻って来て、三人目のメイド戦士が倒れているのを見たルリが「ふぅっ」と息を吐き。


「メロンさんったら。私が一生面倒見てあげなくちゃいけないみたいですね?」

「こ……これはたまたまだ。相性が悪くてだな……」


 ん? 一生面倒を――

 おっと危ない。思い出せ思い出せ……

『男性は女性の何気ない行動を意識してしまいます』

 ――だったよな。確か。

 ルリをチラリと見ると、モモナと楽しそうに談笑している。

 ――確かに。笑顔のルリは何となく気持ちがほっこりするって言うか……

 ――って! 何考えているんだ俺! とりあえず今やるべき事は魔王討伐だ

ろ?

 余計な事は考えてはいけないんだ!



 ――とは言ったものの。男の子というものは、相手の女の子に良く思われて

いるのでは無いか? と思うと途端にその()の事が気になってしまうのだ。

 これは本能上仕方がないものなのでは無いか。と思うが……この()の戦いに不自由が起こると困る。

 ――忘れよう。

 と思っても恋愛事というのは忘れようとして忘れられるものでは無い。

 これが……「恋」ってやつなのか? ――違うか。うん、違うな。

 そう思うことにしよう。これ以上考えても何も変わらない。


「敵みたいよ」


 マコが俺のズボンを引っ張った。


「どこだ?」

「そこの物陰」


 見ると観葉植物(かんようしょくぶつ)らしき影が前方に見えた。

 なるほど。あの木の後ろに隠れているのだな?

 観葉植物まであるとは、魔王城と言っても普通のお屋敷だな。


「火炎弾を撃ち込みますか?」

「いや。モモナの魔力はとっておいた方が良い――ここはルリと俺で行く」


 ルリを見ると「任さなさい!」とでも言うような頼もしい返事をいただけた。

 ありがとう。心強い!



 俺とルリはそっと観葉植物の陰に隠れ、お互いに頷き合いながら向こう側に

自身の武器を振り下ろした。


「てぁぁぁ!」

「うぉぉぉ!」


 ――だが。木の陰には誰も隠れていなかった。

 誰かがいたという形跡も無い。

 だが生命反応はあったはずだ。

 俺にはよく分からないが、三姉妹が「気配がする」と言った時は絶対誰かはいるはず――

 元勇者の大声が聞こえた。


「違う! そいつだ。その木が敵だぁ!」

「木を隠すには森の中と言うが――屋敷の中でも十分隠しとおせますなぁ。こ

れはまた私の武勇伝が増えました。ハッハッハ」


 紳士的な喋り方をする――俺は目の前の観葉植物の上の方を見た。


「ハッハッハ。どうも」


 俺らが観葉植物だと思っていた木には顔があった。

 いわゆる人面樹ってやつか。

 小学校の時流行ったバ○エンにそんなのがいたような、懐かしい感覚が蘇る。

 ――だが今はそんな感傷に浸っている場合では無い。

 何だって!? この木が俺たちの次の敵?


「危険だ! そいつから離れろ」


 元勇者の叫び声。

 俺はボサッと木を眺めていた。

 ――だから一瞬行動が遅れたのだ。


「危ない!」


 ルリに抱きしめられ、俺は床に押し倒された。

 柔らかい感触――とかやっている場合では無く、抱きしめられたままゴロゴ

ロと転がり反対側の壁に激突した。


「奥義! 食虫植物落とし!」


 ルリが俺を木の下から逃がしてくれた直後。

 木の茂った葉っぱの中から――大量の食虫植物が降り注いだ。


「サバァ!」


 二階への階段まで案内してくれていたsadakoがやっとここまで到達したらしく、人面樹に体当たりをぶちかました。


「効かん!」

「サバァァ!?」


 人間の数倍の身体能力を持つsadakoを人面樹は、いともたやすく跳ね飛ばす。

 ――物理的な攻撃では倒せないな。


「燃えるかな?」


 ルリは月詠ノ刀を赤く照らしたが――どうだろうか、もしかすると木のよう

な見た目をしておきながら実は岩石かもしれんし。

 ――燃えるかどうかの確証は無いな。

 それに俺の創聖剣で切り裂けるかどうかも疑問だ。

 もし切れなかったら、俺はこの人面樹に無防備な姿(別に変な意味ではござ

いません)をさらけ出してしまうだろう。


「やれやれだぜ……」

「では黒×赤で燃えるかどうか確かめますか?」


 俺はルリの提案に賛成する。

 確実に切り落とせる「黒○」の能力なら試すのにはもってこいだ。


「では……行きます!」


 この世の物では無いのではないかと思える程の瞬発力。

 目にも止まらぬ速さで飛び出し――一瞬のうちに人面樹より奥の廊下まで到

達していた。


「切り落としたか?」

「ダメでした……」


 ルリの身体がガクンと崩れ落ちる。

 太ももの辺りから血が流れ落ちている。


「何だ? 何が起きたんだ!」

「ミュミィミミミィィィン」


 さっき人面樹が振り落とした食虫植物が、大量にルリの服の中から現れた。

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