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第三十話:魔王城も模様替えをする

 さて。

 そんなモモナの大活躍の後――俺たちは盛大に迷うこととなった。


「どこだここーっ!」


「リフォームか改装でもしたのかな? 俺が前に来た時と構造がガラリと変わっているぞ。そうだ! 前来た時はここに階段があったんだよ」


 元勇者が見据える先には――階段など無く魔物を(かたど)ったと思われる石像が並んでいる。

 羽が生えたような猿。

 金剛力士像に牙が生えたような物。

 ヘビが身体中に巻かれた(とら)


「不気味だなぁ……」

「まさかこれが動き出したりしないわよね?」


 カタカタカタカタ……

 石像が()れ始めた。

 ――いや。そんなはずは無い。こんなタイミングよく動き出すなんてまさか。

 俺の願いも(むな)しく。

 石像たちはみるみる身体に生命を(とも)し――

 魔物として復活した。


「戦うしか無いようね!」


 ルリが月詠(つくよみ)ノ刀を(かか)げ、応戦状態に入った。

 マジかよ……それともう一つ。


「やれやれだ」




 魔物は全部で四体。

 羽の生えた猿が一体。

 金剛力士像が二体。

 ヘビ虎が一体だ。


「私がこの「あ像うん像」みたいなやつを倒します!」

「分かった。俺はこのヘビ虎をやる!」

「私はこのおサルさんをやっつけちゃう……なのです!」


 真っ先にルリが飛び出し、月詠ノ刀を振りかざす。


「黄×緑!」


 金剛力士像の片方「あ像」がツタ植物に縛り付けられる。

 そして黄色に光った刃が伸び――「うん像」の方を真っ二つに切り裂く。

 激しい断末魔とともに真っ青な血液が吹き出した。魔物の血は青かったのか――だがしかし、赤色ほどは目に焼き付かないのでどちらかと言うと好都合だ。

 そのままルリは振り返りざまに、ツタ植物に縛り付けられている方の「あ像」をこれまた綺麗にパックリと切り落とす。

 ――いやー。これまた凄い切れ味だこと……


「火炎弾なのです!」


 モモナのステッキから二発の炎の玉が放たれ、空中を浮遊(ふゆう)していた猿の魔物に一発目が直撃する。

 さらに追い討ちをかけるように二発目が激突し――魔物は天井に激突して力

を失いながら床まで落ちてきた。


「ダスト・ボックス! なのですっ」


 ステッキから放たれた虹色のビームが床に()かれ、小さな真っ黒な穴が空き――猿の魔物は黙ったままその中へと吸い込まれていった。

 思わずスティッ○ィ・フィン○ーズ! と叫びそうになったが、俺にはまだ

やるべきことがある。

 ヘビが巻き付いた虎は俺を睨みつけたまま、俺の胸元へと飛びかかろうとする。

 俺はその軌道上(きどうじょう)創聖剣(そうせいけん)ウォーター・メロンを横向きに持ち――ヘビ虎の魔物は水と酸素になり消え去った。

 俺は最後の仕上げとして、ルリが()り殺した魔物を創聖剣で切り裂きこの世から消し去った。

 何だろうと死体をずっと放置しておくのは良くないものさ。

 俺は振り返り魔王討伐パーティ全員の顔を(なが)め、


「よし終わりだ! 早く階段を探さなくては」





 狭い城の中で使うのはあまり気が進まなかったが、俺はマコに頼んでsadakoを数人生み出して階段を探させに行かせた。


「しばらくここでじっとしてよう。無駄に動き回って妙な奴に出会ってはかなわん」


 元勇者の提案に同意し、俺らはそばの壁に寄りかかって少し休むことにした。


「モモナさん。魔力充電は大丈夫ですか?」

「さっきちょっぴり使いすぎちゃいましたけど……きっと大丈夫ですよ」


 モモナとルリは楽しそうに何かを話している。

 ――だが心の底から楽しんでいないのは誰が見ても分かる。まあ。魔王城と

いう冒険の最後の敵の屋敷内で心から楽しめるやつがいたら、そいつは魔王討伐には向いていないと思うがな。


「おい勇者よ」


 元勇者が俺のズボンの(すそ)を引っ張り、壁をつたいながら俺の耳元まで上ってきた。


「さっきからルリちゃんとモモナのことをずっと眺めているが……お前はどっち派なんだ? ポニテなルリちゃんか? それとも魔女っ娘ドジっ子なモモナか?」

「お前は何を言っているんだ?」


 だいたいなぁ。

 俺は前世で十七年間「女の子」という生き物に触れたこともほとんど無かったんだぞ。

 確かに転生時に顔は幾分(いくぶん)かは良くなったようだが、顔が良くなっただけでモテるならこの世の「優しい男」が無意味になるじゃ無いか。

 自分では分からなかったが、多分俺は女の子を不快にさせるような何かがあったんだよ、きっと。

 ――とここまで心の内を読めたかは知らないが、元勇者は俺の顔を見つめ、


「お前本気で言っているのか? ルリちゃんもモモナもお前を嫌がっている素振りなんてこれっぽっちも見せなかっただろ? と言うかどっちかって言えばルリちゃんなんかお前のことを――」

「サバァ!」


 探索(たんさく)に出していたsadakoの一人が戻り、何やらマコに伝えている。

 マコは聞きながらたまに(うなず)き――片手を上げた。


「みんな! 階段が見つかったわ、ついてきて!」




 sadakoに連れられ、俺たちは奥へ奥へと潜り込み――一番奥の小部屋までた

どり着いたところでsadakoがその部屋のドアを開けた。


「こんなところに……」

「前来た時はすぐ見つかったからな……魔王も流石に『これではマズイ』とでも思ったんだろう」


 小部屋の奥には小さな階段が二回へと伸びていた。

 元勇者が言うには確か魔王自身は身体の伸縮(しんしゅく)が自在だと言っていたから、多分こんな小部屋でも問題無いんだろう。

 天井の低い階段なため、三姉妹を先にして俺とルリそしてモモナは中腰になってしゃがみながら階段を登る。

 結構キツイな……

 そんなことを考えながら前へ前へと進んでいると、突然何かに頭をぶつけた。


「何だムーン。急に止まるな」


 俺が頭をぶつけたのは他でもないムーンの丸いお尻だった。

 俺が後ろから()かしてもムーンは一向に前に進もうとしない。


「おい。ムーン!」

「敵!」


 戦闘を歩いていたマコの叫び声が聞こえ、三姉妹は急いで階段を滑り降りる。

 ――何だあれ。

 俺は身体を階段にこすりつけるようにして、二階を眺めてみる。

 低く妙なところが出っ張った壁や天井の隙間から見えるのは――包帯?

 ――危ねぇ!

 チラリと見えたその白い布(いかがわしい物では無く包帯です)に見とれていると、俺の目の前に突然鋭利な刃が向けられた。

 危なかった……あと二段先に進んでいたら眼球に刺さっていたな。


「ユウシャカ?」

「誰だ貴様は!」


 聞き取りにくい詰まったような声を出す男。

 何だ……一階と二階を(つな)ぐ階段の上に隠れて、警戒心無く登ってきた勇者を串刺しにするのがお前の役目か?

 不意打ちしか脳が無いんかね。

 俺は後ろに続くルリとモモナに合図をすると、一斉に――とは言っても階段

が狭いのでまず俺から。

 自らの武器を前に突き出しながら一気に階段を駆け上った。

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