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第二話:ルームランナーだっ!

 やれやれ。やっと片付いた。

 鬼たちは水と酸素になったし――グラサンとsadakoが倒した分は知らん

けど、まあなんとかなるだろ。



 マコ、ミオ、ムーン、勇者(メロン)の御一行は暗い森の中を歩いていた。雑草が

凄い生えてるけど、そこは大丈夫。グラサンとsadakoの生き残りが道端に

生える雑草をなぎ倒し、俺らが通るための道を作ってくれている。

 ああ……楽で助かるぜ。


「ありがとう。おじさんとお姉さん!」


 三人の中では一番優しそうでおっとりしているミオが、自分のお弁当の

中身をグラサンとsadakoにわけてあげている。


「ミオ! あいつらは別にお腹が空いたりしないのよ」


 マコが腰に手を当てて怒ったが。


「だって! みんな頑張ってくれてるんだもん」


 ミオはまだ食べさせていた。――仕方無い、さっき鬼の巣から取ってき

た金貨で何か買おう。どこかに店とか無いかな……



「もうすぐ森を抜けますよ」


 ムーンが地図を見ながらそう(つぶや)いた。――おお! じゃあその先に町か

何か――


(がけ)ですね。この先は」


 時すでに遅し。俺らはもう崖の先に足を踏み出していた。


「何故先に言わん!」

「すみません。今気づきました」


 ムーンの落ち着いた声と同時に三人の少女と俺は崖下へと落ちていった。


「馬鹿ですね奴隷(メロン)さんは。ここを真っ直ぐ行けばすぐ、魔王城まで行けた

のに」

「んな事どうでもいい! マコ! さっきの能力を!」


 マコの気まぐれと俺の能力発動で、崖下に数十人程のsadakoが現れた。


「sadako! 俺たちを受け止めてくれ!」


 数十人のsadakoは円を作り、落下した俺たちを受け止めてくれた。流石

人間の数倍の身体能力……



「……何メートルくらい落ちた?」

「ざっと数百メートル――よく生きてましたね」


 そうだが……

 俺とムーンは空を(あお)ぎ、


「どうやって出ましょうね」

「そこだ、問題は」


 俺らは崖下に落ちて、そこから側の町に向かうことにした。数十人のsa

dakoと数人のグラサンに道を探させ、ようやく町を見つける事ができたの

だが……



「お兄さん……お腹空きました」

「だから言ったでしょ! あいつらに食べさせなくて良いって!」


 ミオがもうフラフラなので、俺はムーンとグラサン一人を連れて一足先

に町へと向かうことにした。――マコとミオは数十人のsadakoと数人のグ

ラサンが見守ってくれている。――何も無いことを祈ろう……



「そうだ。ミオちゃんとマコちゃんは何が好きなの?」


 一応買う前にそこは聞いておこう。


「ドロドロの練乳(れんにゅう)です。()いやつ」


 後ろでグラサンが吹き出した。護衛用に連れてきたのは間違いだったか

……?


奴隷(メロン)さんは桃はお好きですか?」


 メロンだけにメロンが好き――じゃ無いよ! 下ネタ反対! 脱下(だつしも)ネタ

ですよ。


「マコもミオも私も甘い物が好きですね。甘い(みつ)のかかった果物とか大好

物です」


 なるほど。この世界にも果物はあるのか、パンとかは無いんかな……


「そういえば……前回来た勇者様が作ってくれたパンとか言う甘くふっく

らした物は美味(びみ)でした……」


 ムーンがじゅるりと口を拭った。――前の勇者たちが持ち込んだ物なら

存在するのか。


「そこに店のような物があるが?」


 グラサンに指をさされ、俺たちはその店で何か食べ物を買うことにした。



「あの……これとこれ、二十個くらいください」


 ムーンは手際よく、この世界の美味(うま)いものを買ってきてくれた。鬼の金

貨がザックリあるので値段とかは気にしない。それに多分ぼったくられは

しないだろう――ムーンの後ろにグラサンが怖い顔して立ってるし。


「えっと……しめて金貨三枚ですわよ……」


 震える声で店の人は商品をムーンに渡した。うんやっぱグラサン連れて

きて正解だったわ。



 町はずれまで行くと、ようやくsadakoの群れに遭遇した。後ろからお腹

を押さえて(うつむ)いているマコとミオが歩いてきたが、俺が手に持ったバスケ

ットの匂いを()ぐと、


「わー! 果物ー」

「木の実とかは? ねえ!」


 俺の身体(からだ)に飛びついてきた。別に俺はロリコンじゃ無ぇが、やっぱちょ

っと(うれ)しいかな……?


「一応sadakoさんとおじさんにも……」


 ムーンはsadakoとグラサンに水飴(みずあめ)のようなものをあげていた。――俺と

一緒について来たグラサンはいつの間にかサキイカのような物を食ってる。

 どっから持って来たんだよ……



 マコとミオはやっと元気になったらしく、楽しそうに笑い合っていたり

している。当分ここにいるsadakoとグラサンは護衛用に連れていよう。(たん)

索用(さくよう)とかはまた作ればいい――その辺マコに頑張ってもらわないとな。


「この先は墓場らしいです。そこを抜ければまた町があるようですよ」


 しかしこのメンツで町を横切るのはいささか目立つな……


「とりあえず……私とsadakoさんは裏から行きましょうか、この道で一応

繋がっているようです」


 俺はムーンのその提案に同意し、グラサン数人とマコミオを連れて町

に戻って行った。





 俺と少女二人にグラサン数人と言うのもやはり目立つのか、道行く人々

が俺らを見ているような気がする。――気のせいだと信じたいが。


「ねえメロン」


 一瞬俺のことだと気付かなかった。もっと分かり易い名前の方が良いなぁ

……


「これ以上分かりやすく? じゃあ『メ』なんてどう?」


 すいません。メロンのままで結構です。



 三人とグラサンの集団はゆっくり町を横切り、墓場の目の前でsadakoの

群れと落ち合った。

 ムーンがきょとんとした顔で、


「どうしたんですか? そんなに顔を引きつらせて」


 そりゃーお前、墓場の目の前でsadakoの集団を見たら誰だって一瞬はゾ

ッとするだろうよ。


「どうでもいいですけど、ここにも敵が隠れている可能性は十分にありま

すよ? ここ数日間来た勇者様はさっきの鬼に殺されて、ここまで来てな

いらしいですから」


 ムーンはハッとして付け加えた。


「大丈夫よ、あんた勇者じゃ無くて奴隷(メロン)だから」


 一応勇者なんですがね……うん。



 墓場だからといって別に幽霊やらゾンビは出なかった。え? sadako?

sadakoは幽霊とかゾンビじゃ無いぜよ。マコが生み出した名前のつけにく

い何かです。決して幽霊ではありません。



 墓場を抜けると町だと言うが、一向に墓場を抜けない。ムーンもさっき

から地図をあっちに向けたりこっちに向けたりしてるが、俺の方を見て首

(かし)げた。


「どうやら敵がいるみたいです」

「どんな敵だ?」


 ムーンは無表情のまま地面を指差した。――見ると地面が後ろに向かっ

て動いている。


「ルームランナーだっ!」


 俺の髪が逆立ちそうなツッコミに、


「ウォーキングマシンだバカモン!」


 とルームランナーに怒られた。


「だからルームランナーじゃ無ぇ!」


 地面に張り付いていたルームランナーの形をした、妖怪? が俺を(にら)

つけた。


「ルームランナーは部屋にあるからルームランナーなんだ! 外にあれば

だなぁ……!」


 お前元勇者だな。

 俺の言葉に若干びっくりした様子でルームランナーは後ずさりし、


「何故分かった?」


 この世界にそんな文明機器無いだろうが。

 ルームランナーは地面から飛び出し、カクカク震えながら俺の方を見て

いるようだった。まことに滑稽(こっけい)な光景だ。


「お前も勇者か?」

「彼は奴隷(メロン)よ」


 待て、今はやめろ。誤解されるだろ!


「そいつぁ、可哀想に……」


 お前もお前で何信じちゃってんですかー!

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