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第十五話:魔王能力の継承者

 モモナの魔術的な何かの記憶操作だか何だか(天国人形(ヘブンズ・ドール)とか言う精霊パ

ワーだか何だか言っていたが、多分何とも関係無い)で、俺の脳内に焼き

ついていたさっきの痛々しく気分の悪くなる情景は記憶から消し去ってく

れた。

 ――心身ともに回復してくれて、いざというとき頼りになって――凄く

可愛くて天然さんで、魔女っ娘で……

 俺……この冒険が終わったらモモナに告白するんだ……

 ――誰だ死亡フラグって言ったのは。モモナは俺が命をかけて守る!


「何ヘラヘラしてんのよ」


 マコが俺にひっつきながら、俺の顔を(にら)みつけた。何だっていつもそう

ぶすくれた顔をしてるんだ。


「ふんっ!」


 すねた。何なんだよもぅ。





 俺らはしばらく歩き続けたが、洞窟の前で元勇者が俺らを止めた。


「ここからはしばらく休むところが無いぜ、悪いことは言わないから勇者

とモモナはここで回復していったほうがいいぞ」


 見たものを全て記憶する能力持ちが言っているんだから、多分間違いは

無いんだろう。

 ――それにモモナも少々ふらついているし、俺も眠くなってきた。ここ

らでちょっと休憩にしよう。



「では勇者様。お隣お借りしますね?」


 モモナは可愛らしく笑顔を見せ、俺の隣でタオルケットを身体にクルリ

と巻いて寝転がった。

 ――なんでも身体(からだ)(けが)されたかどうか分からないのは不安だかららしい

が、モモナ自身の寝相――充電寝相が悪いからはっきり言ってまったくも

って意味が無いのだが。

 洞窟で二人並んで就寝。

 中学の時の修学旅行の時は、外の自販機でコーラを買いに行かされて

――帰ってきてみたら誰も部屋にいなかったのは憶えてる。

 ――誰とは言わなかったが、その日不純異性交遊がありました。という

情報だけは耳にしたけど、同室のやつたちが半泣きで夜戻ってきたから―

―大体予想はついていた。

 ――涙ではなくこれは汗だ。




「ちょっとメロン! もっと詰めなさいよ」


 反対どなりからマコがぐいぐい身体を押し付けてくる。

 ――別に良いだろ? お前らは眠らなくても平気なんだから。


「私だって疲れたのよ!」


 だからってバカ……そんなに押し付けたら――


「……………」


 背中に柔らかい感触が触れた。説明するまでもなく、それはモモナの柔

らかい二の腕だろう――普段だったら「うわぁ!」とか言って離れそうだ

が、今回はマコに押されるという不可抗力なため、俺は悪く無い。





 どのくらい経っただろうか。フッと目が覚め身体を起こすと、三姉妹も

モモナも洞窟内にはいなかった。


「まさか敵にでも襲われたのか……?」


 いやそれは無いな。もし敵が来たなら真っ先に俺を狙うだろうし、洞窟

の外で見張りをしているsadakoとグラサンが気づかない訳が無い。

 洞窟内でしばらく身体を動かしていると、モモナと三姉妹が洞窟へと戻

ってきた。


「モモナ。どこに行ってたんだ?」

「おと――」


 ムーンがモモナの太ももをつまんだ。

 ミニスカとソックスの間の素肌だから、かなり痛いんじゃないかと……


「痛っ――何? マコちゃん」

「ムーンです! それとモモナさん、仮にも女の子なんですからもっと上

品にですね――」


 モモナはきょとんとした顔でムーンを見下ろし、


「だからおトイ――」


 反対側の太もももマコにつままれた。

 皮が引っ張られ、モモナの表情が少々苦痛に歪んできた。


「やんっ……♡ 痛っ……優しくしてよミオちゃん」

「マコよ! ふざけてんの!?」


 どうでもいいが、いちいちエロい声を出すな。

 三姉妹と違ってモモナは一応俺の守備範囲に入っているんだから――年齢

的に。


「それよりそろそろ出発するぞ」


 元勇者(ルームランナー)に呼ばれ、俺らは洞窟から抜け出して魔王城への道を急ぐことに

した。




「次はどんなやつが出てくるんだろうな」

「きっとマヌケなやつよ」

「大丈夫なのです! 私の魔術的な何かでチョチョイのチョ――きゃぁっ!

虫がいるです! 私虫は絶対ダメなのです~!」


 ――と、元勇者とマコとモモナで楽しそうにおしゃべりしながら山を登

っている。

 何故か俺は会話に入れなかった。――まあ俺は今ミオをおぶってムーン

と手を繋いでいるから、別に仕方無いっちゃぁ仕方無いのだが。

 ムーンが俺の手をギュッと握り、


「sadakoとグラサンが大量に山の中を見張っているから、もし私たちに襲

ってくる敵がいたら……多分かなり強いだろうから気をつけなさいよ」


 俺は気をつけるよりも、ムーンの能力を早く欲しいのだが。


「それは私とキスがしたくてしたくて(たま)らないという、奴隷(メロン)さんの秘めた

る願望ですか? このド変態が」

「何て言うか……酷い超解釈だな、しかも口に出してるんだから秘めて無

いだろうが――このド低脳が」


 ムーンとの低レベルな口喧嘩に火花が散り始めたところで、ミオが俺の

頭をペシペシと叩いた。


「誰か来るようです」




 ミオの言う通り俺は前を見たが、とくに人のような物を認識することは

できなかった。


「どれだ?」

「あの真っ黒な人です」


 目を()らしじっと見るとようやく見えてきた。真っ黒な髪に真っ黒な服

装(スーツとか全身タイツではなく、シャツもズボンも真っ黒)銀色の十字

架のロザリオらしき物を首から下げ、右手には真っ黒な手袋をしていた。

 ――これはもしかして……


「中二病?」


 真っ黒な少年は大声を出して笑い、右手で顔を半分隠した。


「我が闇の能力にて貴様らを葬るための魔王的力がうんたらかんたらで、

カオスカオスカオスなぽんぽこぴーの超特急なちょうすけ……」


 少年の説明は長く――校長先生のありがたいお話を聞いている方がマシ

なような気がしてきた。




「混沌な混沌な――」


 おい、いつまで「混浴な」を言い続けるんだ。


「混沌。よ、これだからメロンは……」

「ふっ……これだから愚民(ぐみん)どもは」


 あちゃー……めっちゃこじらせてる。あまりこういう子とは関わりたく

無いなぁ……

 グラサンが一歩前に出て、


「ところでその格好良い名前の能力が示すものはいったい何なのですか?」


 流石大人。俺たちにはこんな格好良い切り返しはできない。

 黒い少年はまた「フッ」と笑うと、


「我の名はフガシ。二つ名を――」


 ここで寿限無(じゅげむ)並に長い名前をまた長々としゃべり続け、


「能力は魔王様からこの右腕に授かった、魔王様の能力の継承者(けいしょうしゃ)だ!」


 つまり劣化コピーってやつか。

 ――丁度いい、こいつを持ち上げて魔王の能力をしゃべってもらおう。

 グラサンの目で合図をして、


「フガシさんの能力とはどのような……」


 フガシはニマリと笑い、


「俺の能力は二つだ。一つ目は家電販売店割引券(バリバリ・デンキウナギ)右方(ウホッ)。生物では無い物

なら触れるだけで家電製品にできるとか、そんな事を魔王様は言っていた」


 いいぞ、この調子だ。


「二つ目は未完全製造(アルミカンのうえにあるミカン)右方(ウホッ)……」

「何だって!?」


 直感的に分かった。これは俺の能力と同じタイプの能力だ。だとしたら

……魔王の二つ目の能力は、俺の能力の上位種……



 フガシは高らかに笑い、


「この俺には通り名という物がある!」


 フガシはまた長々と名前を言い出した――せっかくなので全文を下に載

せておく。

 多分即行(たぶんソッコー)で俺がこいつを片付けるから、別に憶えなくて良いです。



 邪気的破壊王系撃墜混沌黒魔術(チューニビョー・ネーミング)なる究極完全的宇宙系魔術なる混沌かつ

漆黒的邪悪なる神聖的黒船来航の明治維新による排他的経済水域が御邪魔

虫を混沌的力が排除するための創世龍神……やっぱ()めた。

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