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第十三話:奴を倒す策

 あ~あ。固まっちゃったよこいつ……


「メロン! さっさとあんたの創聖剣ウォーター・メロンで切り裂いちゃ

いなさいよ」


 言われなくてもそうする。俺は創聖剣を振りかざし、フーガの脳天めが

けて振り下ろした。


「死ねぇいっ! フーガ・エジェン!」

「ガバァァァァ!」


 突然剣の軌道(きどう)に宿主の爺さんが飛び込み――


「あっ!」


 ミオの叫び声と同時に、宿主の爺さんを創聖剣ウォーター・メロンで真

っ二つに切り裂いてしまった。

 ――爺さんは黙ったまま水と酸素へと姿を変え、この世から消え去った。

 フーガは溜息(ためいき)をつき、


「こいつも使い物にならねーな」


 何てやつだ……人の命を何だと!


「でもこのメロンとか言う勇者の大切な人を操ったらどうなるかなぁ~?」

「きゃぁぁぁっ!」


 ムーンの身体(からだ)がまるで見えない糸にでも引っ張られたように、フーガの

ところまで飛んでいった。


「ムーン!」

「今からこの少女は俺様の奴隷(ムーン)だぁ!」


 フーガはムーンを左手に抱え高らかに笑うと、


御地獄人形(ヘル・ドール)、こいつを操れ」


 ムーンの身体が「ビクン!」と揺れ、顔色が悪くなりニタ~っと笑い始

めた。両腕両脚はぷらぷらと揺れ――まるで操り人形のように……


「グウァァァ!」


 人間とは思えない表情をしたムーン(だった物)は、目を真っ黒にさせな

がら口から大量の手術用メスを吐き出した。


「こいつはメスか……メス(性別)だけに?」


 フーガの悪質な冗談が耳に入り、俺はもう正常な精神ではいられなくな

った。


「待ちなさいメロン!」


 マコにズボンの(すそ)(つか)まれたが、ここでやめろって言うのか? マコの

姉妹(きょうだい)があんな目に()わされてるんだぞ。

 マコはキッと俺を見つめ、


「だけどもしムーンが創聖剣で切られたら……」


 確かにそうだ。だが何もせず見ているわけにもいかないだろ――さっき

からムーンは手術用メスを吐きっぱなしだ。救出さえすれば、モモナがい

るから大丈夫だろうが……あのまま放っておくのは精神的に辛い。


「でもムーンが死んじゃったら!」

「ハッハッハ……どうした? この()が傷つく姿をそんなに見たいか?

ほ~れほれ」


 フーガ……俺はここまで精神がねじ曲がった人間は見たことが無ぇ……


「テメーを倒す方法を今思いついた」


 マコミオはびっくりした表情で俺を見ているし、グラサンとsadakoの顔

も俺を向いた。

 ――モモナはまだぐっすりと充電しているが、これで十分だ。

 フーガは高笑いをして、


「ハッタリか。くだらんな」

「ハッタリなんかじゃ無ぇぜ、正真正銘(しょうしんしょうめい)ソッコーお前をぶちのめす」




 フーガは(あご)に手を当てニヤリと笑った。


「ほぅ……ならばお前には俺を倒すほ――」

「クソ野郎がぁ!」


 計画通り。コッソリと壁をよじ登っていたルームランナーこと元勇者が

天井からフーガの頭めがけて落下してきた。


「な……?」


 フーガは操り人形であるムーンで身を守る間も無く、落下してきたルー

ムランナーに後頭部を殴られ失禁しながらブッ倒れた。

 わざわざ水を出してもらう必要は無ぇぜ。お前自身が一瞬で水と酸素に

なるんだからな。





 心身ともに汚れていたフーガ・エジェンは、創聖剣ウォーター・メロン

によりこの世に無くてはならない大切なお水と酸素になりました。

 ――めでたしめでたし。


「メロン! 何勝手にモノローグやってんのよ、まだ魔王の背中さえ見て

無いじゃない!」


 マコに耳を引っ張られた。イテテ……俺はタ○シじゃ無いぞ!



 あの後はモモナを必死に起こし、魔術的な何かの力でムーンの怪我は治

す事ができた。

 あのクソみたいな魔王の刺客もこの世から消滅し、とりあえず俺たちは

この小さな町を出た。――これ以上滞在すると危なそうだからな。

 それとミオの願いで、一応宿主さんのお墓は作っておいた。残念だが骨

まで消し去ってしまう能力だから埋めるものは無かったが、ミオが見つけ

た骨のような物(チーズ○マボコだったが気にしないでおいた)を埋め、手

を合わせてきた。





「これから魔王城手前の山に入るから、かなり用心した方がいいと思う」


 俺はsadakoとグラサンをそれぞれ数十万人生み出し、山の中へと放した。

――こうしておけば、何かあった時にすぐ駆けつけてもらえるからな。

 数十万人――合わせて百万人ほどのsadakoとグラサンの大群は一斉に山

の中へと消え去った。

 とりあえず数人のsadakoとグラサンを連れて、マミムメモ+元勇者の冒

険を再開することにする。



 モモナが魔術的な何かで生物探知をしてくれているので、敵か何かが近

づいたらすぐ分かる。


「モモナ。何か近づいてるか?」


 モモナは集中している表情で俺を見た。


「sadakoとグラサンが多すぎて、どれがどれだか分からないんですぅ~…

…」


 半泣きだった。可哀想なので頼りにするのはちょっと(ひか)えておこう。

 モモナが突然立ち止まり、魔術的な何かの能力を止めた。


「近くに何かいるようです。ここは気をつけたほうが――」

「あら、ずいぶんと貧弱な勇者さんね」


 左斜め前方から現れたのは――元の世界でいう制服のシャツをだらしな

く着崩し、スカートの端とかからイロイロな物がチラチラ見えている格好

をした、甘いもの好きな女の子だった。

 ――甘いものって言うか、さっきから棒付きの丸い飴玉(あめだま)を口に入れたり

出したり、ペロペロ舐めたり――凄く不健全な匂いのする行動をしていた。


「汚いわね。飴玉舐めるならもっと上品に舐めなさいよ、糸引いてるわよ」


 マコは俺の(あし)(かげ)に隠れながら、威勢の良い声を浴びせた。

 モモナが顔を手で覆い、


「ふ……不健全なのですっ! そのお洋服の着方はイロイロと間違ってま

す!」


 制服姿の女の子は飴玉を口の(はし)にくわえながら、


「そうね、確かにこれはだらしないわ」


 解ってくれたか……と思った俺は、「人を見たらまず泥棒と思え」とい

う言葉を心の底から実感することとなった。



 制服さんはかろうじて留めていたボタンを全て外し、シャツの前側がほ

ぼ全開になった。

 胸のあたりでチラチラと見え隠れする薄緑色の(ひも)っぽい物は……考えな

いようにしよう。

 制服さんはシャツを風になびかせ、うっとりとした表情を見せた。

――腰周りとかおへそ、くびれが解放され思わず視線を奪われてしまう。


「あんた一体何者よ!」


 マコがまたしても俺の脚の陰から――怖がらないで出ておいでよ。

 制服さんは両腕を上げて頭の後ろにまわし、セクスゥィィィな格好をし

て、


「私の名前はサクラギ=コハ。魔王様直々の命令で勇者をトリコにするた

めにここまで山を降りてきたわ!」


 それはまたご苦労様です。――それではこれからゆっくり登山コースを

楽しんで来てください、いってらっしゃい。

 俺は心の中で手を振ったが、制服さんことサクラギ=コハは、


「勇者! 私のこの格好を見てなんとも思わないの?」


 健全な元男子高校生が肌色と薄緑のコントラストに目を奪われないわけ

無いでしょう! 必死に(こら)えてるんですよ。俺の理性が保ててる間にさっ

さとどこか行ってください!


「――っていうか、よく恥ずかしく無いわね」


 ムーンも俺の脚にへばりつきながら「やれやれ」といった様子で発言し

た。

 ――だからさっきから、何でお前らは俺の後ろに隠れているんだ。


「ふふふ……甘いわね、私がこんな事で恥ずかしいと思って?」


 いや恥ずかしいだろ。スカートは少しずり下がってるし、胸元は全開で

弾力のありそうな膨らみを包み込む薄緑色の――

 なんかこれ以上続けると変態っぽいからやめておこう。


「なぜなら私は!」


 サクラギ=コハは制服のシャツを脱ぎ捨て、スカートもパサリと足下ま

でストンと落ちた。――その手の変態さんに見せたら鼻息荒く喜びそうな

光景だ。俺は健全なので別に脱衣シーンには興奮したりはしませんよ?

 両手を腰に当て、見せつけるようなポーズをとった彼女は次に、思いも

よらない台詞(セリフ)を吐いた。


「何故ならば私が今身につけているのは水ギ――」

「ファキューン!」


 さっきまで鼻息の荒かったグラサンが突然キレた。――俺には違いはよ

く分からんが、同じ形状でも水着と下着には違いがあるらしい。

 グラサンから放たれる数発の弾丸。――()けるのはうまいらしく、弾丸

を華麗に避けていたが……


「あっ……♡」


 サクラギ=コハのエッチな声とともに、彼女の身につけていた(念のた

め言っておくと上半身の方)布がハラリと空中に舞い、締め付けていた二

つの弾力ある膨らみが一斉に飛び出した。


「Oh……」


 グラサンたちは拳銃を握り締めたままブッ倒れた。――生物でも無いの

になんでそういう時だけ人間性抜群なんだよ。


「きゃぁぁぁ!?」


 叫んだのはモモナ。それと同時にモモナの手には何やら物騒な物が乗せ

られていた。

 ――いわゆるバズーカっていうかミサイルっていうか……


「ハレンチなのはいけない、なのです!」


 それだけ言うと、魔術的な何かで出したと思われるバズーカ砲のような

物で、サクラギ=コハを空の彼方(かなた)へと吹き飛ばした。

 ――完璧にトリコにするためだけに来たらしく、

 回避は目をみはるものがあったが、防御力は紙を通り越して濡れたティ

ッシュ並みだったらしい。

 俺の出番も無く終了した。

 楽に冒険が終わるのは凄く嬉しいのだが――


「なんだかなぁ……」

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