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第九話:異能力を無効化する剣

 竜騎士との戦闘? も終わり、このままダラダラ冒険を続けていても

つまらないし――もう魔王の目の前までキ○クリしてしまわないか?

 マコに脚を()られた。冗談の通じないやつだな……


「あのねメロン! これは遊びじゃ無いのよ。これ以上私の妹たちが増

えないようにするための重大な任務なのよ。そこんとこ分かってちょう

だい」


 その言い方もあんまりな物だが、毎日のように数百人と妹が増えたら

確かにうんざりするだろうよ。

 それにしたって何でこうずっと歩いてるっていうのに、魔王城へ着か

ないんだ……?


「誰か来るわよ」


 前方から大きな剣を背中に背負った巨漢が歩いてきた。

 太ってるのでは無く全身筋肉質と言うのが凄い。

 あ、脳まで筋肉かは知りませんよ。


「勇者か」


 (しぶ)い良い声を出し、俺をじっと見た。もしかして一緒に魔王を倒そう

とかいう仲間イベント発生ですか?

 巨漢は大剣をかまえ、


「新しい勇者よ。次はこの聖剣(せいけん)のウォークが貴様を始末する!」


 俺の期待は無残にも崩れ去った。




 聖剣のウォークとかいうやつが持っているのは、俺の創聖剣と同じく

らいの大きさで、切れ味より打撃力を突き詰めたと思われるいかにも重

そうな見た目が特徴の剣だった。

 この世界の重さの単位は知らないので――元の世界で言えば二百キロ

は軽く超えそうな大剣だ。頭上から落ちてきたら悲惨(ひさん)な事になるじゃ済

まなそうだな。

 鉄骨を何十本とまとめればあれを破壊できるかもしれん。

 まあ、それだけ重いものを振りかざすだけの力があるやつがこいつ以

外にいればの話だが。

 だが俺には創聖剣ウォーター・メロンがある。

 銀色の騎士との戦闘で剣同士が当たっただけで能力が発動するのは確

認済みだ。

 すなわち俺の前ではどんな剣も無意味になるのだ。


「何を笑っておる」


 おっと……おもわずニヤけてしまったらしい。後ろでモモナが心配そ

うに俺を見つめてるし――ここは一発格好良いとこ見せちゃおうかな。


「聖剣のウォークよ! 今からお前を抹殺(まっさつ)してやる」


 ちょっと格好つけすぎたかな? まあこれぐらい良いよね? 俺はれ

っきとした勇者様なのですからっ!

 聖剣のウォークは表情一つ変えず俺に向かって突進してきた。俺はす

かさず創聖剣ウォーター・メロンを(かか)げ、聖剣のウォークの大剣と接触

するように持ち上げ――


「キュゥゥィィィィン」


 創聖剣と大剣が触れ合った瞬間、聞いたことの無い音がした。

 何だこの音……ゲームとかで回復ポイントの上に立ったときのような……

 だが俺が本当に驚くのはその次の光景であった。




「うぉ? うぁぁぁっ!」


 創聖剣ウォーター・メロンは何故か能力を発動せず。圧倒的なパワー

で俺ごと後方へ吹き飛ばされた。


「サバァ!」


 物凄い勢いで吹き飛んだので、流石にもう俺は死んだなと思ったが、

数人のsadakoにキャッチされ何とか怪我をせずに済んだ。


「お兄さん!」


 ミオが俺に駆け寄って来た。大丈夫だ……だけどどうしたんだ? 能

力が発動しないなんて……


「そんな物でよくも俺を抹殺するとか言ってくれたな」


 聖剣のウォークはそのまま俺に向かってゆっくり歩いて来た。――何

だ……何故効かないんだ?

 モモナが俺の前に立ち、


「コウモリさん!」


 数匹のコウモリがモモナのマントの中から飛び出し、聖剣のウォーク

の大剣に触れた。――瞬間、コウモリの群れはまるでシャボン玉がはじ

けるように消えさった。


「何だその剣!」


 聖剣のウォークは自身の剣をよしよしと()でながら、


「我が聖剣の名は聖剣ゴッド・ハート。触れた物のオカルト、魔術、異

能力、呪術などの肉体的パワー以外の物を全て無効化する力を持ってい

る」

「な……何だってー!」


 冗談じゃなく素で出た。じゃあどうやってこの筋肉バカを倒せって言

うんだよ。

 ――訂正、バカでは無いな。


「オラオラオラァ!」


 グラサンが一斉に拳銃を撃ち込んだ。

 ――だが筋肉質な身体にはほぼ無意味だったらしく、弾丸がめり込んで

もウォークはこっちへ歩く速度を落とさなかった。


「勇者よ! お前の首……頂戴する」


 ウォークはゆっくりと俺の前まで来ると、聖剣ゴッド・ハートとかい

ういかにも中二臭い名前の大剣を思い切り振りかざし、


最期(さいご)に何か残すことはあるか?」


 立派な戦士だ。敵に何かを残す時間をくれるとはな……


「特に無いな……」


 俺は創聖剣ウォーター・メロンを握り締め、sadakoに支えられたまま

座り込んでいた身体(からだ)を起こし、


「もう一度ちゃんと決着をつける」


 無抵抗で殺されるなんてバカみたいな最期は嫌だね。

 最後の最後まで全力を振り絞って戦い――美しい血で戦場を飾り付ける

のが勇者ってものじゃ無ぇか?

 モモナがきょとんとした顔で、


「勇者って普通死なないので、血で戦場を染めたりはしないのでは……」


 ちょっと! 自分でも格好良い事言ったと思ったのに、なんで邪魔す

るんだよ。少しは感傷(かんしょう)(ひた)らせてくれたってバチは当たらないと思うよ?


(おとこ)だな、流石勇者だ」


 ウォークは聖剣ゴッド・ハートを振り下ろした。俺はその攻撃をなん

とか避け、ウォークの背後へとまわった。――ようするに剣同士をぶつ

けなければ、まだ俺にも勝ち目があるって事だろ?


「甘いっ!」


 ウォークはそのまま大剣を地面から引き抜き、遠心力を使って俺の方

へと剣の刃を向けた。

 勢いがついているので、触れたと認識した瞬間俺の身体は腹の辺りか

ら上下別々の方向へ吹っ飛ぶだろう。


「危ないです!」


 モモナが俺と聖剣の間に魔術的な何かで(シールド)を作ってくれたらしい。

 かなり正確だ……これからモモナに能力使わせる時は、わざと追い込

んでみようかな。

 ウォークはモモナを(にら)みつけ、


「漢同士の神聖なる決闘に割り込む事は、それが女子(おなご)であろうと許さん!」


 聖剣ゴッド・ハートに触れた瞬間、モモナが張った壁は何事も無かっ

たように消え去り、そのまま剣を振りかざす方向を変えモモナに向かっ

て叩き落とした。


「きゃぁぁぁっ!」


 モモナはその大剣に殴られ、血を吐きながら吹き飛んでいった。


「天罰だ」


 ウォークの無慈悲なその言葉に、

 俺は心の底からウォークへの憎悪(ぞうお)を膨らませた。

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