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プロローグ

 俺は死にました。トラックでは無く、バキュームカーにはねられて――



 部活でヘトヘトになりながら自転車をこいでいたら、急に曲がってきた

車に……視界に車が見えた時にはもう意識はありませんでした。



 ああ……まだ女の子と付き合った事も無いのに、女の子とキスした事も

無いのに、抱きしめたことも別の意味で抱いたことも一緒にお風呂入った

事も、一緒にお祭り行ったこともカラオケ行ったりしたことも――ぜーん

ぜん無い! 何だこの俺の人生。生まれてこのかた女の子と言う生き物と

接したこと全く無ぇ! チェリー以前の問題だわ。



 性欲旺盛(せいよくおうせい)な男子高校生が、俺たちの青春はこれからだ! ってとこで幕

を閉じるとか――こんな(ひど)い話があるか? はぁ……学校の「お楽しみ会」

とか以外で女の子と手ぇつないでみたかったなぁ……



 目の前に光が差した。せめて最後は天国へ行きたい――でも親より早死

にした子供って地獄行くんだっけ……?





「ここが死後の世界か……」

「うふふふふ」


 何だ。俺がこんなに悲しんでると言うのに、誰だ笑っているのは。


「えへへ――お目覚めですか?」


 顔を上げると可愛らしい女の子が魔法少女のようなステッキを持って立

っていた。


「誰だお前」

「それはどうでもいいんですけど――」


 どうでも良くは無いだろ。とりあえず名乗れ、話はそれからだ。


「はぁ……せっかちな男性は嫌われますよ? 私は死後の世界と異世界の

分かれ道を案内する番人の一人です。名前はありません」


 その肩をすくめて溜息(ためいき)をつくのはやめろ。生前担任教師に散々やられて

こちとら、そのポーズを見るとイライラするんだ。


()まってますね……色々と」

「下ネタか、くだらん」


 番人さんは俺の言葉を華麗にスルーし、


「ところであなた。死にたいですか?」


 ちょっと一度、助走つけて殴らせろ。


「乱暴な! 私はあなたにまだ生きる道がある――って言ってるんですよ?」


 どう言うこった。俺はゾンビになるのは嫌だぞ。


「あなたのような若いお方を必要としている世界があるんです。ちょこちょ

こっと上の人と掛け合えば、その世界で幸せに暮らせるかもしれませんよ?」



 俺はしばらく考えた。これはひょっとすると異世界転生とか言うやつじゃ

無いか……? もしかして最強の武器で勇者になって、女の子いっぱいの

ハーレムを作れるとかそういう特典付きな素晴らしい世界かも……

 もし違うにしても、どうせ俺は死んだ身だ。最後に誰かのために何かを

すると言うのもいいだろう。



「その話のった」

「ではあちらの道へどうぞ、言語能力などは亡くなった時に改変させてあ

るのでご心配無く。それと――」


 番人さんは申し訳無さそうに、


「事故にお()いになった際に、顔をかなり怪我なさりまして……頑張って

治したんですが、少し変わってしまいまして……」


 良い気にしない。どうせ俺は十七年間女の子に避けられる見た目をして

たんだ。それ以上悪化するなんて事は無いだろう。


「ありがとな、番人さん」


 俺は異世界転生への一歩を踏み出した。





「あら? 新しい勇者様だわ」


 俺が光の道を抜けると、広い草原と小さな家が見えた。ボーッと立ち尽

くす俺に、丁度俺より二つほど上っぽい女性が走ってきた。


「転生おめでとうございます! どうぞこちらへ」



 草原の真ん中にポツンと建った家は意外と大きかった。ビルのよう――

って意味じゃ無く、おとぎ話に出てきそうな箱型の家なんだが――縦横高

さ三つ(そろ)ってデカイ。例えるなら一辺が五十メートルくらいの立方体だ。



「どうぞ、こちらへ」


 お姉さんは俺を家に入れ――俺は家の中を見て絶句した。


「おねーちゃん! お帰り」


 (すご)く広い家の中には、数え切れない程の小さな女の子がいた。見てるだ

けで気持ち悪くなりそうなくらい――ワイワイなんて物じゃ無い、うじゃ

うじゃって表現が的確だろう。


「あの――勇者様はロリコンじゃ無いですよね?」


 いきなり失礼な人だ。俺は同年代にしか興味は無い。

 お姉さんはホッとした表情を浮かべ、


「では早速ですが、この中から数人の私の妹を預かってくれませんか?」


 ――数秒ほど時が止まった。は? 何? 俺まさか、異世界来て子守り

しろって言われてるの? ふざけんな、死んだ人間を連れてきてパートタ

イムで働けって言うのか。


「妹を預かってくれたら、代わりに能力を差し上げます」


 ……今何つった?

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