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第03話 はじめての実戦

 街に接近する大型の自動兵器を探知したのは、夕暮れ間際のことだった。

 太陽もだいぶ地平線へと傾き、注ぐ陽の光も赤色を増して廃墟の街並みをオレンジ色に染めている。

 クリスが放った【探索バード】は街中に人気がないのを確認すると、半分を残して街の外縁部へと向かった。残った半分は都市内部を巡回し探索を続けさせている。


 【探索バード】を外へ向けたのは、誰か街に近づく者はいないか調べるためだ。自動兵器を警戒しない訳ではないが、主な目的はあくまで街を目指しているだろう人だ。なにせこの街、いろいろなお宝が残されている。

 ちゃんと整備すればまだ使えそうな魔動機械。擱坐した自動兵器や車両、機甲騎兵の残骸。そしてなにより街中の貴金属店に残された宝石類。

 逃げるときによほど急いでいたのだろう、その手の店には持ち出せなかった様々な商品が無造作に転がっていた。


 大通りに面したいくつかの店に商品は残っていない。

 逃げる時に持ち出せたのではなく、後日何者かが持ち出したのだろう。その痕跡が残されていた。


 人が居なくなったオルテアの街に侵入し、高価なものを持ち出す。盗賊か盗掘屋の類だろう。

 無事街に潜入し、首尾よくお宝を手にしたはいいが何者かに発見され(おそらくは自動兵器)、お宝が詰まった袋を手にしたままの白骨死体もあった。


 なんにせよ、欲の皮が突っ張った連中は自身の命を天秤にかけてでもお宝を求めるものだ。オルテアの街にまだまだお宝が残されている以上、漁りに来る連中は居るだろうというのがクリスの考えだった。

 そういった連中と接触できればいろいろな情報が手に入る。

 情報料を払ってもいいし、場合によっては護衛に雇われてもいい。

 とにかく情報がほしかった。


 クリス自身が記憶しているエイリシエルとは異なるこの世界。廃棄された街。人間に牙を向いたらしい自動兵器群。原因が判ったからどうにか出来るというのではなく、判らないままでは収まりが悪い。ただそれだけの理由だ。

 無論、誰かに会いたいという事もある。


 人が訪れるのを期待していたのだが、やってきたのは自動兵器だ。

 数は一機。

 【探索バード】からの連絡で、ハイ状態で突っ走っていたクリスはティエレDを急停止させる。高揚していた気分が一気に冷却され頭の芯が冷静さを取り戻した。

 視界の隅に【探索バード】から送られてきた映像が映し出される。そこには見慣れない六脚式の自動兵器の姿があった。


 「んー。こんなの見たことないなぁ。なんかサソリみたいだ」


 巨大な胴体から伸びる一対の太い腕。胴体を支える三対の鋼の脚。胴体後部に設置された巨大な砲門らしき物が、反り返る尾のように見える。まさしくサソリだった。

 クリスの記憶にある自動兵器は、曲線を多用し、細部に装飾が施され丸々っとしたどこか古臭いイメージを感じさせたのだが、今写っているそれはまったく逆だ。シャープで先進的な印象を受ける。


 サソリ型の自動兵器は、土煙を上げつつ真っ直ぐにオルテアの街を目指していた。

 自身の脚を動かして移動しているにしては高速だ。映像を拡大してみると脚は動いていない。脚の先にローラーギアに相当する機構があるのだろう。滑るように近づいて来る。


「自動兵器がローラーギアねぇ。機甲騎兵から学んだのかな」


 少なくとも、クリスがローラーギア機構を組み込んだ自動兵器を見たのは初めてだ。

 クリスの記憶では、ゲーム内の自動兵器は律儀に自分の足をシャカシャカ動かし移動していた。自動兵器が作られた目的は『蟲』からの都市防衛だからだ。

 攻撃はプレイヤーに任せ、遠距離から『蟲』を狙い撃ちする砲台としての防衛兵器。それこそが自動兵器の役割だからだ。


 クリスは知らないことだが、自動兵器がローラーギアを装備し始めたのは、人類に対し反旗を翻して半年後のことだ。

 人間の街に侵攻するには移動速度が重要になってくる。

 いくら物量に勝るとはいえ、元が防衛兵器ではどうしても侵攻速度が遅い。おりしも第一波攻撃で混乱した人間側が混乱から立ち直り、組織立って都市防御を固め始めたころだ。思うような侵攻速度が得られなくなってきた。

 制圧した都市こそ奪われなかったものの、速度で勝る機甲騎兵に引っ掻き回され壊滅した部隊も多い。


 人類側にとって運が悪かったのは、大規模な反抗作戦が間近に迫った直前に、ローラーギアとAMFを装備した自動兵器の大部隊による電撃戦が行われたことだろう。

 AMFを装備した自動兵器の大軍に、人間側はなす術もなく敗れ去った。

 主要な攻撃手段である魔法を封じられ、防御フィールドを弱体化されては反撃すらままならない。逃れようにも速度で勝る自動兵器からは逃れきれなかった。

 反抗作戦のため部隊が集結していたのも仇になった。ろくに動けない機甲騎兵は体のいい的だ。攻撃能力を封じられた戦車は単なる鋼鉄の棺桶と化した。


 アリストリア大陸の半ばを制圧され、無数の国と都市が炎の中に消えていった。このとき犠牲になった人々の数は2000万人を超えると言われている。

 なにせ自動兵器は捕虜を必要としない。人類の殲滅こそが目的だったのだから。


 もしこの時、北極から海を渡り『蟲』の大群が大陸に押し寄せてこなければ、人類はアリストリア大陸から駆逐されていたのかもしれない。

 人類側にとって幸運だったのは、自動兵器の最優先項目が『蟲』の殲滅だったことだ。

 押し寄せる『蟲』の大群に対抗するため、大陸に散らばっていた自動兵器のほとんどが大陸北部に向かった。北部海岸線に配備された防衛部隊だけでは抑え切れない『蟲』の大群。これにより人類が救われたのは皮肉としか言いようが無い。

 だがこの時、アリストリア大陸の西隣の大陸で、新たな脅威が発生したことを人々はまだ知らなかった。






 オルテアの街の北門に接近している自動兵器。

 映し出された自動兵器のサソリの尾が一瞬光り、突如【探索バード】からの映像が途絶えた。ついで北門の辺りで轟音が轟く。クリスがそちらに視線をやると、北門の辺りから黒煙が立ち昇っていた。

 自動兵器による砲撃だ。

 【探索バード】はその余波でやられたのだろう。映像は途切れたままで回復する兆しがない。


「おー。なんかやる気満々? って、俺がここにいること知ってるのか?」


 やがて別の【探索バード】からの映像に切り替わった。

 自動兵器は破壊した北門の残骸の上を歩いて街に侵入していた。瓦礫を乗り越えると足先のローラーギアを展開。高速で街の大通りを南に向かって走り始めた。つまりはクリスのいる方向へ。


「真っ直ぐこちらに向かってくるって事は、やっぱ俺が目的か。さしずめ無断で街に入った侵入者許すまじってところかな。

 それならそれで迎え撃っちゃうもんねー」


 自身の射線は通り、かつ機体は遮蔽物に隠せる場所に移動し、片膝をついて射撃体勢を取る。

 バックパックに装備した、上下二つ折りしていた魔道砲を展開、フルバレル状態にする。

 魔道砲はフルバレル状態で56口径だが、普段から機甲騎兵の身長ほどの砲身長を担いでいてはいろいろ支障がでる。そのため普段は半分ほどの26口径で上下に折畳み、ショートバレルにしていた。

 どちらの状態でも発砲に支障はないが、長射程での精密射撃にはフルバレルとしたほうが精度も威力も優る。


 二本に分割された砲身が、一本の長砲身と化す。

 匠の技法により仕上げられた砲身には1ミクロンの歪みもない。発射体勢を整えるクリス。

 

 装填される弾種はモチロン魔法--ではなく実体弾の徹甲弾。ティエレDに装備した魔道砲は魔法と実体弾の両方射撃可能な併用型だ。

 この世界において、銃や砲は『魔法を撃つための道具』だ。AMF状況下での有効性を学び、実体弾を使おうと考える者も出始めてはいるがまだ小数だ。

 クリスもその内の一人なのだが、クリスの場合は単に実弾マニアなだけであった。


「魔法も良いけどせっかくの戦車砲。実戦での初弾はやっぱ実弾撃たなきゃねー。くくくっ。旧ドイツ軍の守護神8.8Cm高射砲を戦車用に転用した56口径8.8Cm砲--をモデルにしたこの魔道砲。

 当たると、とお~っても痛いぞぅ」


 右手でシート横に装備された魔道砲用の照準器を取り出し覗き込む。照準器は四角い箱に銃把と引き金を付けたような形で、遠距離での精密射撃時に使用する。

 照準レンジを徹甲弾用にセット。大きな三角形とその左右に小さな三角形が三つずつ並ぶ照準マークで狙いをつける。


 自動兵器は大通りを真っ直ぐ向かって来ていた。狙われているのを察知したか、機体を左右に振り不規則な回避運動を取り始める。その時、自動兵器を追跡していた【探索バード】からの映像がすべて途切れた。自動兵器がAMFを展開したのだ。


 先行試作機には新型のAMFが搭載されていた。

 従来型より遥かに高出力のそれは、距離にして旧型の倍の半径200メートルという広範囲内の魔法を無力化ないし弱体化させる。

 AMF範囲内に捉われた【探索バード】は魔力結合を解かれ、霧散して消えたのだった。


 原因不明で数羽の【探索バード】の反応が消滅したのを察知したクリスだが、射撃体勢を解かず自動兵器が接近するのをじっと待っていた。

 相手は複雑な動きで的を絞らせまいとしている。だが集中してよく見ると、やがて相手の動きが緩慢に感じられ、次にどう動くのかがはっきりと「見えた」。


「距離2000・・・1800・・・1500! 喰らえ、イタイイタイ砲! 撃てー(ファイエル)!」


 轟音と爆炎を散らし発射された徹甲弾が、大気を引き裂き自動兵器に突き刺さった。機銃が内蔵された左腕と左脚の一本をもぎ取る。

 衝撃で体勢を崩し、自動兵器は速度を落とせぬままスピンして傍らの建物に頭から突っ込んだ。すでに半壊状態の建物は、大質量の自動兵器の衝突で完全に崩れ落ちる。崩れた瓦礫が自動兵器に降り注ぎ砂塵が舞い上がった。

 魔道砲から排出された巨大な消火器のような薬莢が、石畳で舗装された通りの上を甲高い音を立て転がっていく。


「命中! さすが【精密射撃】スキル10レベル! 予測射撃も完璧っ。続いて第二射っ! 次弾装填、弾種徹甲! 撃てー(ファイエル)!」


 スキルとは異なる力が働いたことに気がつかないクリスは、矢継ぎ早に装填した第二射を発砲。瓦礫の山から抜け出そうとしていた自動兵器に突き刺さった。残っていた右腕が機銃ごと吹き飛び、機体の半ばを埋めていた瓦礫と共にばらばらの破片となって飛び散る。

 第二射の発射後すぐにクリスは動く。


「チャーンス、白兵戦で止めだ。無駄に接近して剣で止めをさすのがロボット戦の花っ!(偏見)」


 射撃体勢のまま機体各部のスラスターを最大に吹かし、遮蔽物を飛び越えて大通りへ躍り出る。空中で射撃体勢を解き、着地と同時にローラーギアと背面スラスターを全開。怒涛の勢いで自動兵器へと迫った。

 石畳の上を爆走しつつ、腰にマウントしてある近接専用のブロードソードを抜く。






 自動兵器の主演算機は混乱していた。なぜこのような事態になったか理解できなかった。

 原因なら分かっている。街に侵入した機甲騎兵に撃たれたからだ。

 問題なのは、『なぜ命中したのか』だ。


 自身に入力されている回避プログラムは高度で複雑な乱数を用いた最新式だ。機甲騎兵の高速機動にも引けを取らない。回避行動を取る目標に1500メートルの遠距離で命中させるなど不可能なはず。しかし敵機はそれを成し遂げた。

 ますます混乱する。


 回避プログラムのバグ

 No. 試験前に自己診断プログラムにて確認済み。


 高度な射撃支援プログラムの使用

 No. 人類にそのような技術はない。


 単なる偶然

 No. 計算的では一千万分の一以下だ。だからこその偶然なのだが・・・。


 原因究明にと様々な可能性を検討するが、そのつど否定する。思考の袋小路を破ったのは敵機接近を告げる副演算装置からの警報だ。

 件の機甲騎兵は白兵戦用の剣を抜き一直線に突撃して来ていた。

 主演算装置はさらに混乱した。

 なぜ遠距離からの攻撃を継続せず不利な接近戦を挑むのか。AMFの範囲内に入った機甲騎兵は行動に大きな支障が出る。近接する必要性など無いはずだ。自殺行為である。

 理解不能だった。


 クリスはAMFの存在を知らない。かつ白兵戦はロボット戦闘の花などとたわけた理由から接近してくるのだが、自動兵器にその理由は分からない。

 主演算装置は迎撃命令を出し、左右の四連装ミサイルランチャーを展開、全力射出した。迫り来る八発のミサイルに慌てて回避行動を取る目標。

 防御フィールドのある機甲騎兵にはたいしたダメージはないだろうが、これは云わば目くらまし。本命は電磁投射砲の一撃だ。残った脚で機体を起こし万全の発射体勢を整える。


 目標までの距離は1000メートルを大きく割り込んでいる。ミサイルはすべて迎撃されたが、愚かな事に目標は射線軸上を直進して来ている。

 電磁投射砲の前では機甲騎兵の装甲など紙切れ同然だ。

 電磁投射砲から音速を超える砲弾が撃ち放たれた。






 迫り来る八本のミサイルに焦るクリス。

 慌てて回避行動を取りつつ内蔵の12.5mm魔道機銃で迎撃する。ティエレDに到達する前に全弾撃ち落とせたのは僥倖だ。


「ミサイルぶっ放すとはなんと無粋な! こっちが剣を抜いたら同じく剣で応えるってのが漢の戦いってもんだろうが!」


 理不尽な怒りを燃やすクリス。

 最後の一発は機銃では間に合わず剣を投げて撃ち落した。失った剣の代わりに仕方なく予備の騎兵用小太刀を引き抜く。

 おのれ弁償させてやる!、と爆炎の向こうの自動兵器を映像盤越しに睨む。一瞬晴れた爆炎の隙間から自動兵器が垣間見えた。怪しく光るサソリの尾をこちらを向けている。

 脳裏で【危険感知】スキルがけたましく警報を鳴らした。


「やべっ!」


 自動で【緊急回避】スキルが発動し、機体を傾け回避を試みる。

 サソリの尾が閃光を輝かせた。


「間に合わない!」


 【直感】がそう告げていた。

 【回避】【高速回避】【機動回避】【緊急回避】、どの回避スキルも間に合わない。

 いずれの回避を使おうと、クリスにはすべての結果が「見えて」いた。

 防御系スキルも同様だ。


 クリスの感覚が、何者かの支援を受けて研ぎ澄まされる。

 途端、クリスには自分の外の時間が緩慢と流れはじめたのを感じた。すべてのものがスローモーションとなりゆっくりと流れて行くのが「見えた」。

 迫り来る破壊が目前に迫る。

 必殺の砲弾をかわす術はない。防御スキルも耐えられない。回避も防御も無理ならば--


「【魔断閃】!」


 刃一閃。

 縦に分断された砲弾が、ティエレDの両脇を通り過ぎ背後のビルを撃ち抜く。大爆発が起きた。


 前衛系の職業クラスは、90レベルから奥義と呼ばれる強力なスキルが使えるようになる。

 【魔断閃】は【剣士】99レベルの奥義だ。

 このスキルで斬れない物はない。巨石であろうとダイヤであろうと、たとえ迫り来る砲弾であろうと。

 攻撃と防御の特性を併せ持つ【剣士】最強の奥義なのだ。

 技の使用時に刀属性を持つ白兵武器を使うと、成功度と効果が二割増しになる。失くしたブロードソードの代わりに小太刀を抜いたのは正解だった。


「某明治サムライ漫画で、小太刀は盾として使える刀ってあったけどホントだな!」


 壮絶な勘違いなのだが結果よければ全てよし。

 なお、これ以後クリスは生身でも小太刀を愛用するようになるのだが余談である。

 それはさておき、クリスは怒り心頭だった。


「あくまで漢の勝負に応じないってんならこちらにも考えがある! 無理矢理にでも応じさせたるわぁ!」


 アクセルペダルをめいいっぱい踏み込み、ティエレDに最大加速を行わせる。機体背面の四つの大型スラスターが最大級の推進炎を吐き出した。

 小太刀の刃を上に腰だめに構え、突貫。所謂ヤクザの「タマぁ殺ったるわ!」アタックを敢行した。


 アークドライブはパイロットの感情でその最大出力が変化する。クリスの感情の爆発を受けて限界以上の出力をたたき出した。推進炎が遥か後方まで尾を引き加速。時速400Kmを突破した。

 ヤクザアタックのポーズのまま自動兵器へと猛チャージする。


「往生せいやーーーーーーーー!!! ・・・って、アレ?」


 急激にアークドライブの出力が低下した。

 自動兵器のAMF領域に踏み込んだためだ。

 背面スラスターの噴煙が、「パスン」という情けない音と共に消え去り加速の終了を告げる。

 ドライブの出力が低下しようがスラスターの噴煙が止まろうが、加速で生じたティエレDの運動エネルギーは止まらない。

 さしものレッド・チャペルも、急激に低下した出力をパイロットの精神力で補うには僅かの間を必要とした。スラスターの再点火も間に合わない。


「あら?」


 結果、ほとんど減速することも出来ずそのまま自動兵器へと向かっていく。すでに目と鼻の先だ。

 途中、へたに脚部に力を入れたものだから、路面の突起につま先を引っ掛け頭から派手に転倒した。だがしかし、その程度で停止できるほど生易しい慣性ではなかった。

 派手に転がりながらも止まる気配はない。

 いきなりコケたお陰で電磁投射砲の第二射を回避できたのだが、運が良かったのか悪かったのか。


「○△□☆△□☆○△□!!!!??」


 操縦席の中で声にならない悲鳴を上げるクリス。

 立ち並ぶピンへと向かうボーリングの玉よろしく、自ら生じさせた運動エネルギーを保持したまま自動兵器へと衝突する羽目になった。

 それはもう見事なくらいのストライク。


 砲弾を超える鉄塊の直撃を受けた自走兵器は、爆発すら出来ず四散した。様々な部品をぶちまけあるいは押し潰されKg幾らのスクラップへと変わる。

 クリスにとって幸運だったのは、ティエレDがまさしく重装甲だったことだろう。

 並みの機甲騎兵であれば諸共に大破していたのは確実だ。たとえ操縦席の中がミキサー状態となったとしても。


 かくして、クリス初の実戦は、実に締まらない幕引きと相成ったのであった。






 夜も更けた中、半壊したティエレDの傍らで、戦利品漁りという名のスクラップ回収をするクリスの姿があった。

 えぐえぐと滂沱の涙を流しながら。

 なお、ティエレDの修理には丸二日を要したという。



H23/11/28 誤字修正。ご指摘、ありがとうございます。

H24/01/06 誤字修正。ご指摘、ありがとうございます。

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