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第02話 機甲騎兵といっしょ

お、お気に入りが8件も。嬉し泣きして良いっスかっ!

 MMORPG『パンツァー・リート』

 いわゆるファンタジー世界に科学的要素「魔動術」を持ち込んだ、剣と魔法と銃と機械が存在するオンラインゲームだ。ゲームとしては後発で、一番の目玉は様々な騎乗動物や乗り物を駆りクエストを進めていくことだろう。


 様々に登場する装備品や搭乗機械に騎乗動物。機械や魔法のカスタマイズも魅力のひとつだ。魔法に至ってはまったく新しいオリジナル魔法を作ることも出来る。

 中世的な世界観と、20世紀初頭の頃の科学的要素が混ざりあう不思議な世界エイリシエル。それが『パンツァー・リート』の舞台だった。


 『パンツァー・リート』はクラス制を使用している。

 システムはクラス制だが複数のクラスを獲得可能だ。【戦士】と【魔術師】を組み合わせ、魔法戦士としてプレイするといった具合に。

 各職業には装備できる武器防具に制限があり、なんでもかんでも組み合わせればいいという訳でもない。例えるなら【魔術師】は装備できる防具にかなりの制限があり、身体の動きを阻害する皮鎧以上の防具を装備すると魔法が使えなくなる。

 【戦士】や【剣士】と組み合わるなら薄い防具は致命的だろう。かと言って、分厚い装甲の金属鎧を装備すれば【魔術師】が無駄になる。その点、鎧制限の無い【神官】と組み合わせるほうがベターだ。所謂神官戦士である。

 無論、薄い防御を承知で魔法戦士をプレイする猛者も多い。


 【戦士】や【剣士】、【魔術師】【神官】などの所謂冒険者として必要な職業を冒険者クラスと言い、他の職業は一般クラスとして区別されていた。冒険者クラスには【賢者】や【指揮官】などの知識系や補助系も含まれる。

 各職業の最大レベルは100レベル。さらに各職業にはレベルに応じたスキルがあり、そちらは最大10レベルとなっている。このスキルレベルがダメージや回復量などの威力となる。

 クラスの所得数に制限は無いが、各クラスには能力補正値が設定されていて、補正がかかるのは三つまでだ。これを常設クラスと言う。常設クラスに設定していないクラスのスキルは使用できない。

 これはキャラクター作成時の場合で、レベルが上がると最大7クラス常設が可能となる。能力補正がかかるのはやはり三つまでだが、使用可能なスキルを増やすことが出来る。


 『パンツァー・リート』は自由度が高い。

 狩りや戦争など、戦いとはまったく縁のない遊び方にこだわる者も多い。代表的なのは商人だろう。

 エイリシエルでは地方によってアイテムなどの物価が異なる。さらに都市の発展度や季節によっても変動する。この価格差を利用し、商売を始めるプレイヤーが多くいる。

 ゲームでは資金を出せば街に『商店』を出すことが出来る。

 自分の店を開く商売に勤しむ者、さらに大規模に各都市にチェーン店『商会』を築く者もいる。

 大型トラック十数台でキャラバンを組み、フィールド上で露店(この場合はバザーと呼ばれた)を出す猛者までいるほどだ。


 職人道を突き進むプレイヤーも多い。

 製造スキルを駆使して様々なアイテムを作ることができるのだ。

 戦闘に役立つ各種ポーションを製造する【錬金術師】、武器や防具を製造する【鍛冶師】は当然として、【音楽家】や【陶芸家】【家具職人】として自分の作品を世に出そうとする者もいる。

 ポーションや装備の類と違い、これらゲーム的な要素の低い作品が売れるかは、ひとえにプレイヤーのセンスにかかっているが。


 狩りや戦争に勤しむ者。自分の趣味に生きる者。冒険そっちのけで一般クラスを極めようとする者。

 『プレイヤーの数だけ楽しみ方がある』とは運営のキャッチフレーズだ。

 そしてここに、【魔術師】として魔術を行使することだけを楽しんでいる者がいた。言わずもがなクリスティナである。


「【爆炎球】!」


 形成された炎の球が掌より撃ち出され、100メートル先の戦車の残骸に着弾。超温の熱で溶解した残骸がばらばらに爆発四散した。


「続いて【雷撃槍】!」


 指先より解き放たれた紫電の槍が半壊した建造物を貫き、完全に瓦礫に変える。

 調子に乗って魔法を連発するクリス。炎が雷撃が氷の槍がカマイタチが光の槍が吹雪が怒涛のように荒れ狂った。


「止めだ! 落ちよ神鳴りっ! 【閃轟雷撃陣】!」


 街の上空に巨大な魔方陣が展開する。魔方陣から解き放たれた無数の雷撃が地上へ豪雨のごとく襲い掛かった。雷撃を受けた幾棟のビルが崩れ落ちる。石畳で舗装された道路が抉れ消し飛んだ。

 只一人の人が成し遂げたとは思えない惨状がそこにあった。


 クリスは無意味に破壊活動を続けていた訳ではない。


「いいいいいぃぃぃぃぃっっっっやっはあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!」


 無意味ではない。


「きぃぃぃぃもちいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーー!!!!!!」


 繰り返すが無意味では決してない。


 時計塔から見下ろした街の有様に、クリスは記憶していたエイリシエルとは異なる現実があることを理解した。

 廃墟と化した城塞都市オルテア。軍や冒険者と争ったらしい自動兵器群。何が起きたか分からないこの世界の中でで生きていくため、クリスは自分を見つめ直すことにした。

 そこで何故無数の魔法をぶっ放すのかと言えば、これにもちゃんと理由がある。

 自分に何が出来るのか、どれだけの力があるのか知っておくこと。要は「自らのスペックの再確認」だ。

 プレイヤーとして、ゲームキャラ「クリスティナ」の能力は熟知していたが、この世界での現実としての「自分」は未知数だった。

 「である」と「だろう」は本質的な意味において異なる。

 早急に「自分」を知る必要があったのだ。もっとも、そこで大魔法を連発すると言うのがクリスティナという人物の全てを表しているのだが。


 結果としては「ほぼ」ゲームと同じ。

 装備の取り扱い、体術や戦闘スキルも思うように扱えた。仮に魔物や自動兵器に襲われようと遅れをとることは無い。

 攻撃魔術の確認も充分すませた。クリスの目前に広がる破壊の跡がその証明だった。ほんのちょっとのストレス解消を含めて遠慮なく魔法を連発した成果である。


 クリスは思いもしないことだが、実はこれはかなり異常なことだ。なぜなら、世の魔術師はこれほどの魔術を数十発連射することなど出来ない。そもそも精神力がもたない。

 魔法は使えば当然のごとく精神力を消費する。しかし、これだけの魔術を解き放ってもクリスの精神力はわずかしか減っていなかった。宮廷魔術師ですら裸足で逃げ出す恐るべき精神力容量だ。


 十二分に攻撃魔法をぶちかまして満足したのか、クリスは次の魔法に取り掛かる。

 【浮遊】や【飛翔】などのいわゆる便利魔法。【防御】や【障壁】、【多重結界】などの防御魔法。怪我をしてないので実際効果があったかは判らないが、【治癒】などの回復魔法も試してみた。


「やー、我ながらチートだねぇ。こんだけ魔術使ってまだ全MPの一割も減ってないとは」


 自分のステータス画面を見つつ思わず呟く。

 魔術の確認にひと区切りつけ、ちょっと休憩とばかりにコーヒーブレイクのクリス。


 時計塔から下りた後、クリスは時計塔隣の神殿跡にキャンプを設置した。一部壁が破壊され、二階の床も一部抜けて半ば吹き抜け状態になっている。床板も朽ちて基礎が剥き出しになっていたが、しっかりした造りの建屋自体は無事で雨風は十分に防げる。

 そこにティーガーⅠと片膝を着いた駐機状態の機甲騎兵を並べ、簡易テーブルとチェアを挟んだ反対側に大型のキャンピングカーを置いた。


「キャンピングカーのこと忘れて風邪引きかけるなんて、なんてお馬鹿な」


 思わず苦笑する。

 戦車の上で寝てしまい、あまりの寒さに飛び起きたのは夜も明けきらぬ早朝のこと。

 内陸部の荒野の昼と夜の気温差は激しい。危うく凍死しかけるというポカもいい経験だと、熱いシャワーを浴びながら無理やり納得したクリスであった。


「さぁて、いよいよメインイベンター! 楽しい楽しいマイ機甲騎兵の試乗と行きますか!」


 テーブルにマグカップを置き、いそいそと機甲騎兵に駆け寄る。

 クリスの装甲騎兵は、全騎兵中もっとも重装甲のティエレシリーズをべースに改良を加えたカスタム機、ティエレDだ。ただでさえ重装甲のティエレに更に装甲を増強。さらにさらに両肩に大型のラウンドシールド、両腕にアームシールドを備え、背面のバックパックに戦車砲にも使われる56口径魔道砲を搭載し重武装重装甲化している。

 漢の武器、パイルバンカーも忘れてはいけない。

 機甲騎兵は通常、全身鎧を着た騎士を連想させるスマートなシルエットを持つが、ティエレシリーズは少々様相を異にする。例えるなら、戦車を無理やり人の形にした姿というべきか。


 一言でティエレシリーズを表すなら「無骨」あるいは「金属塊」だろう。そのためプレイヤーからは「かっこ悪い」と評され人気が無かった。重装甲で動きが鈍いのも原因だ。

 クリスのティエレDは更に重装甲を施し、その姿は異様とすら言えた。そこに56口径魔道砲である。もはや動く砲台だ。


 全高6メートル強の雄姿を誇るその愛機にうっとりとした視線を注ぎ、機体背後に回るクリス。

 機甲騎兵の操縦室は背面にある。これは全ての機甲騎兵に共通している仕様だ。

 戦闘時は機体の正面を相手に向ける為、背面に操縦室を設置したほうがパイロットの生存率が上がる。操縦室を背面に確保する関係で、機甲騎兵は背中に大き目のバックパックを背負った形になっていた。


 垂直飛びの要領で、ぴょーんと操縦室の上に飛び乗るクリス。小柄な身体からは想像できない脚力だった。

 操縦室の天井には戦車のそれと同じような展望塔があり、パイロットは展望塔上面の搭乗ハッチから操縦室に入る。クリスもハッチを開いて身を滑り込ませた。

 機甲騎兵の操縦室はシート正面と左右に外の景色を映し出す映像盤、その周囲に機体情報をパイロットに知らせる各種計器類が渾然と並んでいる。正面の映像盤の下にバイクのハンドルの様な操縦桿があり、引き上げ水平のグリップを縦に起こせば始動準備が整う。逆に最後まで押し込めば、自動で駐機状態を取るようになっている。


 機甲騎兵には、前進後退などの基本動作以外の操縦法は存在しない。それ以外の、例えば戦闘などはイメージ入力式により機体を動かす。操縦桿を握り動きをイメージすれば、騎兵の頭脳であるマギスジェムが操縦者の意思を読み取り機体はその通りに動く。

 動かすだけなら素人でも可能だが、戦闘となるとパイロットの技量が物をいった。


「おおおおおおおー! いよいよ感動のドライブ始動ですよお!」


 四点ハーネスで自身をシートに固定し、逸る鼓動を抑え操縦桿を引き上げる。カチッという音と共に固定された。


「アークドライブ始動!」


 機甲騎兵の心臓、アークドライブが低い唸りをあげて起動した。アークドライブが周囲のマナを収集し魔力に転換、機体各所に伝達していく。

 音と唸りは徐々に大きくなり、操縦室のシート越しにクリスの身体にも振動を伝える。映像盤に灯が入り外の景色を映し出した。マニア好みのアナログ計器が一斉に動き、針を揺らす。

 紋章機関が呪力詠唱を開始し、機体の超重量を緩やかに相殺していく。内部機関が押しつぶされないよう連結して支えていた装甲板と関節駆動部のロックがはずされ、機体がゆっくりと立ち上がる。


「おおおおおーー! 本物だ! 本物のロボットが動いてる! 本物のロボットを動かしてる!」


 現実にロボットを操縦しているという事実に、胸を躍らせる狂喜乱舞するクリス。

 操縦桿のグリップを握り締め、自らを落ち着かせるため深呼吸すると機体を一歩前進させた。鋼の脚が一歩を踏み出す。


「こ、この一歩は小さな一歩だが、私にとっては大きな一歩である!」


 鋼鉄の脚が大地を踏みしめる感触をシート越しに感じ、感動に打ち震えるクリス。さらに歩を進め、野外に進み出た。

 倒壊した建築物の残骸を迂回しずんずん進む。やがて大きな道路に出くわした。北門から領主の居城のある丘を掠めるように南門へと抜けている中央道路だ。ところどころ車両の残骸が転がっているが、道幅40メートルを超える大通りが眼前に広がっていた。当然のように人通りは無い。

 クリスの脳裏に天啓が閃く。


「これはあれかっ! あれをやれと言っているのだな!」


 機甲騎兵の脚部には高速移動用のローラーギアが装備されている。短時間ではあるが、最高時速100Kmオーバーでの高速機動が可能なのだ。

 現代の戦闘が視認による照準である以上、既存兵器では予測困難な機動をする機甲騎兵の相手をするには力不足だ。機甲騎兵の機動に照準が追いつかない。それに加え、アークドライブ稼働中の機甲騎兵には、魔法を含めた射撃攻撃に対する強固な防御フィールドが展開される。遠距離攻撃では効き目が薄かった。

 機甲騎兵を相手にするには、同じ機甲騎兵でもって白兵戦を仕掛けるのがもっとも有効なのだ。

 高速機動と防御フィールド。この二つこそが機甲騎兵をして陸戦兵器最強と呼ばしめる所以だった。


 さて、クリスのティエレDだが、当然のことながらローラーギアが装備されている。だが、必要以上の重装甲が災いしてその速度は他の機甲騎兵の半分も出ない。

 重装甲で防護こそ硬いが、攻撃を受け続ければいつかは沈む。

 紋章機関による重量軽減でも殺しきれない超重量が最大のネックだった。


 そこでクリスは考えた。

 いっそのこと、強引にでも浮かせてしまえと。


 超重量機体でのローラーギアへの負担を軽減するため、各部に配置したスラスターを地面に向けて噴射し機体を持ち上げる。脚部のローラーギアと背面に設けた大型スラスターにより高速で大地を駆けぬける。云わばホバーとローラーギアの二段構えだ。

 無論、このような無茶をするには通常のアークドライブでは出力が足りない。問題を解決するため、クリスのティエレDには特殊なアークドライブが搭載されていた。


 プレイヤーの間でもパイロット殺しとして悪名高い「レッド・チャペル」。

 マナの収集率と変換率に優れ、比類なきパワーを生み出す特殊アークドライブ。だがレッド・チャペルはパワーを生み出すため搭乗者の精神力を強制的に流用する。それでも足りなければ生命力も奪っていく。それも半端ない量を。

 「レッド・チャペル」をして流血の福音とはよく言ったものだ。


 レッド・チャペルを搭載した機体で戦争に参加したプレイヤーは、墜とされるより「ガス欠」でリタイアする者のほうが多かった。ドライブ自体の重量も重く、搭載できる騎兵も限られるうえにいつ自滅するか分からないカミカゼ仕様。それがレッド・チャペルと言うアークドライブだ。


 レッド・チャペルは高難易度クエストの報酬アイテムだが、入手に苦労する割りに使えないアイテムベストテンに堂々ランクインしている。ゆえに予備も含めて入手はたやすい。


 余談だが、ベストワンは魔法騎士(ミラクルナイト)変身セットである。入手に苦労するレアアイテムでありながら、防御修正やら能力向上やらの付加価値が一切無い完全なネタ装備だ。だが、これは一部に根強い愛好者がいるため、使えないアイテムではあるが流通量は少なく取引価格も高い。

 衣装は複数用意されているので、全品コンプリートを目指し何度もクエストを受けるプレイヤーもいる。どの衣装が当たるかは完全ランダムだからだ。

 ただし、この変身セットの取り扱いには注意が必要である。何せ性別を問わず装備・変身可能なのだ。おまけに魔法少女物の定番として、エフェクト付きで脱げ、全裸になってから魔法騎士(ミラクルナイト)の衣装を身に纏う仕様になっている。つまり、男キャラの場合でも以下同文。

 大顰蹙である。

 さらに余談だが、魔法騎士(ミラクルナイト)の衣装は全てスカートかレオタードとなっている。

 男が身に纏えば以下略。




閑話休題




 高速機動の間、ずっとスラスターを吹かし続けなければならないティエレD。他の機甲騎兵と違い、移動するだけで大量のMPを消費する。

 それに加え、ティエレDには更なる加速を得るため、背面に推進用の大型スラスターを四器搭載していた。これがまた大量のMPを消費する。おかげで最高時速300Kmオーバーという馬鹿スペックではあったが。


 あまりにピ-キー仕様の見事な仕上がりに、ギルド仲間からも大絶賛だ。「そこまでやるか」「お前バカだろ」「いっそ機体を赤く塗れ」「ツノ生やせ」など、惜しみない賞賛が送られた。

 クリスも大いに胸を反らしたものだ。視線からは目を逸らしたが。


 そのティエレD、大通りを右へ左へ北へ南へ絶賛爆走中である。

 何度も何度も大通りを往復している。


「あははははははははははははははははっははHHHA------!」


 最高速度ではあっという間に街の端に到達してしまうため、程よいスピードで駆け廻っていた。

 機体を右へ左へ揺らし、障害物の残骸をかわすためわざわざローリングをかましつつ爆走を続ける。途中からは展望塔から身を乗り出し、直接その身で吹き荒ぶ風を感じたりと躁状態で。






 「それ」のセンサーが反応を感知したのは、あるいは偶然だったのかもしれない。

 新設計の先行試作機である「それ」は、最終テストのため、単独での走行試験の最中だった。反応があったのは、人間が言う所の城塞都市オルテア近郊を通りかかった時だ。

 「それ」に搭載されたセンサーが従来型より高性能でなければ。巡回パトロール機でなく、トライアル中の「それ」が今日この時にオルテアに差し掛からなければ見過ごされていただろう反応。

 人間達が扱う魔動機械、機甲騎兵の反応だ。


 オルテアの街周辺の土地は、マナを多く含む鉱石の埋蔵地帯であり、街全体が魔力溜まり--所謂天然のチャフ状態となって「彼ら」のセンサーを阻害する。

 巡回パトロール機では街中に入らなければ感知できなかっただろう。

 「それ」は独自の判断でトライアルを中止する。

 人間の殲滅は「彼ら」の基準で優先順位第二位に位置しているからだ。現時点では最優先事項である『蟲』の殲滅の為に「彼ら」の戦力のほとんどを割かれており、人間の街に攻勢をかける余裕が無い。かと言って見過ごせる事態でもない。

 「彼ら」のテリトリーに無謀にも入り込んだ人間の存在を許してはおけない。

 人間は「彼ら」にとって、打ち砕くべき破壊目標なのだから。


 「それ」にとって人間が操る機甲騎兵など問題になりえない。

 高出力のAMF(アンチ・マギリング・フィールド)を展開すれば、機甲騎兵の防御フィールドの効果は半減する。人間が魔法に頼る戦いをする以上、AMFはどこまでも有効だ。攻撃手段の大半を封じることが出来る。移動力も激減するだろう。

 高速機動を封じられ、防御力も落ちた機甲騎兵など「それ」にとってはただの的にすぎない。装備された副武装で十二分に対応可能だ。主兵装の電磁投射砲ならば1Km先からでも機甲騎兵の装甲を貫ける。

 なにも問題は無い。障害などありえない。


 「それ」は進路をオルテアに向けた。

 無粋な侵入者に死という真実を与えるために。



書き溜めたのはここまで。次話の更新からはちょっと時間が空くと思います。


H23/09/04 サブタイトル変更 話数書き忘れ・・・一部訂正

H23/11/28 誤字修正。ご指摘ありがとうございます。

H24/02/22 誤字修正。ご指摘ありがとうございます。

H24/04/18 誤字修正。ご指摘ありがとうございます。

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