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女神の護符  作者: のはな
北の小国編
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鬼のした事

よく晴れた朝。

都から離れた片田舎の関所へ、早馬がやって来た。


聞けば、山の中腹にある集落からやってきたという。

馬を駆けてやってきたのは、年齢にそぐわない実戦的な重装備の鎧をまとった少年だった。


亜麻色の短い髪と、灰色の瞳が深くかぶったフードから顔を出す。

精悍な顔つきからは感情が読み取れず、関所を守る兵士の一人は思わず身構える。


(…ただの、子供ではない。恐ろしいほどに隙がかない)


「…山賊の一団を制圧した。至急、捕獲した賊を引き取りに来てほしい」


言葉は、この国のものではない。

隣国の7つの騎士団が守る王国の言葉だった。


その瞬間、この少年がまとう空気の異常さを理解した。


戦ったことはない。


しかし、かの王国にはこの10代の少年達すら高い戦闘力を誇る騎士を幼い頃から育て上げるという。


王宮に仕える正規の騎士団の強さは、千や万の雑兵を一人で凌駕するほどだ

なぜ、そんな騎士が一人でこんな所へ来たというのか。


男は背中に落ちる冷たい汗を感じながら、オレグと名乗った少年騎士の話を聞いた。





想像とは異なる、残酷なイーゴリの処置だった。


ヴィンセントは山賊のねぐらへ来るなり、同行した兵士の一人がくぐもった声をあげ、出ていったのを見た。


立ちこめる血の匂いが、洞窟ですえた匂いに変わり始めている。


無造作に転がる賊の遺体には、無造作に毛布が掛けてあった。


そこをめくりあげる勇気などない。


先を行くイーゴリが施した配慮と分かったが、毛布の下は形を保っていなかった。



「…これは…本当に、二人で…?」



イーゴリは兵士の隊長の問いに対し「ああ」と、短く肯定した。



「20人中15人はやむを得ず、殺した。…正当防衛だ」


洞窟の一番奥へ行くと、うめき声を上げて手足を縛り転がる残りの5人がいた。

彼らは、イーゴリを見つけるなり、ひどい悲鳴を上げ始めた。



手配書に描かれた人相と照らし合わせ、指名手配中の山賊団の幹部たちと分かる。



「…いや…見事…ですが。ちょっと顔が…」

「………治れば一致するだろ」


淡々と返答したイーゴリは、その時ようやくヴィンセントの視線に気づいた。


恐怖でも、歓喜でもない。

責めるような顔つきをしたまま、ヴィンセントはすぐにきびつをかえした。



(…やりすぎだ)



口にはしなかったが、彼からあからさまな嫌悪感が放たれている。


イーゴリは離れていくヴィンセントを追いかけたかったが、隊長の確認に応じることにした。





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