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女神の護符  作者: のはな
北の小国編
89/98

山賊達、恐怖の夜

やや残酷描写ありです




簡単な、仕事だった。


月に2度、食料と生活物資を山の聚落へ取りに行く…


その夜、仲間の2人と連れ添い3人で集落の入り口まで赴いた若い山賊の1人は、軽い足取りだった。


誰でもできるお使いであり、仲間からは集落の人間は従順で、抵抗する力などない。

とうに、気力を無くしている。と、説明を受けていた。



しかし、ランプを手に入り口に立つ若い男2人を見て、瞬時に警戒した。



背が高く、筋肉の発達した精悍な顔つきの男。

その体は筋肉の鎧で覆われ、分厚く威圧がある。


そして、その後ろに立つ少年は、隙の無い野性味を帯びた目をしてこちらをみていた。



支配された集落の人間の中に、こんな若い男達がまだ残っていたか…?



「おい…なんだ?あいつら…」



瞬時に声を潜めて仲間の一人に言ったが、そいつは呑気だった。


「…デカいな。でも、義足の男も、あれくらいじゃなかったか?」



背格好は確かに似ていたが、放たれている殺気が段違いに強い。

微笑む大柄の男の顔に言いようのない悪寒が走った。


嫌な予感がし、腰に下げた短剣に思わず手をやる。



「いや…そばに行かないほうが良い。やばい…あいつら…」

「はぁ?」

「何言ってんだよ。ただ食料受け取るだけだろ?」


こちらへゆっくり向かってくる男の身のこなしは、隙がない。


次の瞬間、ランプの火が急にふっと二人同時に消えた。


深い闇の中、風を切る音が一瞬聞こえ…



ごとりと視界が下へ落ちた。


目の前に自分の脚が立っていた。

消えゆく意識の外側で、仲間の悲鳴がこだましている…。





「な…何が望みだ!?俺たちは貧乏な山賊だ…!!大したものはもってねぇ!!」



山賊の頭は歯を鳴らして声を張り上げ、命乞いをした。


滴る血の匂いが充満し、ねぐらとしている洞窟の火はすでに、中身をこぼした鍋のせいで鎮火している。


闇の中で、血に飢えた獣の目をした少年が剣を高く構えていた。



始めは、風の音に乗って小さな悲鳴。

そして、そこから段々と近づいてきた声はやがて混乱と恐怖へと山賊達をつつみ込んでいった。


薄い月の刃が、静かな光を下ろしている。



相手はたったの2人の男だった。


まだ大人になりきっていない少年。

そして、その少年の後ろで顔色一つ変えず、大柄な男が引きづってきた仲間をわざと目の前に叩きつけた。


すでに胸を刺され、事切れた仲間の死体に賊の頭は内臓を引きつけるような悲鳴をあげた。



「こ、殺さないで、くれ!!なんでもする!いや!何でも持っていっていい!!大したもんはねぇが…!」


混乱し、生気のない部下の目と視線が合って恐怖が倍増した。

苦悶の死に顔ではなく、何が身に起こったか理解していないような顔だ。


それほど、この山賊達はこの山では警戒心もなく伸び伸びと生活していた。


背の高い男は腰を抜かして震える賊を、何の感情も映さない瞳で見下ろしていた。


殺すこと。

制圧することに慣れた目である。



「…大したもんじゃねぇ…?まぁ、確かにな」



その殆どがニーナ達の集落から略奪した物であるため、イーゴリにとってその言葉は地雷だった。



「…一年ものあいだ、何人もて遊んで殺した?てめぇらが持ってるもんは、みんな彼奴等が必死にかき集めたもんだろ?」


「イーゴリ様。ご命令を」


「まずは指だ。抵抗するなら手首を切り落としてやれ。ただし、殺すな」



喘ぐような賊の悲鳴が月に吸い込まれていく。

涙すら許さない、処置を施された。




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