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嵐の夜に エピローグ
落ちてしまったイーゴリ
最後の思考回路
落ちていった…
どこまでもどこまでも続く闇は深く、唸り声を上げる底へ ーー
一瞬だけ、脳裏に一人の女の顔がよぎった。
ヴェーラ
微笑まず、小さな肩を震わせて墓標の前で涙を流している。
墓標に刻まれた名前は、父親のボリス。
それは、17歳の少女が天涯孤独となった瞬間の葬儀の姿だった。
俺が守らないと…
あの瞬間、その小さな背中を見て心から思った。
(俺が死んだらどうなる…?
ヴェーラは…誰が守る?)
吸い込まれる闇の中、感じたこともない恐怖が体を包んだ。
それは、もう二度と彼女に会えず死ぬことの恐怖か。
いや
ヴェーラの父親を殺したことで、行き着く先が地獄と知っているゆえの…
恐怖か 。
闇の底で、俺は初めて祈った。
神でも、女神でもいい
——まだ、終わらせるな。




