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女神の護符  作者: のはな
第六章 南部編
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おまけ話 腹筋について

本編に盛り込もうとしたけど

シリアスなので割愛した話です(笑)




買い取った汽車の指定乗車券を見つめ、その手はブルブルふるえていた。


昼休みも終わりかけ、一人職場に戻るための廊下を歩く…。



(…りょ、旅行の約束をしてしまった…しかも一泊)


童貞にしては恐ろしい計画である。

泊まりという、殺されるようなラッキー案件。


心臓がドカンドカンと大きな音を立ててチケットを握りながら、クラクラめまいがした。


(え…?まじで、いいのか、これ?勢いで言ったけど!?俺、ヴェーラさんと泊まりで旅行いけんの!?)


日帰り旅行と、なぜ勘違いした。

行くだけで一日がかりの南部なのに!?


同じ宿だとしても、もちろん部屋は別々に取る。

しかし、部屋の行き来はできるわけで…


つい、邪な妄想にとらわれそうになり、ぶんぶんと首を横に振ってそれを振り払う。


が、顔を赤くして思わず自分の腹を手で摘んだ。


ちょっとプニッとしてる気が…する?


イーゴリのバキバキに割れた、彫刻のような腹筋を思い出し、青ざめた。



「い…いそいでちょっと走り込みメニューと筋トレしよう…体が冬のせいで緩んでる。

オ、オレグに筋トレメニューを聞かないとおおおお!!!」


廊下を歩きながら赤面して叫ぶと、周りの騎士達がヤバいヤツをみるような目で、ケンジを避けた。



そして、夕方。


本日は、レオニードと道場で柔術の稽古日だった。


実はケンジ、模擬戦でレオニードがイーゴリを華麗に一本背負いで投げ飛ばした時から柔術に惚れてしまった。



祖国の武道を身に着けたいとレオニードを師にし、騎士のトレーニングルームの一角に畳を置いただけの稽古場。

そこで、週に2日ほど仕事終わりに習っている。


柔よく剛を制す。


この精神は力技で戦う総合格闘技より、ケンジには合っていた。



もちろん、レオニードには歯が立たない。


黙々と打ち込みをさせ、時折組み手をして技を教えてくれる。


しかし、ほとんど子供と大人くらいの力でねじ伏せられ、一瞬でひっくり返される。


この日も、組んだ瞬間に投げ飛ばされ、背中からたたきつけられるのを何度となくあじわった。


しかし、達人のレオニードから直接教えを受けられるおかげか、腕はメキメキあがった。


レオニードの騎士の弟子と組んでも、最近は3人中2人は互角かそれ以上の確率で一本を決められていた。


素直に、柔術は楽しかった。


「お前は、…飲み込みが早い。教えがいがある」


途中の休憩時間、レオニードが無表情でボソリとそんなふうに褒めてくれた。


レオニードと5分組んだだけで、息も絶え絶えになっていた。

ケンジはゼーゼー肩で息をして水筒の水をがぶ飲みしていた。


(ほ…褒められた?しかし…き…っっっつい!!)


背中から何度か叩きつけられたせいで、息が何度止まったことか。


道着を直し、恥ずかしい白帯を結び直した時だった。


涼しい顔で、道着の襟だけを直すレオニード。彼のかっこいい身体を、思わずジーーーっと見てしまった。


「…?なんだ?」



イーゴリの体も凄いが、レオニードはもっとシュッとしていてそこがカッコいい。

背も高く、無駄を削ぎ落とし、筋肉も必要な量にとどめている。


しかし、それはベストな体型なのか誰よりも強かった。


「あの…どうやったら腹筋割れますか?」


思わず、稽古とは全く関係のないことを質問していた。


レオニードは怒りもせず、祖父から受け継いだ黒髪が汗で顔に張り付くのを手で払う。


「……腹筋を、割りたいのか?」


東洋の血を色濃く受け継ぐ顔立ちで、少しだけ思案した。

そんな彼の血のおかげが、ケンジはつい親しみを感じてしまう。



「結論から言えば、人間はみな元から割れてる」


「ええ!?」


「無駄なぜい肉があると見えなくなるだけだ」


ケンジ、撃沈。

昼に触った腹は、まさに肉を感じた。



「ひ、酷い……!!シンプルに酷い!!!」


「事実を言っただけだ。」


その淡々さが逆に刺さる。

隣で最近柔術に稽古に混ざりだしたオレグは、その会話にいつも通り淡々とした顔で聞いている。


16歳の少年騎士。


しかし、彼のほうがケンジよりも筋肉のある戦える身体だった。


だが、育ち盛りなので身長を伸ばすために、これでも筋肉をつけすぎないようにしてるらしい。


(…この2人に両隣に立たれると、俺の身体って凡すぎないか…?)



レオニードは完成形。 オレグは発展途上系。


ふたりとも無表情でケンジの前に立ち、身体みられて「………?」と、汗を拭いている。


「ケンジさんのお腹は、言うほどひどくはないです。筋トレして走れば割れます」


「そ…そうかな?」


「はい。朝200 夜200 腹筋と背筋やってスクワットは500。8キロ走ってください。俺は 最近それを2セットやってます」


「どゆこと!?✕2なの!?」


「意外とゆるくないか?それ」


レオニードは真剣に言ってきた。


(ゆ、緩い…?え?)


「というか、普通に騎士としての鍛錬をつみ、ここで体術にも打ち込めば、必要な筋肉はつく。アレクサンドルを見ろ」


「あの、あの人…バケモンじゃないですか?」


2時間近くも休憩をいれず、ずっと道場の端でサンボの組み合い稽古。

終われば、ボクシングのスパーリングも

開始。

目はバキバキにキマっており、誰も勝てない。


そして、顔は恐ろしい程に美しい。


さっき、汗をタオルで拭いて水を飲んでいたとき、どこの清涼飲料水のモデルかとおもった。


ケンジは泣いた。

あの人が恋のライバルじゃなくて良かった。



「イケメンなのに、素手でも強いってひどいですよ…」


オレグはケンジとアレクサンドルを見比べて首をひねった。


「ケンジさんはモブキャラなのにかっこいいですよ?」


「たしかにモブだけどひどくない!?」


「そもそも、腹筋が割れていても、使える筋肉でなければ意味はない。稽古に打ち込み、腹筋を割れ」


レオニードの正論で最後は締めくくられた。


(脳筋…。すごく正論だけど、なんかひどい)



言えなかった…

好きな子とは割れた腹筋で、ちょっとでも格好良く旅行に行きたいなどと…。



「なんで腹筋なんだ?」

「恋じゃないですか?」



二人の極端に強い騎士は淡々と話し、凡人のケンジの恋の行方を理解していなかった。






騎士なのに、総合格闘技極めてる人々…


次こそは本編書きます

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