表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の護符  作者: のはな
第四章 女神の呪い編(七年前)
45/83

女神の呪い6.灰色のウサギと女王蜂の例え話

ミハイルの回。


ポリーナとは8歳差

アレクサンドルとは4歳差


そのため、2人よりも早く大人となって色々なことを経験しています。


基本的には人と距離を置くタイプです。

妹とお揃いの純金の女神の護符を、ミハイルは右手の小指に嵌めていた。


装飾品は彼にとって嗜好ではなく、権力の延長線にある。

王族の証、血統の印。

王たる者がそれを纏うのは、神の加護を示すためであり、同時に――他者を従えるためだ。


首元には王妃の血を引く祖母の首飾り、手首には曾祖父が即位式でつけた金鎖。

その全てが、彼の“血”と“正統”を飾り立てる鎧だった。


生まれながらの王ではない。

王位継承の列にあって、彼はただの“端くれ”に過ぎなかった。

だからこそ、彼は誰よりも完璧であろうとした。

身を飾ることで、自分が本当に“選ばれた存在”であることを信じたかったのだ。



ポリーナが女神の護符を買うとき、

「サーシャのは銀のカフス、だからお揃いで――」と、

彼女は自分の首飾りと兄の指輪を銀で揃えようとした。


その瞬間、ミハイルは即座に言い放った。


「銀は変色する。純金にしろ」


その声は穏やかで、理由ももっともらしい。


「安い金属はすぐ黒ずむ。王族の品として釣り合わん」


だが本音は、別のところにあった。


妹が選んだ“絆”に、自分だけが特別な輝きを刻みたかった。

銀の鎖が時を経て曇ろうとも、

金の指輪だけはいつまでも変わらず妹の祈りを映す。


それが、ミハイルの密かな計算であり、誇りであり――そして呪いの始まりだった。



「わぁ。キラキラ!お兄様似合う!」


ポリーナはミハイルの小指に収まり、ろうそくの光を浴びて鈍く輝く護符の指輪。


思わず嬉しくなり、感想を述べた。


意外なくらいすんなりと指にはめてくれた兄の行動に、普段は意地悪な事ばかり言うのにやはり根は優しいと思う。


神殿から買ってきた夜、ポリーナは寝る前にミハイルの私室に来た。

そして、兄と共にベットに寝そべってその護符を渡す。


無邪気な10歳の妹に、皮肉たっぷりに笑った。


「…この俺が、女にベットで指輪を渡されて指にはめることになるとはな」


8つ年下の妹の餅みたいな両頬をそのままぷにぷにと片手で挟み、弄んで冗談を言った。


ポリーナの身体はどちらかといえば細身だが、頬だけは極上の柔らかさで触っていて飽きない。


「そんなことができるのはお前だけだ、悪女め」


「…お兄様よくわかんないこと、また言ってる」


口をとがらせた妹に「わからんでいい」と子ども臭さにホッとする。


王太子という立場に惹かれて、多くの女が群がってくるが、どの女とも心を交わるような関わりはしてきていない。


ミハイルは女は好きで、甘い果実のように次々と味わう。しかし、女達から透けて見える権威への野心に、心までさらけ出して深く立ち入ることはしていなかった。



このまま、ポリーナが子供のままでいてくれればどんなにいいだろうか。



そんなことを時折思った。


成長してもおそらくポリーナは変わらず無邪気に自分を慕い、ほかの女とは違い権威に擦り寄ることなどしないだろう。


だが…


「お兄様にも素敵な恋ができますようにって、お願いしといたの!早くご本命を決めてね!」


「皮肉か?」



ほぼ日替わりのように、違う恋人をかたわらに置く兄。

昔は無邪気に「どの方が一番お好きなの?」と聞いていた。しかし、そのたびに兄はこう言う。


「俺は王太子だ。そう簡単に生涯の伴侶など决めん。つまり…選んでいる最中だ」


いつもと同じ返答を、横に寝そべりながら淡々と述べる。


「じゃあ、私も大きくなったら沢山恋をしたらいいの?」

「……女はそう簡単に不特定多数の恋人は持つな。悲劇しか生まれん」


「なぁぜ?」


「……では、お前は一匹の白い兎の雌が二匹の黒い雄と夫婦になり、生まれた子供が灰色だったらどちらの雄の子か分かるか?」


ポリーナの大きな目はしばらく考えるように

上を向き、何度か首を傾げている。


まだ性教育はそこまで受けていないはずだが、我ながら分かりやすい例えにしてやったとおもった。

はめた指輪を眺めていると、ポリーナが言った。


「どちらでも大丈夫。女王蜂だったらいいのに、なぜウサギではだめなの?」



意外すぎる返答でありながらも、何処か的を得たポリーナの考えに寝転がりながらゾクリとした。


ポリーナは無邪気に笑いながら、ミハイルの表情の無い顔を見ている。



ミハイルは恐れている。

正当なる王位継承権は、実子のポリーナにある。



このまま美しく成長していく妹に、己はその誘惑を断ち切ることができるのだろうか…と。



ロウソクの火が揺れ、指輪が金色の影を落とした。

その光は祝福にも見えたし、呪いの始まりにも見えた。







次回からは成長したポリーナとアレクサンドルが出てくる予定です。


いわゆる年頃になり、再会という感じで(笑)


ちなみに現在の年齢だと


ミハイル26歳くらい?

アレクサンドル22歳

ポリーナ18歳


と、なります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ