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女神の護符  作者: のはな
第四章 女神の呪い編(七年前)
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女神の呪い編4.兄と騎士と女神のいたずら

ポリーナ達の続きになります。


ポリーナは子供の為、色々とされたことの理解が出来てない感じはあります。

「貴様…っ突然倒れたかと思えば、何をふざけている?」


「いたぁい…」



ポリーナのぷくぷくの両頬をミハイルは両手で左右に引っ張り上げ、怒りをぶちまけていた。


アレクサンドルは冷静に「顔が歪みます。ほどほどに」とミハイルの不器用な心配性を制する。


泉を模した噴水に突然前かがみ倒れたポリーナ。

周りが悲鳴を上げる中、そのまましばらくぷかぷかと浮き、意識は1分ほど消失していた。


ポリーナは小さなくしゃみをし、ようやく自分が全身びしょ濡れになっていることに気づいた。



すぐに助け起こしたアレクサンドルもポリーナ同様、頭のてっぺんから爪先までぐっしょりと濡れている。



「サーシャが助けてくれたの?」

「はい。腰の高さまで水もありましたので、危険でした」


冷静に答え、彼は顔色一つ変えずに濡れて顔に顔にかかる髪を、神官達が持ってきてタオルで拭っている。

水を含んで重くなった上着を脱ぎ、そのまま絞る。14歳特有のまだ完全に成熟仕切っていないが、ほどよく筋肉のついた身体が濡れた服からも分かる。


ほのかな色気のただよう濡れ髪姿に、救出劇を見ていた他の参拝客の中で彼の年に近い10代とおぼしき女の子が、何人もぽーっと頬を赤くして見とれている。


いや、年が離れた年上の女性も彼の今後の成長に期待するようなまなざしだ。


ポリーナは、改めてアレクサンドルの容姿は類を見ないに際立っていることを意識した。


しかし、容姿だけではなく。淡々として見える冷静な立ち振る舞いもまた、魅力的だった。


この神殿に来る前も、周りに危険がないか好き勝手にしていた自分と兄の周りを常に目を配っていたし、ずっと肩を抱いて守って歩いてくれていた。



(サーシャって・・・きっと、私が王女じゃなかったら、出会っていない人。もしかしたら、遠くで憧れて見ていたような人だったかも)


14歳で国のエリート騎士団の一員であり、彼は大人の世界にもう生きている。


「ありがとう・・・サーシャ。やっぱり騎士様なんだね」

「礼には及びません。むしろ、俺がもっとそばで危険がないようにみているべきでした。なにがあってこの中に入ってしまったのですか?」


滑り落ち、溺れて意識を失ったのだろうか?


アレクサンドルが、怪訝な顔で原因を確認する。


その質問に、ミハイルも「間抜けなやつだな」と横やりを入れた。



「おおかた、かごに入れた護符に夢中で落ちたんだろ?」


「ひどい!そんなお間抜けじゃないんだから!」


ぷくっと頬を膨らませると、兄が落ちていた護符を全て回収してポリーナに渡してきた。

入水したときに光っていた護符は、今はもう何も発光していない。

ただの金属として鈍い光をほのかに放つだけであった。


「じゃあ、なんで落ちた?意識まで失ったんだ。きちんと説明できないと、こいつが罰をうけることになるぞ」

「えええ!?」

「・・・たしかに、俺の監督不行き届きではありますから」

「最悪、騎士の身分を剥奪・・・」


恐ろしいことを淡々と言う兄に「いやああああああ!!」と思わず絶叫した。


単純なポリーが絶叫し、ニヤリと兄が意地悪に笑った。


「いやぁ!サーシャはずっと私のそばに居る騎士様になってもらうのぉぉ!」

「第一騎士団の騎士は王宮付きだが、王室の警護だけが任務ではない。こいつは、父上の命令で一時的にお前のお守りをしているだけだ」

「そうなのぉ!?」

「そうだ。基本的には、戦場で獰猛な戦闘を繰り広げる騎士集団だ。お前、指揮官希望らしいな?」

「・・・一応適正的には、そうなります。現在は、騎士団長付きの雑用もやらせていただいておりますので」

「ほらな?そんなエリートをお前ごときの失態で失脚させるのか?国の損害だ」


(言っていることは間違っていないが、そこまで意地悪をかさねなくていいのでは・・・?)


原因究明を勧めたいのか、単に妹をいじめてかわいがりたいのか・・・

アレクサンドルはミハイルの意地悪にあきれた。



ポリーナは観念したようにこう言った。


「あのね!護符が光ったの!それで、気がついたらみんな居なくなってて!あとね、青い目と緑の目がでてきて、キスして私の口に何か入れたの」


必死にさけぶと、青い目のアレクサンドルと緑の目の兄を見て「そっくりだわ!」と付け加える。


ざわつく周りの人間達が青ざめていく。


「口に・・・何か、入れた?」


おかしな事ばかり言うポリーナに、アレクサンドルは理解しがたいように顔をゆがめている。

恐ろしい化け物に何か植え付けられたようなイメージが、頭を占める。

隣で同じようにひきつる顔の兄は、妹が溺れたせいで見たおかしな幻想であると瞬時に脳内で処理する。


「お前・・・」

「それで、気がついたら意識を失っちゃったの」

「…とうとう頭がおかしくなったらしいな。もう帰って寝ろ」


こんな話は、父王に報告できるはずがない。

頭を抱える兄の仕草に、ポリーナは正直に自分の体験を語っただけであるため「え?」と首をかしげた。


「ええ!?お兄様が正直に話せって・・・!」

「もういい。馬車を拾って早急に帰るぞ。アレクサンドル!お前も来い。そのまま濡れて帰ったら風邪をひく」

「お兄様!私、嘘なんてついてないの!だから、あれはきっと女神様が何か私にしてくれたんだわ!」

「そうか、そうか。お前に簡単にキスする男なんてこの世にはそうそういないから、そうだろうな」


(適当に流した…)



ミハイルは笑いながら妹をいさめ、内心うんざりしているようだった。




そう。あり得るはずがない。


ポリーナを2人で奪い合ってキスすることなど、絶対にあり得ない。


あり得るはずがない。



ミハイルはその時は本気でそう思い、その後思い出すことすらなかった。



例え、自分がただの種馬として王室で育てられていたとしても



そう簡単にポリーナを欲して、運命を受け入れる気などないのだから。






ミハイルの運命は、割と悲観的に受け止めいるため栄光に満ちたアレクサンドルには密かに嫉妬しています。


そのあたりはおいおい書けたらと思います。


読んでいただきありがとうございました!

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