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女神の護符  作者: のはな
第二章
21/83

5.王冠を欲しがる男、王太子ミハイルとイーゴリ

模擬戦から、早一ヶ月が経っていた。

季節は移ろい、秋は終わりを告げて徐々に冬へと空気は澄んでいく。


ケンジが王国へ来て、早2年半経っていた。

木々は赤く燃えた葉の色に変え、すでに一部を木を残して落ちている。


あと一ヶ月半もすれば、年も変わる。


王国は、諸国との休戦の間も騎士たちに休ませる事なくその腕を磨かせていた。

模擬戦により、国民の期待は予想以上に高まっていた。


周囲を列強諸国に囲まれるこの国は、何十年も独立を保てていた。


それはなぜか?


答えは一つ。

他の国に蹂躙されなかったのは、ひとえにたゆまぬ訓練と誇り高き騎士たちがいるためである。


王都を護る2つの騎士団。


最強にて王宮を護る第一騎士団。

同じく第一騎士団に何ら実力の引けを取らぬ、第二騎士団。


この二強騎士団を筆頭に、王国には東西南北を拠点に七つの騎士団が存在している。


突出した実力を誇る第一、二騎士団を除けば、その強さに優劣はそこまでない。


各々の騎士団には納める地区の特殊に合わせた力があり、強靭な力で王国の護りを堅くしている。



そして、それは…

いつでも、大掛かりな戦争を王国が始められるということでもあった。


騎士団を国民が誇りに思うと同時に、そこにはいつ大戦へと突き進んでも歓迎するような雰囲気が、確かにあった。


それを、危険と思うか。それとも、騎士の誇りと思い…血をたぎらせて喜び進むか。



危うくも騎士たちの強さに酔いしれる民の愚かさに、虎視眈々とこれを好機と伺う者がいる。



王太子、ミハイル。



現国王の次に控える、美しき王位継承者であった。


彼は、国民の支持が欲しいと渇望している。


民衆を熱狂の渦に巻き込み、戦争へと駆り立てることでその支持を集める。


朗々と歌うように演説した、イーゴリのあの熱。

人を操る天才と証明した、模擬戦での扇動。

敗者を勝者にすらすり替えて魅せる、大胆不敵な表現。


それを見た瞬間から、渇望した。



(あの男は…俺を、王にする男だ…!)



王太子ミハイルは戦争をし、実力で王になるしか生き残る道はなかった。


ヘビの巣食う王宮で、己も蛇となり知略を練らなければ死しか残らない。


現国王の血など継がない己は ーー…!!


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