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女神の護符  作者: のはな
第一章
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9.陣形訓練〜模擬戦への仕上げ〜


模擬戦まで残り2日となった。

そろそろ仕上げなくて、ならない。


イーゴリの訓練の指揮は熱を帯び、その日の午後に一つ仕掛けることにした。



「いいかお前らっ全力で来い!!逃げたら望み通り俺の手で殺してやる!!」


陣形訓練が始まる。


兜の奥で野生じみた眼光を光らせるイーゴリは、あえて荒々しく馬を操った。


陣を敷いた騎士団の最先頭に立ち、荒い息を吐く気の強い愛馬を手綱と脚で制する。


合図は送らない。冷たい目で、一人ひとりの動きを観察する。


ケンジは馬を上手く制御できない騎士を静かに記録した。


ジリジリと待たされる馬たちは前後に跳ね、騎士は振り落とされそうになった。

ただ整列するだけの訓練だ。

沈黙を守るイーゴリに、騎士たちは必死に馬を制し、号令を待った。


ようやく整列が整うと、団長は歯を見せて笑った。日に焼けた肌が似合う快活な笑みに、金を帯びた目が光る。


「よぉし、よくやった!褒美に、普段は美しい貴婦人を乗りこなしているオレから最高の話をしてやろう!」


笑いが立ち込める中、さらに意地悪に続ける。


「俺たち第二騎士団が第一騎士団に何と言われているか知っているか!?素晴らしい賛辞だ。最高の控えの騎士団…だそうだ!」


誇り高い騎士たちは反応を隠せず、空気がピリつく。

馬のいななきが響き、興奮が伝わってくるのをイーゴリは察知し、笑いながら続けた。


「だがなっ俺がこの騎士団に来てから、戦場で負けたことは一度もない!奴らは追われる立場に胡座をかいているだけだ!」


手を振り上げ、大げさな身振りで部下達の視線を一気に集める。


「控えだぞ、控えだ!盛栄は第一騎士団と言わんばかりの賛辞だ。悔しくはないのか!?」


すると一人、また一人と声が上がる。


「ふざけんじゃねぇぞ!」

「俺たちのほうが出陣多いんだ!」

「宮廷仕えの玉無し野郎共!」


ケンジは、第一と第二がライバル関係であることを思い出す。

そして、花形精鋭の第一騎士団が整然と軍事パレードを行う姿を脳裏に浮かべた。


指揮するのは団長アレクサンドル・モーリャ。英雄の再来と謳われ、冷徹な統制で戦場を制する絶世の美男子だ。


二人の間には強烈なライバル心が芽生えており、常に火花が散らされている。



「そうか!悔しいか!?ならば証明しろ!お前たちの力をここでみせてみろ!ーーー構えろ!」


騎士達は統制の取れた動きで、一斉に槍鉾をかまえた。


イーゴリは手を高く掲げ、真っ直ぐ伸ばした腕を勢いよく振り下ろす。



「突撃!!」



イーゴリは叫ぶ。


騎士たちと共に、殺気に満ちた目で前へ躍り出た。

そして、彼らを率いた。

騎士たちはイーゴリに続く。

一斉に馬を駆り、整列した陣で前進する。

雄々しい掛け声がかさなり、蹄で大地がえぐられる音と馬のいななきが戦場のように響いた。


そのまま矢のように美しい布陣で、大地を駆ける。

蹄が砂を蹴り上げ、巻き上がる砂塵が陽光に赤く染まる。


馬の呼吸が荒く響き、蹄の轟音が大地を震わせるたび、騎士たちの鎧がぶつかり合う金属音と共鳴した。

旗が風になびき、隊列の動きに合わせて翻る。遠くから見ると、整然とした黒と銀の影が波のように揺れ、風に舞う砂と土埃のカーテンの向こうに、雄々しい騎士たちの姿が浮かぶ。


イーゴリの指示で副官が合図の笛を吹いた。


左右に変形し、前後に回り込み、隊列を整え直すたびに、騎士たちは無言の呼吸を合わせ、まるで生き物のように一体となって走る。

その迫力は、陣形訓練という名の競技を超え、戦場さながらの緊張感を帯びていた。


第一騎士団にも見劣りしない統制の美しさに、イーゴリは風を受けながら胸を高鳴らせる。


砂塵の向こう、騎士たちの掛け声と馬の嘶きがひとつに重なり、どこまでも駆け抜けていけるような感覚に包まれた。


「そうだっ全力をだせっ!お前らはこの国最強の騎士団だ!!」


イーゴリの声が砂煙を突き抜け、隊列のすべてに届いた。


ケンジは静かに息を飲み、砂と風に混じった騎士たちの熱気を感じ取った。


「……恐ろしいくらい強い……」


第二騎士団の野心と気概が、この陣形訓練の一瞬に、鮮烈に伝わった。



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