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4話 アリシアが作った手作りのお守りを、ボクはゴミだとは思わなかった

商業通りの片隅、リュカの声が静かに響いた。


「……ボクには、親に良い印象が無いからよく分からないが、

 アリシアの熱意の強さには感服した。対価はもらうが、帰りの護衛もしよう」


その言葉に、アリシアは一瞬、瞳を見開く。

その頬が、うっすらと赤く染まっていった。


「幸い、このリュカ=エルフェンは金も強さも持っていて、余裕がある。

 ボクの勝利の証として、何か払える物はないか?

 アリシアが価値を見出していて、ボクが価値を見出すものなら、何でもいい」


沈黙。

少女はほんの数秒、胸元の布地をぎゅっと握った。


そして、戸惑いながらも、一歩近づいてきた。


「……それなら――わたしの、髪……を、どうですか?」


そう言って、アリシアは髪留めを外し、

柔らかな栗色の髪を、指で少し摘まんでみせた。


「村の女の子たちの間では、好きな人に髪を贈るのって、……幸運のお守りになるって、言われてて……。

 リュカさんが、守ってくれたから――わたしが“勝ち取った命”の証に、なればって……」


そう言いながら、アリシアがリュカに近づいてきて、髪を見せてくる。

手の中に収まる、栗色の髪束。

まだ微かに、焚き火の香りと、草原の夜風のにおいが残っていた。


その後、

リュカは、アリシアとともに街を後にした。

王都の喧騒を背に、草原の道を、ゆっくりと歩いていく。


その姿は――護衛ではあるが、どこか旅の同行者のようでもあった。


草原の帰路。風は優しく、日暮れの空に黄金色の光が滲んでいた。

王都の影が遠ざかり、再びリュカとアリシアの二人だけの時間が戻ってくる。


結局使わなかったお金で、

アリシアは王都で小さな巾着を買い、

その巾着にアリシアが自分で切った髪束を入れて作った手作りのお守りを、護衛任務の報酬として、

リュカは受け取った。


【アリシア → 勝利の証:アリシアの髪束の入った手作りのお守り(個別アイテム)】を獲得しました。


UIのアイテム鑑定が自動鑑定した。


アリシアの髪束のお守り

:リュカの旅の無事を祈るお守り。

捧げられた想い(感謝と信頼)が宿る。

特定イベント時に効果を発揮する。

―NPC好感度イベントが発生しやすくなる

―魂や感情の記録に敏感な

特定の魔族・精霊に対し「護られた者からの感謝と信頼の証」として認識される。

「リュカは“勝利の証”として、アリシアの髪束が入った手作りのお守りを受け取った。純粋な信頼と想いの結晶」



リュカは、手の中にある、小さな巾着のお守りを見下ろしながら、ぼそりと口を開いた。


「……タダ働きはごめんだから、勝利の証として、何か欲しいとは言ったが――

 まさか髪束を渡されるとは思わなかった」


「そ、それはっ!私の村の流行なんですっ。お守りなんですよ!」


リュカは続けて言った。


「村に戻ったら、綺麗な石でもくれればいいと思ってたんだが…。

…まあ、最初はゴミなんて要らないと思ったが、

貧しい村娘が、自分の精一杯の感謝の気持ちとして渡してきた“旅の無事を祈るお守り”だ。

それなら、護衛の報酬はこれでいいか。

なんか効果のあるアイテムのようだし。

……金持ちの道楽だな。

――リュカ=エルフェンが、強くて金持ちで良かった」


その口調は、どこか淡々としていて――けれど、その裏には小さな“余裕”と“安堵”があった。


アリシアは一瞬ぽかんとした後、ふふっと小さく笑った。


「……なんか、ずるいですよね、リュカさんって。

 でも――そういうところ、ちょっと好きかもです」


その笑顔は、あの草原で泣き叫んでいた少女のものではなかった。

今ここにいるのは、確かに“守られて生き延びた”、新たな一歩を踏み出した村娘だった。


【好感度チェック】:アリシア → ★★★★★(最大値に到達)


今後のルート分岐にて「固定ヒロイン候補」として扱えるようになります

恋愛イベント、同行可能イベント、村の再訪などが可能に


クエストログ

Event Log追記:

「リュカは報酬に対する本音を口にしつつ、アリシアとの距離をさらに縮めた」


陽が傾き、村の輪郭が見えてくる。

木でできた家々、遠くに上がる夕餉の煙が見えた。


そしてその夜――

リュカはアリシアとともに、彼女の故郷である小さな村へたどり着いた。


丘のふもとにある、茅葺きの家々が並ぶ素朴な村――

そこには都市とはまったく異なる“静けさ”があった。

空気は澄み、星は明るく、そして……家の中から聞こえる、微かな咳と、家族の気配。


アリシアが自宅の扉を開けた時、中にいた年老いた村医がこちらを見た。

部屋では、布団にアリシアの両親と思われる男女が横たわっている。

顔色は悪いが、まだ命の灯は消えていない。


「……っ、父さん、母さん……! 薬、持ってきたよ!」


アリシアは震える手で、あの《アランティスの涙》の瓶を差し出した。

村医がそれを受け取り、わずかに目を見開く。


「これは……間違いない、王都の純正品だ。希少なものを、よく……」


彼はすぐに投薬を開始し、静かに脈を診る。

時が流れると、

やがて、弱々しくも、父親がうっすらと目を開いた。


「アリシア……帰って、きたのか……」


「……うん。リュカさんが、助けてくれたの……」


母親の手も、かすかに動いた。


薬は、確かに効いた――!


クエストログ

Event Log追加:

「《アランティスの涙》の効果により、アリシアの両親の命が救われた」


村の評価:リュカ=エルフェン → 「恩人」


この村では今後、無料宿泊・情報提供・素材入手などの特典を得られます


リュカは、

クエストログがアリシアの両親の命を保障したので、

もう大丈夫だろう、と思った。


村での一泊


リュカはその晩、アリシアの家の離れにある小さな客室で休むこととなった。

星が瞬き、どこか懐かしさすら感じる夜だったが、

アリシアがリュカを訪ねてきた。


「……旅の護衛、本当に、ありがとうございました。

 これで、家族はもう……きっと大丈夫です」


アリシアがそっと立ち寄り、毛布を差し出しながら微笑む。


「リュカさんの旅の無事を、祈ってます。

 ――いつか、また……きっと」


その言葉には、“いつか再会する約束”のような響きがあった。

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