2話 報酬なしじゃ基本的に助けない。だから護衛するなら“対価”を払ってもらう
歩きながら、リュカはふと視線を隣に向けた。
静かな草原道を進む足音だけが、風に混じって響いていた。
「……その病気だという母親と父親は、街で買った薬で治りそうなのか?」
リュカの問いは淡々としていた。だが、その言葉には確かな“意志”があった。
見下すでも、試すでもない。――ただ、事実を知るために。
アリシアは少し驚いたように顔を上げた。
そしてすぐに、曇った表情で答える。
「……うん……その……たぶん。ちゃんとした薬があれば、って……」
「村の薬師さんにはもうできることがないって言われて、王都の《旅のたしなみ堂》っていう有名なお店で、“アランティスの涙”っていう薬草の抽出薬を買えたら、きっと――って……」
その名前は、かつてのリュカ――
プレイヤーだったボクにも、どこかで聞いた記憶があった。
【自動記憶照合:UIスキル「アイテム知識」発動】
▶ アランティスの涙
等級:B(高級) 価格:約12000G/瓶
効果:中毒性の病、高熱を伴う内臓疾患に高い効果あり
備考:流通量が少なく、バザーか限られた店でのみ入手可能
アリシアは続ける。
「……でも、そのお店の場所も分からないし、道だって……。それでも、行くしかなかったの……家族を助けたいから……」
彼女の声は小さかったが、必死だった。
“この旅を、一人で続けていたら絶対にたどり着けなかった”――そんな未来が、透けて見えた。
リュカの持つ能力であるゲームのUIのクエストログが起動した。
クエストログ
Event Log更新: 「アリシアの目的は、王都の『旅のたしなみ堂』で“アランティスの涙”を手に入れることと判明」
Sub-Objective追加:
王都アーレンの《旅のたしなみ堂》を訪れる
アランティスの涙(薬草抽出薬)を入手する
アリシアの瞳が、再びリュカを見つめる。
「……リュカさんなら、街のこと、きっと詳しいですよね……?」
リュカは、真っ直ぐにアリシアの問いに答える。
「王都アーレンには、かつて詳しかった。……だけど、今のアーレンがどうなっているかは分からない」
リュカはこの「リュカ=エルフェン」の身体になってから、
なぜかこの世界が
自分がゲームでMMORPG『ホーリーランド・ストーリー』をプレイしていた時より300年後の未来だということが分かっていた。
そのため、こう答えた。
「……そう、なんですね……」
アリシアは小さく頷いた後、ほっとしたように微笑んだ。
それは、リュカの言葉が嘘ではないと感じたからだろう。
「でも……それでも、すごく心強いです。わたし一人じゃ、ぜったいに街まで行けなかったから……」
その笑顔には、感謝と、少しだけ、信頼の色が浮かんでいた。
【好感度チェック】:アリシア → ★★★★
「正直さと頼もしさが信頼を深めた」
クエストログ
Event Log更新:
「リュカはアリシアに、王都アーレンへの知識が過去のものであることを正直に伝えた」
Objectiveは維持:
アリシアを王都アーレンまで護衛する
薬を探す(アランティスの涙)
空は次第にオレンジ色に染まり、草原を柔らかな陰影が包みはじめる。
リュカは空の色を見て、日が暮れる前に野営の判断を下した。
――この身体なら、夜の魔物など脅威ではない。
だが、護衛対象の少女アリシアがいる。
彼女を安全に休ませるには、ここが良いだろう。
野営のやり方はこのゲーム時代は冒険者だった
「リュカ=エルフェン」の身体と記憶が知っていた。
草原の中でも風の少ないくぼ地を選び、手際よく木の枝と枯れ草で小さな風除けを作る。
【アイテムインベントリ】から火打石を取り出し、火を起こそうとすると、簡単に火が灯った。
アリシアが目を丸くして見ている。
「……すごい……。こんなに慣れてるなんて……リュカさん、本当に……冒険者みたい……!」
その目には、尊敬と安堵、そして少しの憧れが宿っていた。
夜が近づく中、リュカたちの周囲だけが、小さな灯りとぬくもりに包まれていた。
クエストログ
Event Log追加:
「リュカは手際よく野営を整え、アリシアに安心感を与えた」
Date更新:
Date: 第1日目 夜(晴れ)
・Location: イルセの草原・東街道沿い野営地
・Objective:
- 翌朝、王都アーレンを目指して出発する
- アリシアの体力を回復させる(完了)
草原の夜は静かだった。
焚き火の揺らめく炎を見つめながら、
リュカ=エルフェンは、自らの内側に沈んでいく。
記憶の奥底、プレイヤーだった頃の記録と、今この身体が持つ力を――改めて確認する。
【簡易ステータス鑑定】
名前:リュカ=エルフェン
Lv:200
職業:ゴッドブレイド(剣士系の最上位職)
性別:男
年齢:17歳
種族:人間(転生者)
信仰:知能がある物理法則(真我)
(思想:nl² = ne²)
装備アイテム:
-武器:神剣アールマティ
(攻撃+300。万能属性。神・竜特攻)
-防具:ディザスターアーマー
(物防+250。魔防+100。
全状態異常&即死&時間停止無効。
魔法反射+15%)
所属:なし
属性:転生者
美貌ランク:A++(銀上位。実質S相当の絶世の美少年)
関係性:あなた自身
好感度:∞(観測不可能)
信頼傾向:自己絶対/理念主義
特記事項:
・神話級超人
【スキル・職業 再確認】
職業:ゴッドブレイド(伝説職:剣士系最上位)
剣士系の究極進化形。
攻防、速度、気配制御すべてが極まった“神殺しの刃”。
世界で1人だけが到達可能である、ゲーム内最上位のジョブである
唯一無二の伝説職の1つ。
特性:万能属性武器適性、あらゆる剣技・補助魔法の習得適性あり
世界設定上、**神話級存在(Lv200)**として分類される
現在のスキル:
神技・終天断
> 神速の抜刀で空間を裂き、前方の敵すべてを一掃する範囲攻撃
> MP50消費、演出的にも“規格外の強さ”を象徴する切り札技
絶対神域
> 一定時間、物理攻撃を完全無効化する光の結界を展開
> MP30消費。守護にも格の誇示にも使える“無敵スキル”
オーバードライブ
> 一時的に全能力を倍加させる自己強化魔法
> MP100消費。使えば“本気の戦闘モード”に突入可能
あなたは、戦闘・護衛・魅せ技・自己強化のすべてを備えた「なろう的万能主人公」です。
焚き火の光に照らされ、アリシアがそっと毛布に包まっている。
その顔は柔らかく、どこか儚い――だが芯のある表情をしていた。
アリシアは、素朴ながらも美しい少女だった。
髪はやや明るめの栗色をしていて、肩までゆるくウェーブしている。
目は澄んだ琥珀色をしていて、
今は汚れた野暮ったい質素な旅装をしているが、
顔立ちは整っており、
汚れているが、洗えば美少女だろう、
とリュカは思った。
【ヒロイン開花フラグ】:進行中
「命を救われ、信頼を得て、護衛されて、夜を共に過ごした」
条件が整えば、恋愛/ハーレムルートへ分岐可能なステータス
――炎の揺らめきが静寂を彩る中、リュカはゆっくりと立ち上がった。
かつて、ただの“プレイヤー”だった時代には得られなかった、
肉体として宿ったスキルの感触。それは、今や自由に――そして、無限に――鍛え上げることができる。
【スキル鍛錬:ゴッドブレイドの訓練メニュー】(夜間限定)
これ以上は通常の手段ではレベルは上がりませんが、
レベル200という神話級の器であっても、なお進化は可能です。
鍛えることで、新たなスキルやスキル派生が解放されていきます。
リュカは、新たなスキルを習得することにした。
【絶対神域】を戦術型スキルに進化させ
【絶対神域】を残したまま新規スキル習得
解放条件:護衛・防衛判定成功/夜間静思
解放予定スキル:
聖域・護刻ノ環
→ 指定範囲(半径10m以内)に結界を張り、味方を同時に保護。被ダメージを0にし、状態異常も無効化。消費MP60
→ 防衛イベント時に「守った実感」が強く残るスキル。ヒロイン好感度ボーナスが上がりやすくなる
リュカは新規スキル【聖域・護刻ノ環】を習得した。
夜空には星が浮かび、草原の上でひときわ煌めく――
リュカ=エルフェン。
この世界で、誰よりも確かに“強くなれる”存在。
リュカは焚き火のそばで、静かに剣を抱え、夜の気配を見つめていた。
眠気は一切なかった。
プレイヤーだった頃は、ログアウト中に仲間と交代で見張りをしていたが――
今のボクは、この身体になってから、一度も「眠気」を感じていない。
どうやら、この伝説職:ゴッドブレイドには、もはや“睡眠”という概念すら必要ないらしい。
一部の生理現象が無効化されているようで、
疲労は蓄積しないし、
感覚は常に鋭敏、
眠らなくても思考が明晰だ。
集中力も極限で維持されている。
夜の静寂の中、草のざわめきひとつにも反応できる。
野生の気配が近づくたび、リュカはそっと剣に手を添え、そして――邪魔な敵を屠った。
その背中にアリシアの寝息が静かに聞こえていた。
見返り:
勝利の証、報酬、メリット(利益)、良い結果、実績、感謝(信頼)の証、承認欲求の充足、
心の拠り所(見返りがなければ、自分が崩れてしまうから)など
よく分からない。
整理中。
見返りを求める主人公を描きたい