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7・商売しながら進むのだ

 その後もフェーレは途中の街によっては、小銭を稼いだ。

 必要なものの値切り交渉はもとより、荷物の中にはたっぷりとヘルゼン国の物産品を詰め込んでおり、それらを売り歩いては、金銭に変えた。

 驚くべきはその交渉能力と、相場を見抜く能力だ。


「どうしてそう、皆が納得する相場を出せる?」


 インドゥアーグの手前の街で男が尋ねた。


「卵と花よ」

「卵と花?なぜ?」

「卵はその地域のレベルを計るのにちょうどいいわ。なぜなら、ひよこ数匹で自宅での利益を生むし、増やせばもっと利益になる。鶏は飼いやすいしなんでも食べる。卵を産まなくなれば肉にもできる。その分、増えれば相場が崩れる。安定した相場ということは、誰の家にも鶏が居て、どこでも商売になっている。ということは、その村は自給率が高いのね。さらに鶏を飼っても狙われないくらいの設備はある」


 ということは、ちょっとした『余裕』が生まれている。

 というのが卵の相場で判るらしい。


「これが過疎の村だったら大変よ。鶏小屋なんて狼どころかイタチにやられておしまい。イタチはどこにでも入り込むし、かといって小屋をしっかり立てるにはお金と技術、体力も必要。だったらと家に入れれば病気の心配もある。どこまでなにを優先できるか」


 成程、軍隊を持つ国が近くにあれば、その分、商売も盛んになるし、狼が近づくことも当然ない。

 あったとしても討伐は難しいものでもない。


「で、何を売って儲けていたんだ?」


 馬一匹、女性一人でまさか売り物を持ってきているなんて気づかなかった。

 しかし、フェーレは割とあちこちでなにかを売りさばいていた。


「見たい?」

「ああ」

「これよ」


 そうして見せたのは、美しい色の糸だった。


「これは、糸?ですか?」

「そうよ。糸といって刺繍用の、頑丈さよりも色の美しさを優先したもの。綺麗でしょう?」


 並べて見せられて、確かにこれは女性ウケがよさそうだと頷く。


「さらにこれはレース。山岳民族に伝わる伝統的な柄を編み込んだもので、なかなか手に入るものでもないの。うちは別だけど」


 成程、いろんな国の交流地点であるヘルゼンであれば、入手もできるだろう。


「糸は軽いし腐りもしない。この辺りの街で、なにが盛んか知ってるでしょ?」

「……農業?」

「は、表向きでしょ?実際は?」


 言いにくいが、この公女は知っている。


「……安価な女郎宿」

「正解。インドゥアーグの下級軍人や、愛人を持ちたい軍人、またはそれ目当てのショーを見せる事が多いわよね?」


 だったら必要なのは、派手な衣装や美しい飾り物。


「糸なら手間はかかるけど、持っている衣装を派手にもできるし、普通の家庭でも夫に内緒で買う事も出来る。隠しやすいしバレにくい。男がいちいち、裁縫箱の中の糸の色なんか覚えているわけもないし」

「確かにそうだ」

「しかも買うときはひとつじゃなく複数よ。いまはこれしか在庫がない。そう言えば、思わずたくさん買ってしまうでしょ」


 なんで公女をやっているんだ?むしろ商売人向きでは?

 そう思う男にフェーレは答えた。


「うちの国は小さいのよ。どうやってか生き延びなくちゃなんないの」


 この地域が安全で、豊かになってきたのはここ十年程度で、それはでは内乱や内戦、他国の侵略に怯えるのが日常だった。

 その頃、まだこの公女はかなり幼いはずだが、やはり国を作る為に必死に考えてきたのだろうか。


「で、儲かったのか?」

「おかげ様でね。インドゥアーグのお金なら安く売ってあげたから、かなり喜ばれたわ」

 そういってフェーレはニッと笑った。


「さて、明日にはインドゥアーグへ到着するだろうから今夜の宿を適当に探……」


 そういった所で、突然、背後からどんっと誰かが男にぶつかった。


「っ、」


 なにを、と男が言いかけたその時だ。


「―――――アスト!!!」


 え、と男が驚くと、男にぶつかってきたのは、やたら大柄な、ベールを頭からかぶった女だった。


 え、誰?とフェーレが思い切り驚いていると、往来にも関わらず、その大柄の女は男に思い切りキスをしていた。

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