6・買ったらおっさんのモモをください
「そこまで言うなら後悔すんなよ嬢ちゃん。お前が負けたら脱いでもらおうか」
「じゃああなたが負けたら当然脱ぐわよね?」
ん?と男どもは首を傾げた。
「ははっ、こりゃいい。いいとも、なんぼでも脱いでやろうじゃねえかよ!」
痛くもかゆくもない、と笑うおっさんに向かってフェーレは言った。
「連れの男はアンタみたいな男が好みなのよ。良かったわ、いい体してそうで、きっと素敵なお尻なんでしょうね」
なにを言っているんだ!と男は驚いたが、パブの男どもの視線が一気に集まるのを男は理解した。
ごんと足をフェーレに蹴られ、男は何度も頷いた。
「好みです」
「よく言ったわ」
ふふんとふんぞり返るフェーレ、え、俺ってケツ狙われてんの?と急に焦り出すおじさん。
面白そうにのぞき込む観客。
フェーレはテーブルに腰掛けて微笑んだ。
「さあ、始めよう!わたしの連れが、我慢できなくなる前に!」
大きな声で言うフェーレに、パブはなんともいえない複雑な空気になってしまった。
そしてカード勝負はあっという間に片が付いた。
フェーレの圧勝だった。
いかさまだ!とおっさんは怒鳴ったが、そうだとしても誰もフェーレのいかさまの証拠を出せず、『じゃあ、もう一勝負しましょ』といって、もう一人、おっさんの味方を引きずり込んだ。
更に圧勝した。
「じゃ、掛け金は当然頂くとして、部屋はとってあるから、さっさとケツ出してもらいましょうか」
「まままままま、待て待て待て!!!!!」
「なんでよ。約束したじゃないの」
「脱ぐとはいったけど、そこまでは言ってない?」
「可愛い事言わないで頂戴。別に減るもんじゃないんならいいでしょ」
「良くないですごめんなさい!どうすれば!いいですか!!!!」
必死に謝るおっさんに、「別に謝らなくてもいいから脱げ」とフェーレはとんでもない事を言う。
「いや、脱いでもいいですけど部屋だけは」
「あらそう。いくら?」
「へ?」
「あなたの貞操はおいくらかしら?って聞いてるの」
「いやあの」
「答えは?」
フェーレは男のジャケットを引っ張りながら笑顔で尋ねた。
おっさんは項垂れ、「有り金出す……」としおしおとなったのだった。
しっかりお金は頂戴し、奪われかえす用心をしながらも、フェーレはベッドの上で金貨を数えていた。
「おまえさん、よく勝てたなあ」
男が感心すると「わりと得意」とフェーレは答えた。
「私みたいな小娘だと大抵ああいって脅そうとするんだけど、あれ自体が茶番ね。ビビらせて金奪って、うまくいけば馬も金品もって所でしょうけど、まさか自分が軍人に『そういう意味』で狙われてるなんて考えた事もないでしょ?すぐビビんのよね」
ほおお、とフェーレは金貨を見て感心した。
「ありがたいわー、インドゥアーグの金貨じゃないの。しかもちゃんと本物、純度が高いヤツね」
「どうしてわかる」
「年代が彫ってあるし、重さでわかるわ」
ははっと一枚コインを投げて来た。
ぱしっと男は受け止めた。
「今日の分け前よ。あんたがいてくれて説得力が出たわ」
「そりゃどうも……」
男をそういう意味で脅す役にあてられて、役に立ったと言われても嬉しくもなんともないが。
それよりも、男は気づいた。
「どうしてわたしが軍人だと?」
「あら、言ってた?うっかりだわ」
ははは、とフェーレは笑った。
「見慣れてんのよ。気にしないで」
実際にフェーレは軍人と言う生き物をよく知っていた。
体つきや動きから見て、そうだな、と判っただけだ。
「心配しなくても素性を探りはしないわよ。インドゥアーグまでよろしくね」
そういってフェーレはどすんとベッドに横になった。
気が付くとすでに寝息を立てていて、騒がしい人だな、と男は思ったのだった。
(でもおっさんのケツをどうにかしろって言われなくて良かった)
ちょっとほっとした男だった。
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