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5・しっかりつかまれ!

 そんじょそこいらの公女とは違うと聞いてはいたが、これ、公女って言って良いレベルなのか?と男は思った。


 真夜中、東屋で横になる公女が寝静まった隙を狙って、こっそりと男は馬に近づいた。

 目的は勿論、通行手形である。

 そーっと近づくも、寝ていたはずの馬が、かっと目を見開いた。

 黙ったまま足で土をかく。


(あ、これひょっとしなくても脅しか)


 あの馬は賢い。

 もしこれ以上、無理に奪えば主人を起こすだろうし、もし手形を奪って逃げたとしても、馬ではすぐに追いつかれる。


(まあ、いいか)


 目的地が同じなら、無理に手形を奪う必要もない。

 それになにかあれば、立場と言うものは使えるはず。

 はあ、とため息をつき、再び横になった。

 公女はぐうぐう眠っていたので、諦めて男も横になった。



 夜明けが近づき、体が震えた。


「起きろ。向かうぞ」


 体をゆすられて、はっと男は起き上った。


「え?え?」

「寝ぼけるな。出る時間になるぞ。置いてかれたいか」

「いえ!」


 がばっと男は起き上ると、荷物を整えた。


「荷物は馬に預けて良い。こいつは嫌になったらすぐに足を止めるからな」

「はぁ……」


 馬をちらっと見ると、ものすごく嫌そうな顔をしている。


「えーと、すみませんがお世話になります」


 そういって馬に深々と頭を下げると、仕方ねえな、みたいに顔をしゃくられた。

 荷物を預け、馬へと乗った。


「フィンタンは気分で走る。振り落とされないように気をつけろ」


 え?と尋ねる前に、馬は走り出した。



 見事に乗り手の事をなにも考えず、どかどかと走り出し、ケツが酷い目にあった。

 ところが、やたら早いのである。多分、乗り手を信用していると言えば聞こえはいいが、かまわず突っ込む。


「うわああああああ、ぜっ前方に」

「見えるならかがめ」

「ひぃっ」


 言われた通り、思い切りかがみこんだから良かったが、そうでなければ枝に激突だ。


「フィンタン、ちょっとだけ手加減してやれ。町についたらこいつが奢ってくれるから」


 は?そんなん聞いてないぞ!とツッコミを入れそうになるが、馬はヒヒンといななくと、はりきって走り出したのだった。



 馬に乗って走らせながら、途中の休憩をはさみ、早めに宿に到着した。


「案外、馬に無茶はさせないんだな」

「当たり前だろう。フィンタンに協力して貰っているんだからな」


 銭ゲバっぽいのに、宿は馬にとって一番良い環境の場所を選ぶ当たり、馬とは仲が良いのだろう。


「お前さんもフィンタンに負担がかからないように乗っかってくれたのは感謝してる」


 言われて男はドキッとした。


「さて、じゃあ飯を食うついでにゲームでもするか」

「ゲームとは?」

「決まってる。カードよ、カード」



 確かにこんな田舎、楽しみと言えば酒か賭博にはなるのだろうけれど。

 パブでもある宿の中、賭けカードで盛り上がるテーブルで、フェーレは尋ねた。


「旅人だけど入れる?」


 すると髭面のおっさんが、「はっ」と馬鹿にして笑う。


「お嬢ちゃん、これはカード占いじゃあないんだぜ」

「あらそうなの。てっきり『あなたがぼろ負けする』っていう結果が出ているように見えたのだけど」


 すると髭のおっさんが、立ち上がった。


「ふざけんなよ。ここは女子供の遊びばじゃないんだぜ」

「あら、仲良くしましょうよ。それとも女子供に負けるのが怖いのかしら」


 なんで煽るんだよ、と思ったが、男は仕方なくフェーレの傍に立つ。

 一応は威嚇になるかと思ったが、あまり効果はなかったらしい。


「なにが負けるだ。カードのルールは判るのかよ」

「判るわよ。あなたが負けるルールは特に」


 フェーレは更に男を煽った。

 男は顔を真っ赤にして震えていた。

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