止まれない猫
数年前の春の日のことでした。
はじめて飼ったキジトラの猫はオスでして、いつも元気いっぱいでした。
一階の家の構造ですが、ウチは一戸建てで、リビングキッチンがあります。
なのでリビングキッチンの廊下に続くドアを開けますと、ちょっとした距離ができるのです。
冷蔵庫から真っ直ぐに、玄関の壁へ道ができます。
その間に障害物はないので、猫はしょっちゅう走って遊んでいました。
遊び方は、走って蹴って、また走って蹴るというものです。
まずはスタートは廊下です。
真っ直ぐ走り、玄関の壁を蹴ってUターン。
リビングキッチンに入り、冷蔵庫の扉を蹴ってまたUターン。
そしてまた、走って玄関の壁を蹴ってUターン…というのをずっと続けていました。
ようは水泳のアレですね。
往復する競技で、Uターンする時は壁を蹴るというヤツですよ。
猫はどうやらその行動が気に入ったらしく、速さはどんどん加速していきました。
ところが…調子付きすぎたんでしょうね。
だんだんと自分では制御できない速さになっていきました。
やがて猫は、とんでもない失敗を起こしました。
止まれなくなり、速さが最高潮に達した瞬間の出来事でした。
冷蔵庫の扉を蹴りUターンした猫は、そのまま勢い良く玄関の壁に激突したのです!
…ようはジャンプする瞬間がズレてしまったんですね。
そりゃもう思いっきり、『びったーんっ!』と音がしましたよ。
猫は加速していましたので、その勢いのまま激突しちゃったんですもん。
猫も激突する瞬間、ヤバイなと悟ったのでしょうが、全ては遅かったのです…。
戻って来た猫は、フラフラしていました。
その様子を見て、リビングのドアを開けっぱなしにするのは止めようと思いました。
【終わり】