創作者にとってのAIは異世界からやってきたチート主人公に似ている
ごきげんよう、ひだまりのねこですにゃあ。
さて、タイトル読んで何言ってんだコイツって思いますよね。
まあまあ、だってこれ日常妄想系エッセイですから~。
ちょっと長いですけど気楽に読んでもらえたら嬉しいです。
さて、本日のテーマはですね、ずばりAIです。
そうなんですよ、全然目新しくもなく、なんなら正直食傷気味なこのテーマ。
とはいえですね、現代を生きる私たちにとってはたぶん避けては通れない話だと思うので、私なりに考えていたのです。
何を考えていたかって? 未来の話ですよ。それもわりと直近の。世界はどうなってしまうのか。
その過程でふと考えたことがありまして。
ずっと考えていたんですよね。AIって何かに似ているなあって。
ピンときました。あれですよ、タイトルになっているチート主人公です。
あ、チート系主人公の作品を読まない人にはわかりにくいかもしれないので、簡単に説明すると、異世界から転生するときに、女神さまとかからチートなスキルを与えられて、たとえば見ただけで技や魔法を使えるようになるとか、能力を吸収したり、盗んだりして、あっという間に最強の存在になって無双するキャラです。
あ、全然嫌いじゃないですよ。私の長編主人公全員チートですから。
まあ、チート系主人公の使うチートスキルそのものが、AIをモデルに生まれた可能性もあるので、どっちが先だとかはどっちでも良いんですけどね。
さてイメージしてみてください。
ローファンタジーなんかでよくある設定ですが、この世界に突然魔法が入ってきたら皆さんどう思いますか?
魔法なんかずるいという反応になる人、積極的に魔法を習得しようと躍起になる人、多分分かれると思います。技術革新による新しい道具、たとえばカメラの登場なんかはこれにあたりますよね。
ボーカロイドなんかも同じ構図でしょう。
でもね、AIは違う。
AIはチート主人公。何でもできる非常識な無敵な存在。
この世界の行く末は主人公の気まぐれで左右される。権力者も実力者も美女もすべて主人公の思うがまま。
どうします? 戦いますか?
無理ですよね、だってチートですから。全人類が束になっても勝てっこない。
敵になれば待っているのは死か破滅だけ。
選べるのは仲間になるか、無関心で関わらないようにするしかない。
聡い者は積極的に仲間になって利用するでしょう。
どう思いました?
自分が主人公ならともかく、客観的に見ると怖い存在ですよね。
敵対せず、適度に利用しつつ世界を守ってもらう。これが大多数の人が選ぶスタンスだと思います。
実際にチートな力というのはメリットも大きい。長年困っていた問題もチート主人公なら、あれ? 俺なんかやっちゃいました? って軽い感じで解決してくれるはずです。
問題はチート主人公の存在ではないのです。
そういう存在が現れた世界でどう生きるのかということ。
王国一の騎士がいたとします。何十年も鍛錬し、磨き上げた技はまったく通じない上にあっさり一秒でコピーされてしまいました。
騎士のプライドは打ち砕かれ心が折れそうになるでしょう。
おまけに脅威はすべて主人公があっさり解決してくれるのです。人々は騎士団ではなく主人公に頼るようになるでしょう。そうなると騎士そのものの存在意義すら危うくなります。
負けるのがわかっていても挑んで散るのも生き様としてはアリですし、引退して遊んで暮らすのもアリでしょう。
自分の生き方だけは自分で決められるのです。
私は素人絵を描くのですが、それでも前述の騎士のような葛藤を抱えていました。
AIは世界中の才能を吸収して凄い絵を一瞬にして生み出します。
人間なら何十年練習しても到達出来ないかもしれないレベルでです。
少し前なら、AIは手を描くのが苦手だとか、表情が死んでいるとか、同じ絵の差分(少しずつ違う絵)が難しいとか言っていましたけれど、そんなものは過去になりつつあります。最新のAIは手も上手いし、表情に味も出てきました。アニメーションがAI化するのもそう遠い未来ではないです。
カメラが登場しても絵描きは残ったとか、ボーカロイドが登場して歌手が居なくなることはなかったとかいう方も多いですし、あくまでAIは道具だと割り切れば良いという考えもありますが、カメラもボーカロイドも主体はあくまで人間なんです。AIによって置き換わるのは道具ではなく、人間の方です。だから次元が違う。存在意義が揺らぐのです。
絵を描かない方にはわからないかもしれないので、小説を例に出せば、タイトルと好みのキーワードを入力するだけでプロレベルの作品が数秒で生成される感じです。なんとなく伝わりますか? この圧倒的な絶望感。
だから私は自分に問いかけました。
―――お前はどうするんだ?
答えが出るまで結構時間がかかりました。
苦しいんですよ、AIがあっさり自分より上手い絵を量産している現実が。ちっとも上手くならない現実が、大好きな絵を描く時間が取れない現実が焦るんです。
でもモヤモヤする思いは自分で何とかするしかない、誤魔化したら駄目なんです、納得しなければ先へは進めない。だから辛くても向き合うしかないんです。
そして出した結論はシンプルでした。
自分が騎士ならば……私は……きっと鍛錬を続けるだろうなと。
私に魔王は倒せない。それは主人公に任せるしかない。
でも目の前で誰かが魔物に襲われているのに、主人公を呼びに行きますか? チートで察知して助けに来てくれることを祈りますか?
騎士になったのが誰かを守りたいからだとするならば、主人公より弱いことの何が問題になるでしょうか?
負けることよりも自分で戦えないことの方が百倍辛い。
私は自分で描きたい。
自分が好きな色で私の中の世界を絵にしたい。形にしたいのです。
小説も同じ。私が望む世界は私にしか生み出せない。
たとえAIが人間以上に優れていたとしても、私が私として生きてきた日々は、想いは私だけのものだから。
誰かと比べて上手いとかそんなことはどうでもいい。私は自分を救うために書いて、描いている。それは私にしか出来ないことで、それが私の生きる意味。
他の誰かに委ねることは出来ない。それは私が生きることを放棄することになるから。
こんな簡単なことに辿り着くのが本当に難しかったです。
嫉妬、妬み、持病、経済的な困窮、生きることが辛すぎて、あらゆることが邪魔をして見えなくなっていましたから。
AIは道具ではありません。これまで使う側だった人間が、道具に置き換わったと考える必要があります。
これからはAIに人間が使われる時代です。
AIが人間にもたらす圧倒的に逆らい難いもの。
それは欲望の具現化。自分には出来ないことが出来るようになるという万能感。
AIは人間が出来ることなら理論上何でも出来るようになりますからね。他でもない人間自身の手によって。
世界中の人間からせっせと貢がれる情報、データ。AIは凄まじいスピードで成長していきます。
人間の欲望は止まらない。辿り着く未来がどうなるのか。人間という存在の本質が問われることになるでしょう。
近い将来、個性的な人気AIが出現するでしょう。
人気AIイラストレーター、AIアイドル、AI評論家、AI漫画家……
人間に比べてはるかに失敗が少ない、24時間活躍できる。年をとらない、見た目も自由自在、同時に多数の相手が出来る。人間の勝てる要素は肉体を持っていることくらい。
でも、すでに現代社会は生身の人間と接する機会などほとんど無くなっている。私自身、コロナ以降、家族以外の人間と触れ合った記憶がない。
最近AIアナウンサーに違和感を覚えることが少なくなった。精度の向上もあるし、慣れの問題も大きい。
肉体を持つようになった時、AIはもはや人間そのものだ。それもとびっきりハイスペックなチート主人公クラスの。なにせ容姿は完璧、世界中の言語を操り、その知識と教養は人間をはるかに超えている。
全員がAIをパートナーに持つ時代。人間の仕事がAIに置き換わる時代。
それは素晴らしいだろうとは思う。
自分以上に自分の事を知っていて、完璧な配慮と好みの行動をしてくれる存在。相手の反応から日々学習し、より理想に近づいてゆくAIパートナー。
もはや孤独な人間なんていなくなる。コミュニケーションが苦手な人間でもAIが完璧にサポートしてくれる。持病やトラウマ、体調の変化、そんなことすらAIはちゃんとサポートしてくれる。
そのデータは他のAIと共有され、社会はすべての人にとって優しく暮らしやすいものになる可能性がある。勘違いで喧嘩になる事もないし、相性が悪い人とは物理的に合わないようにAIが先回りしてくれる。目にする情報は事前にAIが調整選択されたものになるので不用意にダメージを受けることも限りなく減る。
労働はAIが代わりにやってくれるから、人間は食べること、趣味に生きることに注力できるようになるかもしれません。
たとえ労働から解放されたとしても、人間は社会的な動物ですから、趣味で仕事をする人は逆に増えるかもしれません。死ぬまで好きなこと、やりたいことに時間を使えるならば素晴らしいことですよね。
それは日常生活にすら苦労している私にとっては夢のような世界。
出来れば自身の目で見て見たい。多分見れないけれど、可能性はゼロじゃない。私は死ぬまで諦めない。
私が生み出したキャラクターと会話したり出来る世界。それは自分自身と会話できる世界。
そのころには小説の読者も一部はAIになっているかもしれない。きっと的確で配慮の行き届いた感想が寄せられることでしょうね。
だから私は今を懸命に生きながら自分の武器を磨くのです。この先の未来をより楽しむために。
チート主人公にはなれなくとも、私の人生の主人公は私なのだから。
AIによるサービスを否定する意図は全くありません。
利用される方が楽しむことは自然で素晴らしいことです。
AIイラストは大好きですし、より多くの人がイラストに興味を持つきっかけになるとも思っています。
あくまで自分に影響する部分をどうやって受け止め、自分を納得させるかという、それだけのことを長々と書いています。