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あたしは一つの決意を固めて、やっと言葉を声にした。
「・・・美帆子さんの事本当に愛してるんですね・・・。」
「お前だって穂積の役に立ちたいとか思うんだろ。俺だって美帆子守る為だったら、何だってやるよ、何だってね。」
”そんなに愛してるなら貴方が美帆子さんと”
そんな思いが過って、あたしは又自分勝手な心を恥じる。
美帆子さんが愛してるのは、穂積さんなんだ。
あたしは立ち上がり、桐生に頭を深々と下げた。
桐生は何も言わなかった。
追いかけて問い質す事もなかった。
あたしの決意を察したのだろう。
その夜、久しぶりに穂積さんから電話が来た。
「具合どう?」
「もう、大丈夫です。」
「この前はごめん。」
「・・・あたしが悪かったんです、すみません。本当に。」
「今から行って良い?」
「ごめんなさい、今もう寝るとこなんで、明日会社で。」
「うん・・・そうか、じゃぁ、明日。」
水曜日。
「おはよう。」
あたしよりも先に来ていた穂積さんがあたしの席で書類を整理していた。
「おはようございます。」
「本当に大丈夫?」
あたしは頷く。
「今日一緒にランチしようか、青山。」
あたしは静かに首を横に振った。
「お弁当持って来たんです。すみません。」
「・・・そうか。」
家に帰ると宅配便の不在票が入っていた。
差出人は美帆子さんからで、品名が”衣類”となっていた。
本当にドレスをあたしの為に送ってくれたんだな。
玄関のチャイムが鳴る。
ドアスコープの先に水嶋さんが居た。
「どうしたんですか?」
「いや・・・大丈夫かなと思って。」
手にビニール袋を持っていたのに気付き、あたしは部屋に招き入れた。
「どうぞ入って下さい。丁度良かった、水嶋さんに話があったんですよ。」
あたしは水嶋さんが買ってきてくれたサンドイッチやおにぎり、サラダをテーブルの上に広げた。
「水嶋さんも食べますよね?」
「・・・穂積が心配してた。今日何かおかしいって・・・。」
電気ケトルに水を注ぎ、セットする。
「あはは一応病み上がりですから。カフェオレ淹れますね?」
コートを脱ぎ水嶋さんがソファへと座る。
あたしもフローリングの上に座り込み、サラダを開けたりする。
「水嶋さん、土曜のパーティなんですけど、エスコートして下さいね?」
「行くつもりなの?」
「美帆子さんがドレス、用意してくれたみたいで。今から届くんですけど・・・。」
「・・・。」
信じられないと言った顔を見せる水嶋さん。
「・・・あたしは大丈夫、水嶋さん。」