表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/67

-62-

やっぱり・・・。

ソニービルのイタリアンって言えば、此処ですか。

穂積さんも美帆子さんも、こういう所が好きなんだなぁ。

と言うか、やっぱり美帆子さんの趣味って事か。


白いテーブルクロスに、アンティークな創りのスツール。

窓際の席を案内されると、銀座の街を見下ろせた。


「アフタヌーンランチでお願い。」

あたしはメニューを開くことすら出来なかった。

バッグの中に1万円札あったかなぁ。

美帆子さんが笑った。

「可愛い奏ちゃん、ランチ4千円ね。ちょっと高いけど、クオリティは間違いないから。」

ランチで4千円って・・・。

「ネイルとかエステ、サロンも自分への投資でしょ?食事だって同じだと思わない?美味しい物食べて心も満足して、体にも良かったら最高じゃない!」

「・・・そうかも。」

「でしょう?」

テーブルに食事が運ばれてきた頃には、あたしはお金の心配を止めていた。

「奏ちゃんって美味しいって顔して食べるのねぇ。」

「え?あ・・・美味しいんで。」

「あたしも美味しいと思って食べてるけど、そんな風に思いっきり顔には出ないかも。見習おうっと。」

そう言いペンネを口に運び、にこっと笑う。

「あ、あたしもね絶対心掛けてる事あるのよ?”駄目な時でも駄目な顔しない”。仕事でもプライベートでもね。」

「良いですね、それ。駄目な顔したら、本当に駄目になっちゃいますもんね?」

「そう!そうなの、溜め息ついたら幸せが逃げるって言うのと同じ感覚じゃない?!」

「そうかもそうかも!」


前菜からドルチェ迄、目でも楽しませて貰ってお腹も満足、そしてやっぱりプロのサービスにも大感激だった。

お店を出てから、あたしは美帆子さんに4千円を差し出す。

「こんな素敵なお店連れて来て下さって有難うございました。美味しかったです!」

「いえいえ、又一緒にご飯でも食べよう、あたしも楽しかった。じゃぁこのお金は頂いておくね。」


夕方近く迄あたしは美帆子さんと銀座の街を歩き回っていた。

美帆子さん曰く、あたしにピッタリのドレスが無いんだとか。

「奏ちゃん!あたしが責任持ってドレス探しとくから!」

「え、良いですって。」

あたしは慌てて断る。

「自分で綺麗めワンピ探しますから・・・。」

「駄目!女の子はこういう時にもきっちり、お洒落頑張んないと!!あ、ちょっと待って電話だ。」

バッグの中から携帯を取り出す美帆子さん。

「智志からだわ。もしもし?」

あたしは聞いちゃいけない気がして、意味も無く周りを見回した。

「あ、今ね奏ちゃんと銀座で一緒に買い物とかしてたんだけど、智志これから来る?3人でご飯でも食べる?」

聞こえてきた台詞にあたしは、顔の前で手を振った。

”無理です!”

「え?そうなの?薬は飲んだ?じゃぁ今から帰るから、寝てて?うん、うん。じゃぁね。」

薬?寝てて?

美帆子さんが携帯を折り畳むのを確認してからあたしは聞いた。

「穂積さん、具合悪いんですか?」

「うん何か熱っぽいって。じゃぁあたし帰るね?ドレスは金曜迄に届くようにするから必ず!」

美帆子さんは、コートの裾を翻して颯爽と駅へと向かう道を歩いて行った。



通じ合ってるのに、直ぐ傍に居られない。


具合が悪いと連絡が来るのは、あたし宛てじゃない。



あたしは唇を噛み、下を向きかけた顔を上げた。

”駄目な顔はしない”

あたしは大きく息を吐いた。

息は白く、頬を涙が伝った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ