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軽い頭痛を覚えながら、あたしは席へと戻った。

穂積さんが山本さんに仕事の指示を出していた所だった。

「青山、年賀状はフォルダに入れて保管しておいて。あと、その精算終わったら売掛けの入力しておいて。」

「あ、はい、かしこまりました。あ・・・あの穂積さん。」

「ん?」

「・・・何か最近変わった事とかありました?」

「え?特に無いけど・・・何で?青山こそ何かあったの?」

穂積さんは即答で、嘘はないと思った。

あたしは右手を大きく振って「何も無いです」と答えた。

「すみません、急に。」


穂積さんには、届いてない。


桐生が、あたしに仕掛けてる最大の目的は、”あたし”。


あたしを穂積さんから引き離したいんだ。

何の為。


穂積さんとあたしが別れて、桐生が得をする訳じゃない。

桐生は、美帆子さんの為に動いてるんだ。


桐生は美帆子さんを愛してるんだ、きっとずっと昔から。


「そっか・・・。」


美帆子さんの為かぁ・・・。美帆子さんかぁ・・・。




21



「あのさ、今度美帆子の会社の謝恩パーティがあるんだけど、二人で参加出来る?って美帆子が言ってるんだ。」

金曜の夜、穂積さんと水嶋さんとあたしは居酒屋に居た。

「って話を俺は、した。でこの話は終わり。」

穂積さんが話を急転直下で完結させた。

水嶋さんが吹き出したように笑う。

「何だよ。それ。」

「・・・誘えって言われたんだ。忙しいから無理だろうって言ったら、誘うだけ誘ってって・・・。いや来なくて良いんだ、むしろ来ないで欲しい。」

「・・・コレですよね?」

あたしはバッグの中から、美帆子さんから届いた招待状を取り出した。

「あ、それ俺んとこにも届いてたよ。」

穂積さんは大きな溜め息をつき、片手で顔を覆った。

「言ったら聞かないんだ・・・すまない。忙しいから来ないって言っとくから。」

「話はその事だった訳ね。んじゃ、俺は先帰るから、二人でごゆっくり。」

穂積さんの要件が終わると気を利かせて水嶋さんは席を立った。


「凄いですね、謝恩パーティなんて・・・。」

「エヴリィがね、売り上げが結構良いみたいで。」

「美帆子さん・・・何でも持ってるみたい。」

「・・・。」

穂積さんの返答が無い事で、あたしは口にしちゃいけない事を言った事にハッとする。

「ご、ごめんなさい・・・あたし。すみません。」

穂積さんを恐る恐る見上げると、悲しそうな笑顔を向けていた。

「らしくないな、青山がそんな事言うなんて。」

穂積さんの視線に耐えられなくなって、あたしは膝の上で重ねた手に目を落とした。

「今日はもう帰ろうか。」

穂積さんが伝票を持って立ち上がる。


あたしをタクシーに乗せると、運転手に「中板まで」と告げてドアを閉める穂積さん。


窓の向こうの穂積さんが、遠くに見えた。

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