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「青山、今日もコンビニ行く?」

「マルボロライトですかぁ?」

あたしは笑った。

時計の針が正午を回り、穂積さんがうさぎちゃんのコップを片手にパシリを依頼してきた。

「あ、そう。後で請求して、青山。あー山ちゃん、これ間違ってない?」

あたしは財布を持ってオフィスを出た。

外ランチに行く途中の西野さん達と階段で一緒になった。

「青山さん、今週の金曜日、合コンあるんだけど来る?」

「合コンですか?・・・うーん、今は良いです。」

「彼氏と別れたって言ってなかったっけ?」

「暫く男は良いかなって。仕事覚えたいんで。」

西野さん達が笑った。

「いくつよ?!」

「あ、でも穂積さんと最近、良い感じじゃない??」

金田さんが言う。

「確かにぃ。喰われたか。」

あたしが西野さん達に喰われそうな勢いだった。

「違いますよ!」

「穂積さんってさ、彼女が居るって噂はいつも、ない?」

「あるある!」

「やっぱり彼女居るんですか?」

あたしも前のめりに会話に参加した。

「だって非のつけどころのない男じゃん。奥さん居たって、穂積さんと付き合いたいと思う女は居るよね。」

「え?金田さんもですか?」

1階まで到着しても、あたし達は話を切り上げる事が出来ず、エアコンの効いたロビー内で立ち止まった。

「入社した時は思ったけどねー。大人の男に憧れる時期じゃん。でもさ、穂積さんがあたしを相手にする訳ないじゃんって思ったら、普通に”憧れ”だけで終了したよね。」

「したした!」

「それに噂で聞いたけど、同期の女の人が穂積さんに告った時も、社内でそーゆー事したくないみたいな感じで断ったらしいよ、あコレ結婚前の話だけど。」

「出世に響くからでしょ?それは感じるー。やっぱりノンキャリでここまで来るには、実力の他にも上の信頼無いと無理だよねぇ。」

あたしは改めて、女子の情報収集力に感嘆した。

「あ、じゃぁあたしコンビニなんで。」

「うん、またねー。」


あたしは又お昼の戦場にやってきた。ちょっとした気合いを入れて、おにぎりのコーナーに足を踏み入れる。


わっ

あ痛っ

押さないでよっ


戦いに敗れた戦士は、レジの前に立って煙草と季節違いな肉まんを注文した。

・・・もう初夏だってのに、肉まん蒸かしてて良いの?

オフィスに戻ると、穂積さんはキャビネットの前で書類を見ていた。

「煙草、買ってきましたよ。机の上に置いておきますね。」

「おぉサンキュ。・・・って何で、暑いのに肉まん?」

「・・・聞かないで下さい。」

あたしは、肉まんにかぶりついた。穂積さんは大笑いをした。


コンコン

壁を小突く音が聞こえた。

黒のパンツスーツを着こなした営業開発部の木下響子主任が立っていた。

「穂積、これ目、通しておいて。」

”穂積”だって・・・。もしかして穂積さんに告った同期の女の人って・・・。

「・・・肉まんって?」

木下さんの一言に又、穂積さんが笑った。

あたしは肉まんをお腹の中に一刻も早く取り込んでしまいたかった。

「あ、ねぇPAUSA2行ったよ。桐生君、穂積が未だ来てくれないって言ってた。今日でも行かない?」

「今日?あー・・・水嶋と飲みに行く約束してんだよね。」

「えーあたしも行きたい。行っていい?」

「あ、そう。じゃぁ水嶋に連絡しておくよ。」

「無理だったら社内メールでも入れておいて。」

「了解。」

木下さんが、あたしの近くまで歩み寄ってきたので、あたしは最後の一口を詰め込んで見上げた。

「貴方が青山さん、だよね?」

あたしは立ち上がった。

あたしよりも遥かに大きくて、端正な顔立ちのデキル女の人って感じの木下さん。

「あたし営業開発の木下響子。宜しくね。」

握手を求められたので、あたしはハンドタオルで手を拭き、軽く握った。握り返された右手に軽い痛みを感じた。

・・・間違いなく、木下さんが穂積さんに告った女性だろう・・・。

木下さんが6階に戻った後、あたしは穂積さんに聞いた。

「木下さんって穂積さんと同期ですか?」

「あ、そう。女で残ってるの木下だけかな。」

「木下さんって独身ですか?」

「・・・そうだけど。それ本人に言ったら、仕事やりにくくなるからな、青山。」

あたしは深く頷いた。

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