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「どっか出掛けなくて良かったの?」

穂積さんがあたしの部屋に入ってくるなり、そう言った。

「うん、何処行っても人いっぱいだし。」

「ま、それはそうだね。」

穂積さんがコートを脱いで小さなソファに腰を下ろした。

「コーヒーでも?」

「うん、貰おうかな。」

あたしはドリップコーヒーを用意して、灰皿と一緒にローテーブルの上に置いた。


話をして、あたしの作った夕御飯を食べて、穂積さんは家に帰る為に立ちあがった。

靴を履こうとする一歩手前で振り返り、あたしを強く抱き締めた。

穂積さんの腕の中で、あたしが顔を上げると優しいキスが降ってきた。

「じゃぁ、又、会社で。」

「・・・はい。」


部屋の中が穂積さんの匂いでいっぱいになった。


さっきまで穂積さんが座っていた場所にあたしも座った。

未だそこには、ぬくもりが在った。


・・・水嶋さん、穂積さんに言ったのかな・・・。


思えば、半月前に横浜に行った時から、穂積さんはあたしを抱こうとはしなかった。

今日も久しぶりに会ったのに、キス一つであたしの前から居なくなってしまった。

あたしを硝子細工の様に、穂積さんは扱ってる。


桐生に、体を差し出そうとした事を、穂積さんはきっと知ってる。


確信は無い。

だけど、庄司君が穂積さんに言うのは有り得ないと思った。

「・・・。」

穂積さんにその情報を伝えられる人、もう一人居た。

桐生だ。

水嶋さんは、穂積さんの立場を考えてるし、穂積さんを苦しむ姿を見たくない人だ。

あたしがあんな事をしたと知れば、自責の念にかられるに決まってる。

だから水嶋さんが言う訳が無い。

やっぱり桐生しか考えられなかった。


桐生の悪意が、もう穂積さんの所まで来ているという事なの?



「今年も宜しくお願いします。」

あたしは目の前の山本さんに新年の挨拶をする。

「宜しくー。来年度も二人で経理盛り上げような!」

「はい!」

来年度は、総務部に人が入ってくる予定は無いようだった。

新年が始まり、穂積さんは人事課長達と来春の新卒者についての準備を始めていた。

あたしは年末に残していた小口精算の仕事を再開した。


「おはよう。今年も宜しくね。」

あたしが声の方に顔を上げると、金田さんが郵便物を持って立っていた。

あたしは立ち上がって、挨拶をした。

「こちらこそ宜しくお願いします。」

岩根部長の件で、わだかまりがあったが月日が経つにつれて緩和しつつはあった。

・・・それにこんな事で、穂積さんに心配を掛ける訳にはいかない。

あたしは経理部宛ての郵便物を受け取り、多くの年賀状の中に、白い封筒を見付けた。

宛名が、あたし宛てだった。

通常では有り得ない事。

外からの感触で、何なのか容易に想像が出来た。


あたしはそれを持って女子更衣室に駆け込む。


あたしの部屋に入る穂積さんと帰り際の穂積さんの写真。


たった2枚の写真が、あたしの心を握り潰すようだった。



キョウアスを読んで頂きまして有難うございます。

又、登録をして頂いている方にも感動と感謝の気持ちでいっぱいです。。。


キョウアスも終盤に入っております。

最後まで読んで頂けると、嬉しいですっっ!!


他の連載作品も同時進行中ですので、新年も頑張ります。


皆様、お身体ご自愛のほど。。。


           *** 壬生一葉 ***

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