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「美帆子さんにバラすって言われただけで、君がこんなボロボロになるとは思えないけど。」

あたしは首を横に振った。

「俺は桐生って男が大っ嫌いでね、あいつの考えそうな事も、君がやった事も想像出来る。」

あたしは更に激しく頭を振った。

「寝たの?」

「寝てない!!」

「・・・体を強要された。要求を飲もうとした。それで罪悪感に苛まされてるって事?」

あたしは又押し黙った。

水嶋さんがあたしの傍へ歩み寄り、あたしを優しく抱き締めた。

「辛かったな。」

そうたった一言、あたしにくれた。


罵られたっておかしくない浅はかな行動だった。

幼稚で愚かしい行為だったと今では思う。

自分が汚いモノになった様に思えた。


水嶋さんの大きな手があたしの背中を撫でてくれた。

水嶋さんは、どうしてかやっぱり、あたしの欲しいと思う言葉をくれる人だった。



17



桐生さんとの事を、水嶋さんに話せた事であたしは幾らか気が軽くなった。

・・・穂積さんに知られてはいけない。

水嶋さんもそれは同調していた。

「本当なら、穂積に正直に話してあいつに桐生の事を何とかして貰うのが妥当だと思う。・・・だけど、今の穂積の会社での立場とか、君達が不倫の関係にある以上、こっちからは何もしない方が賢明だと思う。」


一番嘘をつきたくない相手に、あたしは嘘をつかなければならない。


翌朝会社に行くと穂積さんからの社内メール。


   経理3人で飲みに行きませんか。


山本さんは早々に”行きます!”フォローを入れていた。

断る術は無い。ただ、行きたくはない。

山本さんが帰った後、二人になるのが怖かった。

穂積さんに射抜かれたら、全てが明らかに真相がボロボロと丸裸にされそうだから・・・。

「おはよう、青山、調子はどう?」

「・・・はい、大丈夫みたいです。でも今日はお酒は止めておきます。」

最近この笑った顔が上手になってきた気がする。

「今日じゃなくても良いんだよ、来週でも。」

「来週は駄目じゃないですか、給与振込とか支払の準備で忙しいし、穂積さんも出張じゃなかったでしたっけ?」

「うん、そうなんだけどさ。」

「あたし”食べ”専門で。山本さん、楽しみにしてるっぽいし。今日行きましょう。」



山本さんが予約した居酒屋で経理課の忘年会は開かれた。

あたしと穂積さんが隣同士に、あたしに対面する形で山本さんが卓を囲んでいた。

穂積さんの膝があたしの右膝をかすめる。

あたしはウーロン茶を飲みながら、二人の話を聞いていた。

穂積さんの携帯が鳴って「水嶋からだ。」と言った。

あたしは鼓動を速めた。

「水嶋が今から来るって。」

携帯を折り畳み、穂積さんがそう言った。


暫くして、水嶋さんがやって来た。



美帆子さんと一緒に。


「きゃー奏ちゃーん、久しぶりー!」

相も変わらない無邪気な笑顔で、本当に眩しい女性(ひと)だった。

「・・・どうして・・・。」

穂積さんも吃驚している様子だった。

「近くに来たから智志、驚かそうと思って会社行ったら水嶋君しか居ないんだもん。」

水嶋さんはバツの悪そうな顔をしている。

「やだー此処四人掛けじゃなーい。あたし座れない、お店変えようよ!あたし行きたいとこあるんだ。」

「美帆子、ちょっと待てって・・・。」

「あ自分、もう帰りますから良いっスよ!」

美帆子さんと初対面らしい山本さんが恐縮して腰を上げる。

あたしこそ、この場から逃げたくて腰を浮かせる。

「良いよ良いよ、皆で行こうよ。ちょっと遠いけど。」


山本さんは帰ると聞かず、誰も美帆子さんを止められずにあたし達4人でタクシーに乗る事になった。

タクシーの中であたしと水嶋さんは無言で、話し続ける美帆子さんに穂積さんが時折相槌を打つ程度だった。

「あたし、奏ちゃんに聞きたい事あったんだわ!」

助手席から顔を覗かせて、美帆子さんは言った。

「・・・何ですか?」

「それはお店に着いてから二人に聞くー!」


二人に、聞く?


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