表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/67

-43-

入口のインターホンを押すとロックが解錠される音がした。

最上階に着き、あたしはドアの前で深く息を吐いた。

ドアのインターホンをもう一度鳴らす。

桐生さんの話し声がどんどん近付いて聞こえて、ドアが少し開いた。

誰かと携帯で話してる様だった。

「あぁ今、ちょっと先客なんだ。1時間・・・んー30分位で良いや、待ってて。着いたら電話してよ。え?あぁ地下の?あー大丈夫だと思う。来客用のがあったと思う。管理人に聞いてみて。あぁじゃ。」

あたしはブーツを脱いで、室内に足を踏み入れた。

「久しぶり、奏ちゃん。」

リビングの方から、桐生さんの声がした。

「来ないかと思ったけど、よっぽど穂積が大切って事ね、来たって事は。」

リビングのドアの入口であたしは、桐生さんの言動を見落とさないように神経を張り詰めていた。

桐生さんはソファに座り、ウィスキーのロックを舐めていた。

効き過ぎる程の暖房が、気持ち悪かった。

「コート脱いで、バッグ置いて。」

抑揚の無い桐生さんの声。

あたしは桐生さんとは反対にあるキッチンカウンター前のテーブルの椅子にバッグを置き、背凭れにコートを掛けた。

「ふ・・・奏ちゃん、やっぱり面白い。で、穂積とは9月位から?」

「話す必要はありません。」

「・・・まぁ確かに。」

桐生さんは立ちあがって、オーディオ横に立てかけてあった茶色い封筒から何かを取り出した。

「この温泉、良かった?」

「?!」

「此処1泊3万近くすんだってね、流石高給取りだなぁ穂積は。」

煙草を咥え、その中から写真らしきものをローテーブルの上に乱暴に置いた。

あたしは駆け寄ってしゃがみ込む。

「・・・。」

あたしのアパートの前に停まる穂積さんの車、赤城高原SAで手を繋ぐ穂積さんとあたし、旅館に入るあたし達・・・。

どれも隠し撮りをされたものだった。

「・・・何が目的ですか。」

この人はやっぱり恐ろしい人間だった。

意識的に避けてきたが、あたしは桐生さんを見上げた。

「あぁその顔やっぱり良い。そそるなぁ。」

桐生さんはあたしに目線を合わせるようにしゃがんだ。

煙草臭い息があたしの鼻を突く。

「俺ね、ドSだけど強姦とかは好きじゃないんだよね。」

「・・・。」

「そこ寝室。」

リビングのドアの方をちらっと見た。

「服脱いで、足広げて待ってな。」

コートを脱げと言った時と同じ様な口振りで、この男はあたしにセックスを強要した。


こうなる事を覚悟していた。

それでいてあたしは、この部屋にやってきたのだ。


あたしが穂積さんに出来る事、これしかないんだもん。


あたしはローテーブルを支えにして立った。

後ろでウィスキーのグラスが空になる音が聞こえた。


リビングを抜け、直ぐ右手のドアを開ける。

カーテンは閉じられ、大きなベッドが主を待っている。

ここも逆上せる様な温度の暖房が効いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ