表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/67

-38-

心地良いあったかさの中であたしは目覚めた。

「ん・・・。」

体を起こす。見た事の無い室内。あたしは記憶を辿った。

ベッドから降り、閉じられたドアを静かに開けた。仄暗かった。

右手に玄関が見えた。あたしの靴と男物の革靴が並んでる。

左手に足を進めた。キッチンがあって、その向こうにダイニング、リビング。

ダイニングテーブルの上に、見覚えのある携帯とマルボロライトの箱と財布。

「・・・そっか・・・。」

大きなテレビの前に置かれたレザーソファーの上で布団に包まっている水嶋さんを見つけた。

壁際にローチェストが置かれ、その上でデジタルの時計が1時を表示していた。

あたしは部屋の中を見回した。

男一人で暮らしてる割に綺麗だなぁ。

窓際に立ち、カーテンを少し曳いた。日付は変わってるのに、街は眠っていなかった。

「此処、何処かなぁ・・・。」

「大塚。」

振り向くと水嶋さんが、布団から顔を出した。

「ごめん、俺ん家連れ込んじゃって。」

「何で水嶋さんが謝るんですかっ。あたしこそ、又寝ちゃって・・・。」

「・・・本当だよな、どんだけ男の前で無防備なの、青山さん。」

ソファから立ち上がり、水嶋さんは冷蔵庫を開けた。

水嶋さんはしっかり、スウェットに着替えていた。

「何で笑ってんの?」

「穂積さんにもそんな風な注意された事あります。世の中には厭らしい事しか考えてない男も居るんだよって・・・。」

「本当だよ、青山さん。」

・・・あれ?

水嶋さんはペットボトルのお水を飲んでから、テーブルの上の財布を開いた。

「タクシー代、手持ち足りなさそうだったから俺ん家、来ちゃったんだけど、今からタクシー拾って帰るよね?」

「あ、はい。大丈夫です。大塚だったら中板迄近いですよね?お金足りると思います。」

「そう?」

あたしは椅子の上に置かれていたコートと鞄を手に取った。

テーブルの上の煙草が目に付いた。

「タクシーんとこまで行くよ。」

「大丈夫ですよ、水嶋さん、髪濡れてる。風邪引きますよ?」

「あ?あぁ、じゃぁ此処で。」

「はい、ありがとうございます。」

あたしは靴を履き、水嶋さんのマンションを後にした。


直ぐにタクシーに乗り込んで、あたしは思った。


水嶋さんは、好きだった人が死んで失くすのが怖くて、本気で人を好きにならない体質になったって言ってた。

でも、社内の噂では女をとっかえひっかえの軟派って。

それはやっぱり噂に過ぎないんだ、とあたしは思った。


女っ気の無い部屋。


あの口癖。


同じ・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ