缶コーヒーの空き缶
通勤中だった。
目の前で缶コーヒーの空き缶をポイ捨てした若者に遭遇した。
「ろくでもないな」
ふと呟いたものの、柄の悪そうな若者に注意するなど面倒だし、まして空き缶を拾う気にもならなかった。
「おにーさん、ゴミはゴミ箱だよ」
幼い少女が若者に注意して、手をあげられそうになる。近くにいたおじさんに助けられていたが、なんであの子もあのおっさんも、なんで面倒事にかかわるんだか。
「ろくでもないな」
会社につくと、デスクに空き缶がおいてある。飲み残しなんて放置しただろうか。誰かの嫌がらせか。
周りを見渡してから、ため息を吐いてゴミ箱へと捨てる。
「へー、自分のデスクなら捨てるんだ」
知らない声が耳元できこえて、辺りを見回したが、近くには誰もいなかった。
「気の……せいか」
仕事が終わり、帰宅中、今朝の少女がこちらを見ていた。何と無く薄気味わるくて目をあわせないように逃げるように帰る。
家につく。
玄関をあけ、居間に入ると灯りが点いたままだ。
朝方、消し忘れていたんだろうかとテーブルを見れば、自分では飲んだはずのない缶コーヒーの空き缶がひとつ、ぽつんところがっている。
「なんなんだよ、誰か侵入ったのか」
焦って警察に連絡しようとして、すこし冷静になる。鍵もかかっていたし、荒らされた形跡もない。身に覚えのない空き缶がひとつ転がっていただけなんて、相手にされるわけもない。
「なんなんだよ、ちくしょーっ」
翌日、ベッドサイドにまた転がってた空き缶にげんなりし。
朝食にトーストを焼いて適当に食べながら、何と無くテレビをつける。
時報がわりのニュースで、お馴染みのアナウンサーが昨日の出来事を読み上げている。
「昨日、昼頃に発生した死傷事件でなくなりました、小学3年生の少女と40代の男性に面識はありませんでした。逮捕された20代男性は空き缶を捨てたことを注意されたことにカッとなっての犯行だと供述しており、警察が捜査をすすめている模様です」
テレビ画面に映る被害者は昨日の少女とおっさんだった。
後ろで空き缶が落ちた音がする。
感想お待ちしてますщ(´Д`щ)カモ-ン