第三話
人生にとって一番大事な行事である、魔法の属性適性を判断してもらいに教会まで来たわけだが
そもそも魔法とは何か、魔法とは神様から加護を貰えることによって使えるようになると言われている
しかも貴族にとって魔法の属性適性は一種のステータスになる
そして今回、教会に行く目的は神様からの加護をもらいに行くためだ
加護をもらうことは誰でもできるが農民などの人たちは加護を貰ってもそこまで気にしない
そもそも、加護を貰ったとしても魔法を使うためには専用の知識を学ぶ必要があり学ぶためにもお金が掛かる
農民や平民は子供でも本人たちにとって立派な働き手である、わざわざお金を払ってまで学びさせる意味はないと思っているからだ
しかも国に年貢や税金を払うだけでも普通の人には大変だし生活するためにもお金は必要で、簡単に言うと全くお金がないのだ
「ヨハ、神様から良い加護を貰えるといいですね」
「そうだぞ、ヨハ。俺は火の加護と風の加護をもらったからな」
「あなた!そんなことをヨハに言うと緊張してしまうでしょ。いいのよ、ヨハに加護がなくても私は愛していますよ」
「わ、悪かった。ヨハ、俺もアリスと同じ気持ちだからな本当だぞ」
「うん、加護をもらえるように頑張るよ」
(ヨハよ、良い両親に恵まれたな)
(うん!)
教会の前には一人の人が立って待っていた
近くまで寄ると意外と若い金髪の優しそうな男の人だった、てっきりオッサン神父がやっているのか思っていた
俺たちが教会の前に来ると父さんに話しかけてきた
「ようこそ、ソルダート男爵さま」
「これはダル神父、今日は息子のヨハをよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらも寄付してもらっている身です。これぐらい当たり前ですよ。それで、そちらがヨハネス様ですか」
ダル神父は観察しているような目で俺を見ながら口を開いた
「お会いできて嬉しいです、ヨハネス様。私はこの教会を任されているダル=シグルバルと思うします」
「こちらこそお会いできて嬉しいです、ダル神父。今日はどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「ダル神父は、苗字があるということは元貴族なのですか?」
実はこの世界では苗字を持っているのは王家や貴族しかいない、他の国では
「そうです、」
「ヨハネス様は亜人についてどう思っていますか」
………は、急に何を聞いてきているの
亜人についてどう思っているのかって………え〜急に言われても会ったことないし
でもなぁ〜、この国って人間主義とか爺ちゃんが言ってたし
(ヨハネスよ、ここは正直に言ってやれ。このダルという少年はお主の本心を知りたがっておるように見える)
(…………わかったよ、爺ちゃん)
そうだよな正直に言おう、でもこの人なんでそんな観察しているような目で見てくるのこっちは見た目ただの三歳の可愛い子供よ!
普通の子だったら怖がっちゃうよ!
「ぼ、僕は正直、亜人について知りません。でも、僕は僕たち人間と同じだと思っています」
「……………そうですか」
何!その間は!!やめてよ、心臓に悪すぎるから。しかも笑顔で返答しないで!
どうしよう、嫌われてないよな
いや別に変なことを言ったつもりもないし、やべ〜変な汗出てきそう顔を強張っているだろうな
その後は軽く、父さんとダル神父が話してから二人が先頭に俺と母さんが後に続く形で教会の中に入った
しかし、あの質問は何だったんだろう。何か意味があったのかな
俺は疑問に思いながら教会の中を見てみた、中は学校にある体育館ぐらいの広さで一番奥には女性の石像が置いてあっただけだった
「さぁ、こちらに来てくださいヨハネス様」
「はい」
俺はダル神父の後を追うように石像の前まできた、父さんと母さんは後ろで見守っている
「では、ヨハネス様。そこで膝をついてください」
「わかりました」
「それでは始めます【我、ダル=シグルバルの名においてこの者、ヨハネス=ソルダートに加護を】」
すると教会全体が光り出した、その光が前にある石像に集まり俺の胸の中に入りそうになった瞬間に消滅した
それを見ていたダル神父は驚いて
「どういうことだ、加護の光が消滅だと!?いや、あれを見る限り拒絶したのか。でも―――――」
とぶつぶつ独り言を喋っていた
後ろにいた、二人も様子がおかしいと思ったのか俺のほうに近づいてダル神父に話しかけていた
「ダル神父、これはどういうことですか」
「大変、申しにくいですが……ヨハネス様は加護をもらうことができませんでした」
「!?……どういうことだ!」
「申し訳ありません!!」
父さんとダル神父が言い争いを繰り広げている間、俺は母さんに抱かれながら「大丈夫よ、大丈夫」と言っている
俺はショックすぎて頭の中が混乱している、爺ちゃんの方に目を向けると何か覚悟を決めたような目をしていた
父さんと母さんの顔を見ると絶望したような顔をしていた
「何故だ、ヨハが加護なし「あなた!!」っ!……すまん」
「原因はわかりません、しかしあの現象は私も初めて見ました。…………これは私の予想ですがアクト様はもうすでに加護を受けているのかもしれません」
「………それはどういうことだ」
「普通、加護なし者は加護の光すら発生しません。しかしアクト様の場合は違います。加護の光が発生したのに消滅したんです」
どういうことなんだ
意味がわからない、発生したのに消滅したのがおかしい?
俺があまり理解できていない中で二人の会話は進んでいった
「それの何処がおかしい」
「私も初めての事なので確信は持てませんが、ヨハネス様は産まれてからこれまでの間に加護をすでに受けているのかもしれません」
「ダル神父の言いたいことはわかるが、それはおかしいぞ。ヨハは産まれてからこれまでの間に屋敷の外に出たことはないはずだ」
「それはもしかしたら、神自身がヨハネス様に加護を与えたのかもしれません」
「!?それは…………」
えっ、神様が俺に加護をくれたの?
やった!!これも俺が転生者だからなのかな
(これはまずいことになったことかもしれんぞ)
(なんで、神様から直々に加護をくれたのかもしれないんだよ)
(加護自体は悪くはない、逆に神から直々に加護を受けられる者は強力な加護を授かり通常の魔法よりも強力な物を放つ事ができる事ができる)
(え、それの何処が悪いんの?)
(それは「ヨハ、聴いてるか」
「な、なんですか。父さん」
やっべー、完全に爺ちゃんの方に意識がいってた
「ヨハ、ダル神父と話したんだがお前が加護を神から受けたことは秘密にする」
「え、なんで?」
「お前、ちゃんと話を聞いていたのか」
すみません、完全に聞いてませんでした
「すみません」
「はぁー、もう一度説明するぞ」
父さんから説明してもらって、爺ちゃんがなぜ困っていたのか納得した
父さんの話を要約すると、神様から直々に加護をもらった者は親元から離れ強制的にサクバ王国の王都にある教会本部に送り、そこの一番偉い人が教育するらしく
ちなみに神様から直々に加護をもらった者は【神子】と呼ばれる
このままだと、俺も送られることになるので神子のこたは秘密にすることにしたようだ
「あと、ダル神父は今後ヨハの教育係になった。それに伴ってダル神父は」
「っえ、なんでそうなったの」
「理由は、ダル神父が希望したことと近くに監視下に置きたいからだ」
この人たち完全に隠蔽する気だよ
いや、ありがたいよ。俺も連れて行かれるのは嫌だし
しかし俺の教育係って本当にいいの、なんで俺の教育係になりたいんだよ
「心配することはありませんよ。ヨハネス様、こう見えても私自身王都の学院で学んでいました。なんでも聞いてくだされば教えることができますよ」
いやいや、そういう問題じゃなくね
そんな爽やかな顔で言っていいことじゃないよ
ますます疑問に思っちゃうじゃん、普通そんな所で学んだ人がこんな男爵領の教会にいるか
俺の中でダル神父への不信感が高まっていく
「ほ、本当に僕の教育係でいいんですか」
「はい、もともと教会にはウンザリしていましたし。この教会も私の代わりはもう一人いる神父に任せます。そこまで忙しい訳ではないですし」
「そ、そうですか」
「それでは、改めてヨハネス様。これからよろしくお願いしますね」
こうしてダル神父は俺の教育係、ダル先生に転職したのであった
てか結局、俺の属性適正は何になったのーーーーー!!