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魔女の伝言  作者: 日下真佑
6/17

6ヘンリク村長

いつもありがとうございます。今日はもう一話アップします。

どうぞお楽しみください!

ソフィアが泊る村は、村にしてはかなり大きな規模で、そこそこ商売が栄えた場所だった。何故なら、ここから先は森が多く、次の街や村まで行くのがなかなか大変な場所だったからだ。

そんな村の真ん中に、村長の屋敷はあった。

数百年前から代々村長を務めてきた由緒ある家を継いだヘンリクは、まだ二十代後半ながらもかなりのやり手で、今までなかなか着手されなかった教会の悪事を暴くことに、力を注いでいた。

「村長、ちょっとよろしいですか?」

「どうした、ハンス」

ヘンリクの家に代々使えてきた部下のハンスは、村のあちらこちらを歩いて調べてきた調書を手に、ヘンリクの顔を見る。

「北の魔女が西によって、殺されたようです」

「そうか…で、やっぱり裏には教会があるのか?」

「はい。西の魔女がずっと牧師から金の援助を受けていた証拠を押さえました」

ハンスの言葉に目を見開くと、ヘンリクは奪い取るようにハンスの調書に目を通す。一通り書類を読むと、悔しそうに歯を食いしばって、調書を机に叩きつけた。

「くそっ!間に合わなかったか…。魔女狩りが終わって百年以上経っても、まだこんなことが続いているなんて…こんなくだらないことは、俺の代で必ず終わりにしてやる!」

ヘンリクは吐き捨てるように言うと、書斎の椅子に大きな体を投げ出して、両手で頭を抱えた。

 この村には、昔から魔女の家が三つある。

主に薬草を煎じて病気の治療を得意とする北の魔女、美貌を武器に牧師の愛人として生活する、黒魔術が得意な西の魔女、そして、魔女狩り時代に跡取りを守る契約を悪魔と交わした、最も力のある呪われた東の魔女。

汽車が走る時代になっても、未だ見えない力を持つこれらの魔女達は、畏怖され、同時に忌み嫌われていた。

 西の魔女は、牧師に取り入って、村の祭祀を独占することで生計を立てていた。そして魔女が溺愛する一人娘も、牧師との間にできた子だということは、村の誰もが知る事実だった。しかし、村長がヘンリクに代替わりすると、そんな教会と魔女との癒着を断ち切るために、動き出した。

州府からの許可を貰い、祭祀の権限を、牧師から村へと移す命令を出したのだ。

ところが、この村の牧師は、どうしようもないクズだった。

そんなヘンリクの行動に危機感を持った西の魔女と共謀して、他の二つの魔女の家を潰すことを決めた。

まず狙われたのが、一番力の弱い北の魔女だった。

西の魔女は北の魔女の最愛の夫と一人息子を呪術で寝たきりにすると、生活の苦しくなった北の魔女に、自分の愛人になるよう、牧師に持ち掛けさせた。しかしその企みが西の魔女のものだと勘づいた北の魔女は、応じなかった。すぐに西の魔女とその娘の呪殺を試みると、西の魔女の娘を下半身不随にした。怒った西の魔女は、その夜激しい戦いの末、とうとう北の魔女を呪殺した。残された寝たきりの夫と息子は、同じ夜に牧師の手の者によって、無抵抗のまま殺された。

「次は東か…」

村長は机に散らばった調書を見ながら、眉をしかめる。

東の魔女は娘と二人暮らしで、夫を失ったショックから心を病んで家に閉じこもっていると、ハンスの調書に書いてある。現在跡取りとして存在するのは、僅か七歳の娘だった。

「これは俺が守ってやらないとな。ハンス、今から東の魔女の娘の様子を見に行くぞ。西に手を出される前に、助けるんだ」

「分かりました、村長!」

ハンスは真面目な顔で頷くと、馬を出しに外へ出た。

ヘンリクは調書を大切に引き出しにしまうと、上着を羽織る。

本当に俺に、東の魔女が守れるのか?呪殺とか黒魔術とか、見えない力で攻撃されたら、正直なすすべもないのではないのだろうか?

いや、それでもやるしかない。とヘンリクは覚悟を決めていた。

この村の誰もが幸せに暮らせるようにするのが、俺の仕事だ。

二人は馬に跨ると、村の奥に鬱蒼と木が生い茂る、薄暗い森へと走り出した。


いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

次話も続きますので、どうぞお付き合いください。

これからもよろしくお願い致します!

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