部活①
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「ん…」
目が覚める。
知らない天井だ。ここは病院?いや、病院にしては薬臭くないし、それならここは保健室?どうして?俺は一体いつからここにいた?
記憶を遡ると…ああ、激辛カレーを食べてあまりの辛さに気を失ったのか。
正直なところ、あれは人の食うものではなかった。
俺はもう安曇のことを信用しない。少なくともあいつのオススメメニューじゃないものを今後選ぶとしよう。
「それにしても、今何時だ…?」
「あ、ハル、起きた?」
「ほわちゃあ!?」
いきなり誰かに声かけられちゃうとびっくりしちゃうよね。
思わず叫んでしまった。
「ってなんだ、秋穂か。びっくりした」
「びっくりしたのはこっちだよ!なんか食堂が騒がしいと思ったらハルが倒れてんだもん!」
「まあそりゃびっくりするわな。俺も何があったのかそんなにわかってないし」
「当事者がそんなにわかってないのはどうなの…?」
どうなの?と言われてもなあ…
むしろこっちが教えて欲しいくらい。
「それよりも、今何時かわかる?」
「今?もう六時間目終わって放課後だけど」
「放課後!?俺そんなに寝てた!?」
「うん。だから転入初日でなんでこんなことになってるか聞きたくて」
「うーん、そうだなぁ…」
とりあえずどうして保健室まで運ばれることになったのか経緯は話しておくか…
俺は秋穂に昼休みから今にかけての経緯を説明する。
「ふーん、わかったよ。とりあえず天堂は後で〆ておくね」
「気持ちは嬉しいけど女の子がそんな物騒なこと言わないの」
「むしろハルはもっと怒るべきだと思うけど…。っていうかハルはウチのこと女の子扱いしてくれるんだね」
「?当然じゃん」
「えへへ、そっかぁ」
「?」
なぜかは知らんけど秋穂からとても友好的に見られてる気がする。
どこで評価あげたっけ?まあいっか。
「それよりも、ありがとな。心配してきてくれたんだろ?」
「あ、ううん。もちろん心配してきたのもあるんだけど、ハルをここまで運んできたのウチだし起きるまでは様子見ないとと思って」
「oh…」
まさかの運ばれてた事実。
さっきも銅像を一人で持ち上げてたからそこまで驚きはしないけど、男としての尊厳までズタズタにされた気分だった。
というか近くにいたあいつらは何もしてくれなかったのね…。
やっぱり後で〆よう。
「それよりもハル!もう放課後になったけど、これから何か用事ある?」
「用事?いや、あとはもう帰るだけだけど」
「本当!?それなら部活見学に行かない?」
「部活?」
「うん、お姉ちゃんに頼まれてることなんだけど、入る入らないは別としても案内はしてくれって」
「なるほど、そういうことね」
この魁皇学園は武器の使用を推奨してるだけあってか、他の学校と比べてみてもかなり部活に力を入れている。
その力を入れている筆頭となる部活が剣道、弓道、空手、柔道、射撃、といった実戦でも生きる部活。
もちろんだからといって他の部活はそうでもないのかと言われるとそうではない。
野球やバスケなどの球技は全国一位にだってなれるくらいには有名だしその道で大成する人も多い。
また、文化系の部活でも賞を総なめすることだってしばしば。
要するに、全てにおいて優秀なのである。
「まあそれなら部活見にいくか」
「わかった!それならどこから見に行く?うちが入ってる空手部は今日は休みなんだけど…」
「へぇ、秋穂って空手部だったのか。どうりでいい身体してると思った」
「ふぇ!?ど、どこ見てるのさ!」
「どこって、さっきも見て思ったけど結構がっちりしてんなって思って」
「ああ、そういう…」
なんか慌てたりがっかりしたりと忙しない秋穂。
晴一の裏表のない回答に翻弄されているが、どこか嬉しそうでもある。
「ああ、そうだ。ちょっと行ってみたいところがあるんだ。そして秋穂にも協力してもらいたい」
「うん?うちに協力して欲しいこと?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんだ晴一か。さっきは大丈夫だったか?」
「ああ、おかげさまでな…」
秋穂に案内してもらいながら晴一がやってきたのは体育館のとあるスペース。
天堂安曇が所属する柔道部の活動する場所に来ていた。
なぜ晴一がここに来たか。
理由はもちろん、〆るためである。
「お前柔道部だったんだな。体型いいし、納得だわ」
「そうだな。俺は昔から柔道一筋よ。して晴一よ、ちょっと聞きたいんだが…」
「ん?なんだ?」
何やら居心地悪そうにしている安曇。
それに対して安曇を〆ることしか考えていない晴一。
お互いの心情など知ったこっちゃない。
「なんで六道がここにいる?」
「なに天堂、ウチに何か文句?」
「いや、文句というわけでは…」
「秋穂は先生に頼まれて俺に部活の案内をしてくれてるんだよ」
にっこりと笑顔で答える秋穂に対して苦い顔をしている安曇。
安曇はどうやら秋穂のことが苦手なようである。
少なくとも姉の夏希先生よりは関わりやすいとは思うが色々あるのだろう。
「秋穂って…晴一よ、もうすでに仲良くなっている手前こんなこと言うのはおかしいのだが、六道はやめとけ。お前が持たん」
「やめとけって、どゆこと?」
「ああ、こいつはな…」
「ねーえ、天堂?ハルになに変なこと吹き込んでんのかな?」
「ひっ!?」
秋穂から声をかけられて震え上がる安曇。
秋穂の方を見てみると、なんということでしょう。
あんなに笑顔だった秋穂が一ミリも笑っていないではありませんか。
しかも後ろになんか鬼みたいのが見えるんだけど、気のせい気のせい♪
「そんな反抗的な態度取るなんて、天堂は本当に懲りてないみたいだねえ?」
「おい待て六道。俺が悪かった。話せばわかる」
「話せばわかる?他のみんなはなにも言わなくてもわかってるのに天堂は言われないとわかんないんだ?」
「え?他のみんなって、あ…」
安曇が振り返る。
そこには安曇以外の柔道部員が多数いた。
…なぜかみんなして跪いているが。
「この前の異種格闘技戦で散々叩きのめしたのにそんな態度なんて逆に感心するよ」
「異種格闘技戦?」
「…以前、天堂部長が部活の場所割で空手部と揉めて、どっちかの意見を尊重するために組手をすることになったんですよ。その時に空手部の代表として六道先輩が来てしかも柔道で対決することになったんですけど…」
「ああ、そういう…」
偶然?近くを通りがかった柔道部員がこそっと教えてくれた。
どうやら運動部ではよくあることで揉めたみたいだ。
柔道の安曇と空手の秋穂。
部活は違うし関係ないとは思ってたけどなんだかんだ交流はあるみたいだ。
っていうか安曇は秋穂に柔道で負かされたのか。
「そこの君、ハルになにを吹き込んでいるのかなあ?」
「ひいっ!?殺気!?」
「まあいいけど。君の愚行と天堂の態度と天堂のハルに対する仕打ち、この三つの罪を天堂に償ってもらうだけから」
「待て待て待て!?前者二つならまだしも最後に一つはなんだ!?」
「あー、それな。さっきの激辛カレーのことでお前を〆ようと思ってたんだけど、秋穂に任せようかな」
「うん、任せて♪」
「任せるなよ!?そのことについては謝るから六道をなんとかしてくれ!?」
秋穂のことが怖いのか、必死で縋り付いてくる安曇。
異種格闘技戦のことがトラウマのようだ。
「なんとかしてくれって言っても、多分俺じゃ秋穂を止めることができない。諦めてくれ」
「そ、そんなあ」
「それじゃ天堂、やろっか♪ルールは前と同じく柔道で勝負を決めるのはどう?もちろん勝敗はお互いの気が済むまで♪」
「ちくしょお、やったらあ!!前みたいにうまく行くと思うなよ!」
「へえ、生きがいいね。それじゃいっぺん…」
「死んでみる?」
結論から言うと、安曇は秋穂に手も足も出なかった。
安曇の得意分野であろう柔道で。
安曇は秋穂に何度も投げ飛ばされ、戦意を喪失してもなお攻撃の手は止むことはなく、他の柔道部員が本気の土下座をすることによってやっと解放されたのだ。
秋穂は不完全燃焼だったらしいのだが、部活案内の時間が押していることを告げると渋々了解してくれた。
ちなみに後から聞いた話だと秋穂は空手のみならず柔道や棒術、挙げ句の果てには中国拳法などありとあらゆる格闘技を高いレベルで仕込まれているらしい。
それゆえに安曇が秋穂に勝てる道理はなく、後に秋穂は柔道部から道場破りと呼ばれるようになったのだとか。
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