コントラスト
寝ている私の耳に少年の声が響く。
「ハア、ハア、ハア、こんな山の上に駅を造りやがって、利用する者の身にもなってみろ!」
「オイ、オイ、創業者の像に当たってもどうにもならないぞ」
「そうだぞ、それより見ろ!
このホームから見える景色を。
創業者がここから見える風景を見て、態々ここに駅を造ったのだ」
駅前のロータリーから真っ直ぐ伸びる大通りは、駅のある山を下り市街地を抜け5キロ程先の白い砂浜まで続いている。
砂浜の先には青い海が広がり地平線の先で紺碧の空と交わり、綺麗なコントラストを私達に見せていた。
私は閉じていた目を開ける。
!?
ああ……夢を……見て……いたのか………………。
目を開けた私が見たのは、1人の人の姿も見えない焼け野原となった街と、黒く濁った海と地平線の先で交わる真っ黒な雲。
半分溶けた創業者の銅像を見上げながらホームの朽ちかけたベンチは、北の空に太陽が出現した時の事を思い出していた。