57話:皇帝の秘密の書庫。
本編戻ります。のんびり日常回です。
政治の改革が始まり、皇帝であるアスランは多忙を極めるようになっていた。
政敵デミレルを討ちアスランは完全に政治を掌握したが、外廷の混乱は続いていた。
あれだけの大物を排斥したのだ。一朝一夕では落ち着くはずはない。
当然ながらアスランも対応に追われ、アセナの待つ私室に戻ってこれるのは深夜になってからという激務ぶりであった。
そうなると自然とアセナは一人で(もちろん女官や宦官に囲まれてはいたが)過ごすことが多くなっていた。
後宮にいたころは、カルロッテやシーラ、オミーシャといった皇妃を呼び茶会など開いていたものの、ここ外廷の宮に後宮の皇妃の出入りは許されない。
そもそもアセナも皇妃の身分ではあるが皇后に内定している事に加え、政敵から命を狙われたという特例で滞在を許可されているだけなのだ。
(だけどね、うん。暇だよね……やることが無いわ……)
アセナはゆるりと首の筋を伸ばすように回す。
身体も順調に回復し動き回れるようになると、アセナは暇をもてあますようになった。元々庶民出なうえに無位の皇妃である期間も長かったアセナである。
何かしら仕事をしていないと落ち着かない。
無位の頃はカルロッテのお気に入りの侍女として尽くし、皇妃になってからはヘダーヤトの教授やらアスランの相手やらでそれなりに過ごせていた。
しかし政変後はアスランはともかく、ヘダーヤトもアスランの補佐につき、とてもアセナの為に宮を訪れる時間はないらしい。
ゆえに教授してもらう機会もなくなってしまっている。
では散歩でも? と思っても、皇帝の宮は皇后宮や後宮の他の棟よりも広く快適で中庭もすばらしいが、それも数日もたてば慣れてしまうもの。
手札を切らしたアセナは限界だった。
「ね、リボル。馬場に行きたいんだけど」
アセナはダメもとで訊いてみた。
久しぶりにアスランから下賜された愛馬と戯れるのもいいかもしれない。
が、当然リボルの冷たい眼差しと「だめです」の一言で却下されてしまった。
アセナは不満顔で、
「ウダでは子が産まれる直前まで畑もするし馬にも乗るのよ。私もウダの民だから大丈夫よ」
「本当に何と浅はかなお考えでしょうか。リボルはガッカリです。よいですか、アセナ様。貴女様が後宮に入内して早や五年。ウダにいた現役の頃とは違うのですよ。さらに大病を患ったばかりだというのに、御子に何かあったらどうなさるおつもりですか」
確かにそうだった。
リボルの言い分には一理ある。
体調がよくなり忘れがちではあったが、アセナは懐妊中なのだ。
「でもやることが無くて暇なのよ。刺繍もあきちゃったし、本も手元にあるのは全部読んでしまったの。カルロッテ様とお会いすることは出来ないんでしょう?」
「はぁまったく仕方のないお方ですねぇ。宮で許される事……うーん。ああ、一つ考えがございますよ」
陛下の書庫にいかれたらどうですか? とリボルはいい考えだとばかりに手を打った。
「アスラン様の書庫?」
「ええ、この宮に皇帝陛下専用の書庫があるのです。陛下以外の方の利用は許されておりませんが、まぁアセナ様は奥方様でありますし問題はないでしょう。一度行ってみてはいかがでしょう」
「そんなところがあるの? 楽しそうね」
アスランの書庫となると、貴重な文献やら書籍が沢山あることだろう。
最近ではそれなりに文字が読めるようになったアセナだ。
本を読む喜び、学ぶ喜びを知り、知識欲が上がっていた。
知らないことを知ることは世界が広がる。
皇后として生きるアセナには必要なことだ。
アスランの読むものはきっと難解で理解は難しいだろうが、もしかしたら少年の頃に読んだ本などがあるかもしれない。
「その書庫は宮のどこの辺にあるの?」
「陛下の執務室の横にあったはずです。ただあのあたりは公的な場ですので、文官やら武官がたくさん居られますし、皇妃位の方でも……」
「陛下の執務室の横ね。わかった。早速行ってみる」
アセナは妊娠しているとは思えない軽い身のこなしで部屋を出ると、「宮の中だから私一人で大丈夫よ」と言い残して回廊に向う。
「ちょっとアセナ様ぁぁぁ??」
慌ててリボルもアセナの後を追った。
読んでいただきありがとうございます!
本編もどりましたが、のんびり回です。
そろそろ甘いエピソードも欲しいところ。
アスランにデレてほしいなと思ってます。
ブクマ・PV励みにさせていただいています。
いつもありがとうございます!
ムーンライトノベルズにスピンオフを書いています。
(※タイトルは「碧玉の乙女は草原の覇者の腕の中で夢を見る。」 https://novel18.syosetu.com/n9540gf/)
不定期更新になりますが、次回も是非読みに来てください!
皆様に多謝を。またお会いできることをいのって。
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