プロローグの続きみたいなもの
読んでくださりありがとうございます。今回でプロローグは最後になります。では続きどうぞ。
辺りは光に包まれていた。暖かく温もりを感じる。俺が今いるのは天界と地上の間にある空の部屋と呼ばれる所だった。ここは基本的に死者の魂などを案内する場所だ。俺がここにいる理由は決して神だからではない。転移者に選ばれたからだ。
「勇者よ。」
どこからか女性の声が聞こえる。
「あなたは選ばれました。」
声は大きく反響する。
「あなたに魔王を倒す力を授けましょう。」
俺がボーッとしていると「え?」という驚きの声が聞こえ、俺は我に戻る。
「久しぶりだな。アウフ。」
俺がそう言うとさっきまでは美声で歌っているように話ていたのが嘘のような引きつった声で「主人様⁈」と叫ぶ。
すると突如目の前に土下座をした女性が現れた。
「まさか、転移者の中に貴方様がいらっしゃるとは。大変申し訳ございません。」
彼女、女神アウフは体を震わせながら謝罪した。俺はそんな彼女の肩に触れ、感謝した。
「よくやった!これでやっと退屈しのぎができる!」
するとアウフはまたもや驚きの感を見せ、恐る恐る口を開く。
「怒っていらっしゃらないのですか?」
その言葉を聞き、俺は大きく口を開けて笑う。
「怒る?いやいや、むしろ感謝しているよ。やっと念願のアウフスに行けるんだから。」
アウフスは絶対神アウフが管理する世界。通常の世界のバックアップ。つまりパラレルワールドにあり、神の直接の干渉ができない唯一の世界だ。
何故、神が干渉ができないかというと俺がそうしたからだ。この世界には魔神が封印されている。 魔神はごく稀に発生するバグのようなもので完全に消すのは難しい。よって魔神を入れるゴミ箱を作り、そして永遠に現れないように神遮断防壁で世界を包んだのだ。
そしてさらにその世界に住む者に神の力の一つ。魔法を授けたのだ。
俺がアウフスに行きたい理由は簡単だ。そこでは神の干渉を受けない。つまり中にさえ入れれば誰も俺を止められないのだ。まあそれは逆に言えば中から外へ何もできないという事になるが元々神遮断防壁はそれを目的としたものだし第一、それを創ったのは他の誰でもない俺なのだから問題ない。
俺はいつでも外に出られるが外からは邪魔されない。そんなの最高じゃないか。
「主人様!なりません。もし貴方様がアウフスに行ったら秩序が乱れます!」
そう、秩序だ。秩序は世界の絶対的ルールであり守らなければ世界は崩壊する。
「大丈夫。今の俺は完全な人間。秩序を破るようなことは起きないよ。」
俺がそう言うがまだアウフは渋っている様子だった。
「それにもう転移させちゃったんだから後戻り出来ないでしょ?それこそ秩序が乱れちゃうよ。」
俺がそう言うとアウフは一息ついて言った。
「わかりました。今回の件は私のミスです。他の神達にも伝えておきましょう。」
そう言うと彼女は俺に手をかざした。そして俺の全身は光に包まれ、空の部屋を出た。
コメント、評価などあると嬉しいです。次回は本編です。ぜひ読んでくださるとありがたいです。