神の真言
「お前の神の頂はなんだ?」
俺様の本題。
ヘスティアがクソ味噌の如く扱われても諦めなかったもの。
興味がないといえば嘘になる。
「言いたくない…」
「…は?」ん
「い・い・た・く・ない!!」
ん?俺様は今なんと言われた?
言いたくない、答えたくないと言うことか。
「そうかそうかソウカソウカ……散々人のこと振り回しておいて、その態度は些か大仰ではないかなぁ」
思わず魔力が振り吹き出してしまう。
このバカ神が人が下手に出ていれば調子に乗りおってからに!
ここまでコケにされたのは久方振りであるなぁ。
「…違う。笑われるから…言いたくない」
ヘスティアが絞り出すような声を出す。
震える声には怯え、恐怖、諦めの色が写っていた。
しかし、その中に強い意志を含む声音であった。
「笑う?何故?」
その声音に興味が湧いた。
ここまで引っ張られたという理由もあったが、このヘタレた姿しか見せない若輩者が、頑なに貫きたい願いとは何かが知りたい。
先程の声音の奥には確固たる意志が汲み取れた。
「貴様の望みは笑われて諦められるものか?」
「そんなわけない!……でも」
俺様の言葉にカッと目を見開き此方を睨見つける。
中々にいい表情だ。
そう、先程の声音の奥にあった意志、ヘスティアの意志の核となるもの、絶対に叶えるという強い決意が感じられたのだ。
しかし、
「でも、私の神の頂は他の方と比べて…」
すぐに、自信喪失し顔を伏せてしまった。
やれやれ…話がこれでは進まんなぁ
「笑わん」
「え…」
俺様の言葉にヘスティアが顔上げる。
呆然として、俺様を見ている。
すごいマヌケな面だな。
「貴様の望みがたとえどれだけ陳腐なモノであっても、俺様は笑わんと約束しよう」
構わず声をかけるも、依然としてヘスティアは呆然としていた。
「ほ、ホントに?」
「あぁ、本当だ。血の契約でもしようか?」
実は大方検討はついている。
俺様の私見だが、こういう時、神々は自身の存在をより強固にするため、自分の得意分野を強くしたがる。
「ぼ、僕の神の頂は……」
つまり、さっき俺様にちょっかいかけてきた若い雷神は、闘神の類であろう。
それならば、戦が盛んになるような願いをかければ、自ずと自分に信仰心が集まるというものだ。
それをクソ味噌のように言われるのであれば、自分のこととは関係のない望み、大方、争いのない世界とか世界平和を謳ったのだろう。
エゴの塊である神々はからすれば気に入らないのは当然と言える。
「人間たちが他人に対して、ほんの少しでいいから優しくなれる世界を創りたい」
大きな声だった。
ヘスティアが言い終わった後、しばらく静寂な時が流れたが、すぐにその静寂は終わりを告げる。
クスクスと誰かの嘲笑が聞こえたかと思うと、その場にいたほとんど神たちが、思い思いに笑っていた。
奥に鎮座する2人とギルベルトは、何も言わずにこの状況を見ているだけだった。
当のヘスティアは涙目で震えている。
恥ずかしいというよりも…
「…何故そんなことを望んだんだ?」
「…わ、笑わないの?」
妙なことを聞くヘスティア。
「何故笑う?そんなことよりも答えろ、何故それが貴様の望みなのか」
「………僕は人間が好きだから」
思い詰めた表情をして俺様を見つめた後、一瞬顔を伏せるも直ぐに顔を上げた。
「人間は確かに不完全で、色々間違いも起こすし、争いも起こす。時には身勝手理由で命を奪うことだってあって、僕たち神に比べ、心も身体も弱い存在なのかもしれない」
ハッキリとした声で真っ直ぐに俺様を見て語る。
その表情に恐怖も怯えもない。
「でも、どんな逆境にあっても立ち上がり、工夫し、再考し、時には手を取り合い成果を成す姿がたまらなく愛おしくなるんだ。
そんな彼らが、少しでも他人のことを思いやれることができたら、隣人にそっと優しくできたらきっといい世界ができると思ったんだ」
ヘスティアは満面笑みで言いきった。




